28日、スポーツ報知が「複数の民間業者が東京・代々木公園南側に複合型サッカースタジアムを建設しようと動いている」という特ダネを報じました。
複数の民間事業者が東京都に対し、渋谷区内の都立代々木公園内に複合型サッカー専用スタジアムの建設を提案していることが28日、都関係者らへの取材で分かった。スタジアムは約4万人規模で、総事業費は約400~500億円を予定している。サッカーJ1・F東京の本拠地化を目指しており、資金は民間事業者が負担する。建設開始は2020年東京五輪・パラリンピック後で、25年までの完成を目指す。
これまで不毛の地だった都内に、待望のサッカー専用スタジアムが誕生する可能性が出てきた。
代々木公園にサッカー専用スタジアム…25年まで完成へ複数民間事業者が都に提案 https://t.co/OBG95zJUxY pic.twitter.com/olBLelRzwl
— スポーツ報知・サッカー取材班 (@hochi_football) 2017年7月28日
代々木公園サッカースタジアム構想は進化形アリーナ https://t.co/AUaQ4xT3vP #サッカー #スポーツ新聞 pic.twitter.com/kdtUX5vHqP
— スポーツ報知 (@SportsHochi) 2017年7月31日
突然のホットなニュースにサッカーファンやネットでもこの反応。
一方で、「スタジアムなんて要らないでしょ」「公園で稼ぐ必要なんてないだろ」という意見も散見
何これ? これって、今、現に公園として問題なく使用されてる土地を、民間業者がサッカー場を作るために、公園施設を破壊して払い下げろ、という話になるじゃないですか。バカバカしい。検討の余地、1ミリもないだろう。https://t.co/dUdPuza4TO
— 松井計 (@matsuikei) 2017年7月30日
代々木公園にサッカー専用スタジアム…25年まで完成へ複数民間事業者が都に提案(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース https://t.co/nFELL0Nklh @YahooNewsTopics
— トカイナカ@ 皆で病めば怖くない! (@kobaton777) 2017年7月29日
いらねえだろ?
新国立蹴球場作るのに……代々木公園潰して作る意味わからん
絶対にやめてほしい。誰でもお金を払わずにのんびりできる場の面積をこれ以上減らさないで。<代々木公園にサッカー専用スタジアム…25年まで完成へ複数民間事業者が都に提案(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース https://t.co/3pz6d3aVmh
— 野中モモ (@momononaka) 2017年7月30日
「建設予定地は、代々木公園内の南部にある球技場と織田フィールドと呼ばれる陸上競技場周辺。NHKの渋谷放送センターに隣接した場所になる」とのことで緑地ではないにしても、民間事業者が入るといろいろ変わってくると思うのよ。現在の競技場がどんな風に運営・利用されてるのかよく知らないけど… https://t.co/Z5EU8yJPvV
— 野中モモ (@momononaka) 2017年7月30日
「競技場の場所だから公園は狭くなりませーん!」「日本語読めないのかよ」みたいなリプが来てるんだけど、「私企業が、広告が目に入ってこない空間を減らさないで」って言えばいいかな!? https://t.co/Z5EU8yJPvV
— 野中モモ (@momononaka) 2017年7月30日
新国立競技場も五輪後は球技専門のスタジアムに改装するんだよね?都心にサッカー場ばかり増やすのかいな。つーか、公園は公園として使おうや/代々木公園にサッカー専用スタジアム…25年まで完成へ複数民間事業者が都に提案 (スポーツ報知) https://t.co/JGFnRdY39B
— ガイチ (@gaitifuji) 2017年7月29日
代々木公園にサッカー専用スタジアム…25年まで完成へ複数民間事業者が都に提案(スポーツ報知)- Yahoo!ニュース
— あさ耳鳥 (@asamimidorori) 2017年7月31日
