[京都新聞]サンガ山中社長「チーム強化で試合価値向上」
— 京都新聞 (@kyoto_np) 2017年6月20日
京都サンガFCの強化方針と財務状況について、山中大輔社長(59)に聞いた。=詳しくは京都新聞スマホ・携帯サイト(月額324円)https://t.co/ExyMQsZOqrへ pic.twitter.com/970InCwaCH
決算を迎えた事もあり、京都新聞にJ2 京都サンガF.C.の運営会社社長のインタビューが掲載。
突っ込みどころ満載だったので今回はこの記事をテーマに。
●リスク回避
経営とスポーツは似ている。(というか、この2つの分野における考え方は万物に共通する。)
ゴールから逆算し、戦略と戦術を駆使し、標準化を図り、相手のデータを分析する。そうしてできるだけ失敗する確率を下げる仕組みを作った上で、スピーディーな判断と決断が求められる。なので必要な考え方が似通っている。
人はミスを犯す生き物。
PKを外す事もあるし送りバントを失敗する事もある。けれども、防げるミスは可能な限り犯さないように考えて仕組みを作ったりする。
特にサッカーは105m×68mのピッチの中で足でボールを扱うスポーツである。ミスばかりが起きてしまう。
だから、「ミスは必ず起きる」事を前提にしながらリスクを軽減する事が非常に重要であるのだが…
●J2 7年目
京都サンガは現在Jリーグの2部、J2に所属している。(Jリーグは現在J3まで存在)
1部リーグであるJ1には中村俊輔や清武弘嗣といった新旧日本代表の中心的存在が多数プレーし、スポーツ番組やサッカー番組でも毎週取り上げてもらえるなど光が当たる。
一方で2部のJ2。キングカズや闘莉王(京都所属)など知られている選手も多いが、まず光は当たらない。サッカー番組ですらテロップで結果が流れるだけ←
しかし、相対的に人気がないのだから仕方がない。
よりレベルが高い・より収入や環境面での待遇が良い・より注目が集まるJ1へと、選手やファンが心惹かれて当然である。J1の平均観客動員数が1.7~1.8万人に対し、J2平均は6~7千人となっている現状にもそれが表れている。
そして当然、入場料収入や広告料収入などクラブに入るお金もJ2よりJ1の方が比例して多い。
更に今年度からインターネット配信型視聴サービスのDAZNがJリーグの有料放送放映権を取得した事によって、リーグに入る放映権料が一気に増大。J1で優勝すると、賞金3億円に加え特別ボーナス的な理念強化分配金が15億円支給される。また、下部ディビジョンへの降格組には補償金が支払われる仕組みにもなった。
J1にいると金銭面的メリットが大きいが、J2にいると得られない。
その上、降格組がアドバンテージを持って邪魔をしに来る。
京都サンガというクラブは毎年の平均売り上げが20億円程度のクラブで、今年でJ2 7年目。
J1は30億円はあるクラブがザラで、ガンバ大阪や名古屋グランパスなど40億円規模のクラブでもここ近年降格を味わっている。
そこで、「赤字覚悟で補強をし、J1で戦える戦力で昇格してそのまま成長を果たしていく」という道で、サンガは16年度と今年度の2年間勝負に出ている。
(※3年連続の赤字はJリーグのルール上許されない為、必然的に長くても2年間となる)
勝負するという考え方自体は悪くない。過去に挑戦した際は失敗し、クラブが潰れかけた。でももう一度ラストチャンスに出るのは間違ってはいない。ここを逃せばビッグクラブになる可能性はほぼほぼ費える。
サンガから日本代表にまで育った久保裕也(現KAAgent)のように海外に売れればまだいいが、駒井(現 浦和)や宮吉(現 広島)のように油に乗ってきた所で育てたタレントが国内のお金持ちにかっさらわれるのも目に見えている。
ただ、前述した通り、サッカーも経営もミスを如何に減らすかという事に腐心しなければならない。今の京都サンガからは、残念ながらその基礎の基礎的考え方は透けて見えない。
●検証
前段の判断に至った理由は、記事が決め手である。
突っ込みどころが多数ある。見ていくと…
