+1 プラスワン

【振り返り】2018 明治安田生命J2 1節 京都-町田 ~ボランチの選出について~

 

「やっぱりな」と、ため息漏れる結果となったJ2開幕戦。昨年同様、振り返るだけ労力の無駄のような試合でしたが、ふと気になったことがあったのでその点だけメモ。

 

 

気になった事というのは、「ボランチの起用法がおかしい」という意見を目にしたからである。

確かに起用法がおかしかったとは思うし、結論自体は同意する。しかし、過程に少しばかり疑問を持った。

というのも、監督の仕事とは端的に表すと『効率的に現有戦力を組み合わせる事で成果を残すこと』である。

現有戦力とは戦力であり、成果は勝ち点や順位。また、成果の方は可視化しづらい個人やチームの成長度合いも該当するかもしれない。例えば、徳島ヴォルティスでは強化部長と監督間において「選手個人の価値増大」も成果の範疇に入ることが共有されているようだ。

だが、ややこしくなるので今回は"成果=勝ち点等成績"として話を進める。

 

そして資本主義社会のサッカー界において、お金のないチームはお金のあるチームと比べて戦力面で劣りがちである。そして弱者は強者とまともに戦っても勝てない。戦力の差を、資源の差をひっくり返す術が要る。それこそが戦略と戦術。

 

なので、ここで先ほど述べた『監督の仕事=効率的に現有戦力を組み合わせる事で成果を残す』を更に明確化すると、『監督の仕事=戦略そして戦術を駆使する事で、現有戦力によって得られる成果(成績)の最大化』と言えることがわかるのではないだろうか。もちろん戦略と戦術以外にも監督に求められるものはあるが、人心掌握術などは戦力差を直接的にひっくり返すスキルではないのでこれまた除外して話を進める。

 

 

 

チームとしての狙いと最適解→配置

ここからは2/25の京都サンガ-町田ゼルビアそのものの話に入っていく。この試合、京都はスタートの布陣に4-4-2を採用。望月と仙頭が2ボランチを組むこととなった。

f:id:nya137:20180227201526p:plain

 

この状況を見て、「望月と仙頭は共にオフェンシブな選手であり、ボランチで併用するのはセオリーから外れている!」という指摘は間違いではないと私は思う。私自身、この2ボランチ(とCB)でどうやってゴールを守り、ボールを奪うのか困惑した。

だが、屁理屈のようになってしまうが、大事なのは「セオリーから外れているかどうか」よりも「最適解かどうか」ではないだろうか?

 

一見セオリーから外れているようで理にかなっていた大木武監督のサッカー同様に、常識が常識とも、非常識が非常識とも限らない。各選手に与えられる役割も絶えず変化し、伴って各ポジションの概念も変わりつつある。

何度も言うが、監督の仕事は『現有戦力で得られる成果を最大化すること』。布陣に関して言えば、各選手の能力を最大限引き上げ、対戦相手の強みを消せる布陣こそが理想の布陣と言える。

故に「ボランチを2枚置く場合は片方に守備的な選手を、片方に攻撃的な選手を」という考え方を"押し当てる"行為はセオリーであっても、チームにとって正解とは限らない。

なので布部監督の執る策が最適解かどうか?策に適した選手起用ができているか?という観点で考えるべきではないかということ。

 

なお、この観点から見た場合、「1年以上指揮しているのに未だに監督の意図するサッカーが明確ではなく戦術が落とし込めていない」+「バランスの悪い選手編成」という諸悪の根源にたどり着く。(※要するに早く強化部長もろとも更迭してほしい)

 

勝手な思い込みかもしれないが、京都サポーターはすぐに「あの選手が欲しい」と思い付きの言う悪い傾向にあると思っている(一つの楽しみ方ではあるのだが)。

「そのピースはどう考えてもそこにハマんないだろう~」とか、「あの選手が欲しい~」とか言う以前に、そもそもどんなパズルを組み立てるか、完成に向けどんなピースが必要か、正解の基準やパズルの全容が見当たらないのが京都サンガである。(故にセオリーを押し当てたくなったり兎に角欲しがるのだろうか) (かくいう私にもその節があるし)

 

 

 

京都の平均身長とセットプレーの守備

1点だけ、私が「このボランチの組み合わせは無いわ」と試合前に思った理由を挙げておく。それが2失点を喫した自陣セットプレーでの守備だ。

 

 

セットプレーに限った話ではないが、守備のやり方はざっくり大きく2つの方法に分ける事ができる。ゾーンを守る方法とマンマークする方法だ。

超ざっくり説明すると、ゾーンディフェンスは担当の持ち場を各自守るやり方。

対するはマンマークは持ち場は放棄し、人に着くことで対応するやり方。一人一殺的。

京都は昨年度からセットプレーの守備にゾーンディフェンスを採用しており、この試合でも同様であった。

 

ゾーンディフェンスは持ち場を守る為、勢いよく落下地点に入ってくる攻撃側と異なり助走を取る事は難しい。攻撃側は、持ち場と持ち場の間で合わせる・直接蹴らず変化をつける事で混乱を生むなどして攻略を図る。

 

一方、マンツーマンディフェンスはマークが外れてしまうと大ピンチとなる。攻撃側はスクリーンのような形でマークを外したりし、フリーの状況を作りだす。人vs人の分、体格差による影響はより出やすい。

動画はパトリックの得点をチョイスしたが、千代反田のあのヘディングを思い浮かべる人も多いだろう。

 

 

この試合、京都は180cm越えのフィールドプレーヤーがスタメンに3人しかおらず、165~175cmと低身長の選手が多かった。10人の平均身長は175.0cmである。

そこで2トップを大野とロペスにする事でカバーする選択肢もあるが、無難にボランチの片方を179cmの宮城にする事で身長の低さをなんとかしなければならないと思ったのだ。これが「この組み合わせは無いわ」と思った理由。

で、対する町田のデータをちゃんと見てみると、実は180cm台の選手が2人のみ。10人の平均身長は174.9cmと京都よりごくわずかに劣っている。

f:id:nya137:20180227213645p:plain

 

昨年の流れを汲んで今季もゾーンを継続しているのかもしれないが、この試合に関して言えば体格的にはイーブン。ボランチにCBの経験もある179cmの宮城を起用し、マンマークを採用する事で失点を防ぐことはできたのではないだろうか。(ものすごい結果論であることは勿論承知)

 

開始5分でああもズラされて失点したのを見ると、セットプレーの練習すらロクにやってこなかったんじゃねえのと、つい疑ってしまうんだよねえ。