公園は憩いの場であってほしい。収益のあがる公園てお金がかかるって事でしょ。
公園は都市の憩いの最後の砦なのに。 https://t.co/WaGzDtcl9p
ぼくも、この案、ものすごく嫌です。広々とした気持ちの良い公園に、なぜ、わざわざサッカースタジアムを作らなくてはいけないのか? 時代に逆行しているように思います。。。。 https://t.co/mOVlLsLKTK
— 茂木健一郎 (@kenichiromogi) 2017年7月30日
公園潰してサッカー場とか、ミサイルシェルターとか平然と出てくるあたり、土建政治叩きはまだまだ手ぬるかったんじゃないの。左派リベラルは、反緊縮・反土建政治の二正面作戦で行くべき。
— 北守 (@hokusyu82) 2017年7月31日
新国立競技場問題の余波か、かなりアレルギー的反応を見せる人が多かったのでこのニュースについて個人的な雑感を。
●サッカースタジアムとは
まず、ここで言う「サッカースタジアム」=「サッカーなど球技スポーツを観る事を主目的とした施設」です。(陸上競技場は陸上競技場であって、日産スタジアムなどを「サッカースタジアム」と呼んでいる人を見ると、とても悲しい気持ちになるものです)
そして「複合型スタジアム」とは、サッカースタジアムとしての機能だけでなく商業施設の併設などで複合化を果たしたスタジアムの事です。日本だとノエビアスタジアム神戸やカシマスタジアムがこれに当たります。
全く知識の無い方からすると、記事にある「サッカー専用」と「複合型」は矛盾していると思われるかもしれません。
しかし、そもそも「専用=陸上競技機能のない」という意味であってサッカーにしか使えないという訳ではありません。
サッカー専用スタジアムで音楽ライブやコンベンション利用は可能ですし、スタンドやコンコースを利用して展示会を行う事もできますし、別のスポーツを行う事も可能です。
かつ、必ずしも複合化させる事が正解ではありませんが、スタジアムにジムや商業施設などを複合させて収益性を高めるのです。
野球専用スタジアムでありながらライスボウルの開催地であり、イベント利用もあり、ホテルや遊園地などの複合施設がある『東京ドーム』を知らない方はいませんよね?
今日は、#市立吹田サッカースタジアム にてセミナーを行ってきました。
— 岡崎幸宏@就活成功への道 (@ozyh927) 2016年10月26日
なかなか入る機会の無い、#VIPルーム での合同企業説明会。
スタジアム初の試みらしいですよ! pic.twitter.com/eWueHaz9HV
●東京と日本のサッカースタジアム事情
記事中にJリーグクラブであるFC東京の本拠地化について記述がなされていますが、現在FC東京と東京ヴェルディの本拠地である味の素スタジアムは、2013年の国体開催もあって建設された陸上競技場。サッカーができるスタジアムであって、サッカースタジアムではなく陸上競技場です。
ご覧の通り、陸上競技場ではピッチ(※)と観客席の間にトラックがある為、球技を観る上では迫力や臨場感が失われてしまいます。
となると、観戦で得られる経験価値が減少し、エンタメ性が低下し、興行主とスタジアムにとっては『収入の落ち込み』。地域にとっては『波及効果の落ち込み』というマイナス効果がおよびます。
※サッカーのコートのみを指す言葉がピッチ。タッチラインやゴールライン外の芝やウレタン部分も含めて指す言葉がフィールド。
また、味の素スタジアムは2019年ラグビーW杯の開催地にもなっていますが、ラグビーのフィールドは本来縦方向に120mほど必要。陸上トラックとの兼ね合いで縦に107mほどしか芝生部分を確保できない陸上競技場ではそもそも球技をする場として不適当なのです。「アスリートファースト」がコンセプトらしいですけど笑
更にサッカーはする・見る共に日本で一二の人気を誇るスポーツであり、JリーグチームだけでFC東京・東京ヴェルディ・FC町田ゼルビアの3チームが都内にあるにも関わらず、都内にあるサッカースタジアムは0。
ただ一つ、プロが恒常的に使うような施設ではない簡素な国立西が丘サッカー場(収容人数7000人)が存在するのみ。