「今はチームを強くして、ゲームの価値を上げることに専念している。チケット収入が増え、当初の見込みより赤字額は減った。無料の招待客を半分以下に減らしたので全体の観客は減ったが、有料入場者数が増えた。今年はさらに有料入場者が2割増えている。無料で見られる価値の試合ではない、というのが前提だ」
・チームを強くするにあたってボランチとサイドハーフの頭数の少なさに疑問は抱かなかったのだろうか
・強くする為になぜ監督初心者の布部監督を招聘したのだろうか
・「チームを強くしてゲームの価値を上げる」。これは”選択と集中”という考え方であり、筋自体は通っている。だがなぜ監督初心者に任せた
-有料客が伸びた要因は。
「米大リーグのボストンレッドソックスを職員が視察し、ノウハウを実践している。存在を知らしめる、見たい選手がいる、面白い試合をする、勝利する、売店など周辺を楽しくする、の5点。特に闘莉王や岩崎ら見たくなる選手の存在が大きい。(レプリカ)ユニホームも過去最多の枚数を売り上げている」
・試合がまず面白くないのだが何処を見ているのだろうか
・「面白い」=主観である。が、私は『90分間組織として戦っている』様が面白いと思う。そしてパスサッカーとか関係なく、「闘争心を持ち、フェアプレーに徹し、最後まで全力でプレーする」という方針をサンガバリューと銘打ち15年末からクラブ全体で徹底しようとしている。ただ、今のチームは終盤の失点の多さなど90分間戦えていない上に、攻守に再現性が乏しく組織で戦えていないので非常に面白くない。不確定要素だらけで勝つ確率も低いダメ組織は客観的に見てつまらない。サンガバリューは何処へ
・「売店など周辺を楽しくする」とあるが、今の西京極のどこにそんな要素があると言うのだろうか。誤植と信じたい
・顧客は勝利を第一に望んでおらず、また試合結果が不確定要素である以上を勝利を売るのは不可能である。勝利を望むのは既に応援しているサポーターと兎に角勝たないと気分を害すタイプのスポンサーだろう。経験価値を提供しているのであって、勝つことは経験価値の向上の為の手段にしかすぎない。
・「負けても楽しい」「勝つともっと楽しい」の実現こそがスポーツビジネスの根幹なのに勝利を前提にしている時点で持続可能的&健全なクラブの成長は100パーセントあり得ない
・手段の1つとして捉えているのみなら良いのだが、残念ながら西京極で勝っても特別な演出なぞ存在しない…
・サンガの試合観戦体験の何が面白いのかがぼんやりしたままなのに、どうやって友人誘うのよ。どうやって人を集めるのよ
・だからUSJはまだしも、注目の集まるガンバやセレッソにも京都から客取られてるんでしょ
-広告料収入が減少している。
「スポンサーそれぞれに事情がある。ただ、ユニホームに入るスポンサーが発足から変わっていないのはJリーグでうちだけ。赤字の予算編成も主要なスポンサーには説明し、理解を得ている。まず自助努力で客を増やすことが、スポンサーからの評価につながる」
・これは正論
・スポンサーを増やす努力は怠っていないように見える↓
www.sanga-fc.jp・しかし、チーム強化という不確定要素での勝負だけではなく、横浜Fマリノスや横浜DeNAベイスターズのようにビジネスとして成り立つような整備も進めつつ親会社に協力を求めるのが筋では
・健全なスポンサーシップが結べてない現状が、全体的に収入も伸びないしチーム強化を進まない事とリンクしている事を自覚しているのだろうか
-本年度の予算は。
「約2億円の赤字で予算を組んだ。昨年度と総年俸はあまり変わらない。入場料収入や物販収入が伸びており、最終的に1億円くらいの赤字で済ませたい。J1に上がればスポンサー料やリーグからの配分金が増えて黒字にできる。下でうごめくより、いかにのし上がるかだ」
・昨年と変わらない総年俸でこのチームなのか…………(昨年度人件費3位・順位5位:今年度6/20時点順位14位)
・赤字勝負は理解できるが、勝負するのに細部にこだわらなさすぎなのは馬鹿としか思えない
・なんで布部?