というか、日本全国に範囲を広げてみてもカシマ(茨城)・柏・さいたま・大宮・日本平(静岡)・吹田(大阪)・鳥取の7つしか1万人以上の観客を収容できるサッカースタジアムは存在しないのです。悲しいかな。
〈8月2日16時追記:"茨城県立サッカースタジアム"でありながらアメフトの開催実績があったり、"市立吹田サッカースタジアム"よりも球技専用スタジアムである"ミクニワールド北九州スタジアム"や"ヤマハスタジアム"の方がフィールドが小さかったり… 我が国においてサッカースタジアムと球技専用のフットボールスタジアムの定義等は実に曖昧です。その為、今回は報道された計画同様に「公称がサッカー専用」のスタジアムを切り取って紹介いたしました。しかし、サッカー・ラグビー・アメフトを定期的に開催する1万人以上収容の「フットボールスタジアム」は、紹介した7か所とは別に全国に14か所のみ存在する事も紹介すべきだとご指摘を受けましたのでここに追記致します。〉
フットボール:仙台・栃木・蘇我(千葉)・三ツ沢(横浜)・松本・長野・ヤマハ(磐田)・豊田・福井・長居(大阪)・御崎公園(神戸)・北九州・博多の森・鳥栖
そしてそもそもの話、「サッカースタジアムが要るか?要らないか?」だと要るに決まっているのです。
別にサッカースタジアムでなくてもイイです。陸上競技場でもいいし、コンビニでもいいし、葬儀屋でもいい。入る言葉は基本的になんでもいい。
必要"だけど"、この場所は違う、高すぎる、もう既に数が足りている、景観や都市計画にそぐわない…「だからこの場所には必要ない・今はまだ無理だよね」という話になるのであって、ゼロベースで考えた時に要らない施設なんてのは基本存在しない。
だからサッカースタジアム自体は必要に決まっているので、頭ごなしに否定や賛成をするのではなく、「本当にここに建てることが必要なのか?」と妥当性を考える必要があります。全てに通ずるほんとに当たり前の話ですけど。
●スタジアム改革
さっき言ったようにそもそもサッカースタジアムは(※サッカースタジアムではなくともなんでも、)無いより有った方が良いに決まっていますが、さらに「どれだけ必要性が高いか?」「どうすればより良くなるか?」というのを昨年スポーツ庁と経済産業省が資料にまとめてくれました。
概要の方を見るだけでもだいたいわかるので見てみてください。
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/008_index/toushin/1379557.htm
また、スポーツ立国戦略や他の法案なども含めてざっくりまとめると、「スポーツのハブ機能を活用すれば社会が活性化されるから、軽視されてきたスポーツへの投資を通じて良い国にしよう!!!」って、国が地方自治体や民間企業、そして私達国民にいま言ってるんです。
政府の掲げる日本再興戦略の中にもスタジアム・アリーナ整備は盛り込まれていて、2025年までに民間活力を活用しながら20か所整備するという数値目標も立てられました。
スタジアムやアリーナを民間の力も借りながら作っていって、JリーグやBリーグクラブのポテンシャルを最大限発揮できるようにし、地域に波及効果を広げていって活性化されるには、まだ人口の減少ペースが緩やかな今しかないのです。
(※またスタジアムのような大規模スポーツ施設だけでなく、公園や水道などでも民間活力が導入されていく方向にあります。)
これまでは、「サッカースタジアムを建てるべき」と言うと"サッカーファンのわがまま"などと言われてきましたが、「公共性重視ではなく、利用者(観客や興行主)のニーズに応える事を重視したスタジアムは社会に大きな効果をもたらすよ」とお墨付きをもらった事を頭に入れていただきたいと思います。
いわば陸上競技ができないというデメリットが生じた代わりに、アスリートファーストであり、顧客ファーストであり、地域ファーストなのです。
(なお昨今では陸上連盟も「陸上競技場を取りやすくなるから」と言う理由でサッカースタジアム整備を応援してくれています。陸上界にとってもメリットがあることも抑えておいてください。)
日本には1試合平均1.8万人(J1)の人が集まるJリーグがあります。ラグビーにはトップリーグという全国リーグがあります。しかし陸上には定期的な興業の場などありません。世界を見渡してみてようやくスーパーリーグのような『IAAFダイヤモンドリーグ』があるのみで、興行には適していないのです。全日本選手権などでも1万人規模の観客数です。
これまで、サッカーW杯や今回の東京五輪でも、何万人規模の陸上競技場を日本は整備してきましたが、サッカースタジアムと陸上競技場をあわせてしまう事が間違いなのです。
サッカースタジアムと陸上競技場を分けてしまう。あるいは設計段階からサッカースタジアム化や野球場化できるようにしなければならないのです。その方が記録会がメインの陸上界と、興行がメインのサッカー界の利害が一致するのです。
(※新国立競技場はこれに失敗してしまっているので、球技専用にしても「赤字額が少し軽減される」程度でしょう)
●波及効果
例えば、今この記事を読んでいるあなたは、特定のアーティストであったり、アイドルであったり、作品であったり、そういったものを追いかける事で自分の人生に良い効果が生まれていませんか?
働くモチベーションは上がるし、ガンガン消費するし、単にグッズや遠征にお金を費やすだけでなくてCM起用してくれる企業の製品を進んで購買するし、共通の趣味を通じて新たな出会いがあったりするし…と。
スポーツの場合、特にJリーグは「地域密着型」「世界的に愛されている競技」「1試合に数万人が集まる」…という特徴があります。その為、単なるコンテンツではなく高い公共性を有した社会の公器であり、個人・法人・地域住民・行政…と波及する範囲も大変広く、かつ終わりが無いので恒常的に影響があります。
地元にスポーツチームがあるけれど「無いよりはあった方が良いけど別にどちらでも困らない」という方、オリンピックのごたごたで「スポーツ?もうどうでもよくない?」という方、そんな方もきっとなにかハマっている事等あるはず。
是非、自分事として捉えていただいて、スポーツの持つ価値を理解していただければ幸いです。
●代々木公園に建てるリスク
しかし、私も問答無用で「民間主導で文句なしの計画だ!必要なんだからすぐ建てろ!」と言う訳ではありません。
先ほど紹介したスタジアム・アリーナ改革指針にて挙げられている成功の為の条件が重なった立地ではありますが、建てた際の弊害もいくつか当然出てくるでしょう。
1つ目に『景観』。ただ、すぐ南はNHKがありますからそこまで問題なさそう。
2つ目に『代替施設』。記事によると織田フィールド・球技場・野外ステージの場所に建てる計画とあるので、特に織田フィールドの代替施設を用意する必要があります。これが一番重要な問題なのに、「なんで公園を狭くする?」みたいな意見ばかりだったのには正直辟易。ちなみに現職の渋谷区長さんは織田フィールドは入れない球技場プランを掲げて当選されています。野外ステージおよびイベント機能に関しては、スタジアム内を代わりに使用できるようにすればいいかと個人的に思います。フード系のイベントも、屋根の下で椅子に座りながらできたて熱々のものを食べられるようになりますし(天候の影響を受けずに快適に実行できるってのは開催側が一番うれしいでしょうねえ)。建設中の空白期間をどうするのか(駒沢など他の公園で場所がとれるのか)等の問題が一番重要なところかと。
3つ目に『生態系への影響』。これも候補地の場所的に重大な影響を及ぼすとは見えませんが、環境アセスメント等必要になってくるので自然と問題かどうかわかってくるのでいずれ答えが出る話。
4つ目に『新国立競技場との兼ね合い』。新国立競技場は五輪・パラ大会後に陸上トラック上に観客席を設置し、球技専用スタジアムとして供用される事がほぼほぼ決定しました。しかし、8万人と大きすぎる上に最低の設計で、FC東京が恒常的に使う可能性は極めて低いと言えます。そもそもJリーグでは国立競技場を本拠地利用しようとして断られたチームがいますし…新国立は紹介したスタジアム・アリーナ改革指針にまとめてある事と真逆の進め方で整備が進んでおり、悪名高きあの宮城スタジアムを越して我が国史上最悪のスタジアムとなってしまう恐れが非常に高い代物。
〈以下8月2日16時追記:というのも、家を想像してください。新しくマイホームを構える場合、理想的な空き物件を選ぶor自分の理想に沿う住宅を作ってもらう(注文住宅)のどちらかでしょう?