・来年赤字だせないんだから、今のうちに有能な監督を持ってきて、今年度の昇格PO進出→昇格&失敗しても来年の基礎になるように切り替えて
・物販収入伸ばしたかったらもっとニーズに即したグッズ販売やブランド創設に力を入れよう
-3期連続で赤字を出せば、リーグからクラブライセンスが交付されない恐れがある。J1に昇格できなければ来季の人件費はどうするのか。
「来季は赤字にするつもりはない。うちは若手で光る選手を取っている。(来季もJ2なら)若手主体でやるのも手と思う。十分戦える。次の社長のためにも、経営者としてリスクヘッジは必ずやらないといけない」
・十分戦えるのならば若手と屋台骨と有能監督で十分勝機はあるだろうよ
・次の社長の為ではなく、クラブを残す為にリスクヘッジが必要。勘違いするな
・クラブはまず存続しないといけない。勝つ事より生き残る事が大事
・次の社長に任せるも良いけど、そうやってコロコロ変わるから中長期的な視点に欠けた施策ばっかでいつまでもゲームチェンジャーと程遠い存在なんでしょうが
・コストはかかるけど欧州からSDなりGMなり呼んだ方がビジネス面でも競技面でも良い説がさらに濃厚に
・というか、ここまで散々叩いてきたようにリスク排除できてなさすぎなのに何言ってるの
-5期連続で減っていた累積損失が再び増加した。
「スポンサーも含めて気にしていない。債務超過はだめだが。株主も配当を期待していない。ただ、本来は単年度で1億円くらいの黒字を残すのが一番いいんだろう」
・気にしていなくてもいいけど。それでいいんだけど。でもそのヌルさが諸々の元凶に思えないかい
J2だろうとも、負けようとも、それでも成り立つように整備する事を放棄しているような組織がJ1取ろうと思ったら、人件費20億くらいかけて札束で昇格するほかにないと思いますよ。札束がないからJ1へ行こうとしてるのにね。
●解決策
ひとまずサンガが今すぐ取り組む事が可能な手段としては
1.有能な監督を持ってきて一発逆転コースと若手主体でGo!コースのどちらにも幅効くようにする
2.中長期的にクラブ経営とチーム強化に携わるプロフェッショナル人材の登用
3.新たなビジネスモデルを構築し、中期的に年間売上30億円達成する為のロードマップ策定
4.独自性の薄れてきたアカデミーの再編に取り組み、中長期的にチーム人件費の効率性UP
5.メインスポンサー様方の前で頭をこすりつづけ、健全なスポンサーシップの基に3の実現可能性UPと速度UP
6.ホームゲームのエンタメ性向上
7.JR山陰線沿線や西京極近辺の住民への重点的アプローチ
ぐらいだと思うので、これに取り組んで、いい加減道なき道を無謀な走り方で突っ切るのはここらで終わりにしましょう。
人為的にコントロールできる範囲では最大限価値を生み出し、チーム強化などコントロールしきれない範囲でも不確定要素を取り除くのです。
勝者になれるのは1チームだけです。勝利は追求すれども、たかが手段である事を自覚しなければなりません。
理念に忠実になり、自分達だけの世界を作り、ストーリーを広めて共感を生み、勝ち負けに関わらず応援してもらえるオンリーワンの存在になる事と優勝してナンバーワンの存在になる事は並立して実現可能なはずです。
なのになぜ、リスクを排除せずに夢だけを追うのでしょうか?
勝利至上主義は要らないのです。
勝利はいわば麻薬であり、勝ち続ける事でごまかせていても、勝てなくなった途端に機能しなくなる組織など死に体同然なのです。不健全です。
お願いだから、試合内容に関わらず「今日は楽しかった!」と多くの人が思える観戦体験を、新スタジアム整備などの手段も活用して作ってください。
これ以上、サンガ(≒サッカーやスポーツ)にせっかく興味を持った老若男女が、初観戦でその熱を失うような状態を放置しないでください。
勝てない事よりも、このような組織として不健全な状態が続いていることの方が、私は悲しい。
ではまた。
●おまけ
サンガサポをはじめスポーツファンの皆さんは是非目を通してみてください。
(私が読んでいないものもありますが)
この他にも、「マリノスとスポンサー企業との関係」「鹿島のスタジアムビジネス」「札幌などのアジア戦略」「日本ハムファイターズの社会貢献活動」などは漁ってみると面白いです。