しかし新国立競技場は建設後の主な利用主を決めきれず、「元々陸上競技場だったし、ラグビーW杯の後にすぐ五輪が来るし、サッカーの日本代表戦やコンサートで儲けたいし…」と八方美人的に計画が進められたが故のザハ案撤回に至ったのはまだ記憶に新しい大失態。さらに撤回で計画を適正化するチャンスが再度与えられたにも関わらず、「まずは五輪の為に陸上競技場として整備。その後サッカーW杯を開きたいから8万人のスタジアムに転用できるように設計」というコンセプトで進めてしまう3度目の失態。更にコンペに上げられたA案とB案とでサッカーやラグビーなど球技が見やすいB案ではなくA案を選択しておきながら『球技専用スタジアム化で収益性UP!』などと言い出す3度目の大失態を犯したのでした。
確かに、50年に1度あるかどうかのW杯を睨んで非現実的な"8万人規模"を要望したJFAの責任の一端はあります。しかしながら、建設主体である日本スポーツ振興センター(JSC)がサッカーにすり寄ったのは「サッカー日本代表戦とコンサートが一番金を回収できるから」・「オリパラ後にサブトラックを常設しておけないから」である事。JSCが常に舵取りをミスり続けたことによってサッカー界とラグビー界は「粗大ごみをいかにマシなようにに見せる事ができるか?」という罰ゲームを負わされた状態である事。ザハ案への批判に終始し、そもそも常識から逸脱していた計画を修正できなかった事。この3点を認識しなければなりません。
それでもJFAとは直接関係の無いFC東京に新国立を本拠地として使わせる事で尻ぬぐいをさせて、「サッカー界でなんとかしろよ」と言われてもと個人的に思います。FC東京には宿を選ぶ権利があるし、本拠地化させるのなら英国同様にそれ相応の忖度をするか、最初からFC東京やサッカー側の都合の良いように進めないといけなかったのです。先述したスタジアム・アリーナ改革指針にもそう載っています(文部科学省がらみの事業をスポーツ庁(と経産省)が叩き切った形なのがまたもう…)。民間企業に運営権を売却する事を検討している際中なのでホワイトナイト的存在に期待するしかありません。
そして新国立競技場が完成してもスポーツを観る環境が十分整っているとは言えない状況、なので「ダメなものは淘汰されるほかない」と個人的には思うのです。〉
【※補足】
新国立競技場整備事業に関する技術提案書 | 新国立競技場 | JAPAN SPORT COU
コンペに敗れたB案は、スタンド~ピッチ間がメイン・バックスタンドで最大でも14.5m。ゴール裏で最大29.5m。1層目の上に嵩増しする仕組みで角度も確保。球技観戦に重要な距離の近さと俯瞰で見られる角度の2点で優れていました
一方、採択されたA案はこの通り。既存の1層目(20°)から地続きする形で客席を拡張する為、角度がゆるゆる。ピッチ間距離はゴール裏から最大27m・バックスタンドから最大20.5m。B案より見劣りしており、非常に見づらいスタジアムに仕上がる事が予想されます。
5つ目に『公園機能をどうするか?』。冒頭に紹介したツイートでもあったように、憩いの場としての機能を失う事に対する嫌悪感を感じる方も一定数いらっしゃるようです。しかし、明治神宮の境内も込みとは言えこれだけ緑があったら、赤い四角の部分がスタジアムになっても大きな変化はないと言えるのではないでしょうか…織田フィールドが無くなる事の方がやはり重要問題では?
〈8月2日16時追記:なお、このほかに公園の持つ機能として『防災拠点』が考えられると思いますが、スタジアムは有事の防災拠点となりうる施設であり、現に備蓄倉庫や避難場所としての活用がなされている事を追記しておきます。〉
●スポーツで「稼ぐ」意識と
最近になってだいぶ改善されてきた感もありますが、なぜか「稼ぐ」事に抵抗がまだまだある日本。
もちろん収益性を重視しすぎて公共施設が本来有しておくべき機能が失われるような事態があってはダメで(TSUTAYA図書館とか)、そのリスクに嫌悪感を示すのは良くわかります。
けれども、そもそも「都市公園にスタジアムを建てたらダメ」なんて規則もなければ、都内には代々木公園だけでなく様々な公園が存在します。
ならば「A公園は憩いの場としての機能を強化しよう」「B公園はスポーツをする場所を整備しよう」「C公園は立地が良いから、スタジアムを建てて賑わいをもたらす場にしよう」というマネジメントが行われるのは当然では?
特にスポーツをする場と観る場は需要に対して供給が追い付いておらず、かつこれまでに挙げたように機運の盛り上がりもあります。
そして東京は公園の民間活力導入が進んでいる都市ですし(※)、スタジアムに転用できるような良い土地は公園内なら織田フィールド一帯ぐらいしかない。そもそもこの報道が何らかのブラフの可能性もありますが、民間から提案があればかなり良いところまで話が進むのは自然な流れですよね。(※都民じゃないので上野公園等の実際の評判はわかりませんが)
反対する事は決して悪いことではなく、スタジアム建設はコンセプト固めや設計も含めて慎重に進めるべきプロジェクト。
ただ最初から反対ありきではなく、まず「日本にはスポーツ施設が足りていない事」、「サッカースタジアムの重要性・必要性」「スポーツの持つ可能性」、そして「民間活力を活かした街づくり」を理解してから声に出してもらいたいな~と、今回の件では強く感じました。
この記事のように↓
松本城公園で酒が「品位がないからダメ」となっている件ですが、禁止するのが仕事と思っている人はもう少し公共性とは何かを考え直して欲しいところ。品位て何かね。│なぜ日本の公園は、あれもこれも禁止なのか いまどきの公園は自ら稼いで街を潤す https://t.co/rze8URLdVG
— 木下斉/HitoshiKinoshita (@shoutengai) 2017年7月31日
普段あまり疑問を抱かずに生活する中で、スタジアム問題は自分の街について考える良いきっかけだと思います。
スタジアム以外にも同様のことは言えますが、「必要だとは思うけど今の機能を無くすだけの価値はあるか?どっちが大局的に見て得か?」という観点から、賛成派も反対派もフラットに注視していってほしいところ。
ただでさえお先真っ暗な状態なのに、「ハコモノ政治だ!」とか、不必要な反対や自粛で弱りきった社会を若者世代に押し付けないでくださいな。必要なハードを整備する事を悪と見なさないでくださいな。少なくとも記事に書いてあることくらいはちゃんと読んでくださいな。鵜呑みにせずに情報をきちんと集めて適切な判断をくだしてくださいな。
でないと困るんですよ、ほんと。もっと建設的に生きましょうよ。
サッカー場も陸上競技場も野球場もテニス場もプールもアリーナも、ゼロベースでは必要に決まっているのです。
— n (@nks137) 2017年8月2日
急を要するのか?適切な仕様か?どうやって建てるのか?(代々木の件は報道だと民間主導)……等々、賛成派も反対派もここに着目して考えてほしいただそれだけ。
ではまた。
今度やる気高まった時は「新国立競技場がなにがダメか」を書くよ~
●補足資料