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-2017年シーズン振り返り- 京都サンガに何が起きたのか?【下編 STOP闇だらけ運営】

 

2016年シーズンでJ1昇格PO出場圏内の5位に導いた石丸監督を解任し、監督未経験の布部陽功氏を招聘。16年末サポーターズカンファレンスでは当然「なぜ?」と疑問上がったが、決してJ1昇格をあきらめる訳でもなく、チーム人件費リーグ2位(予定)となる額を費やしJ1昇格を目指す事を再度発表。

だが、蓋を開けてみると開幕以降1度も一桁順位に食い込むことはなく、J1昇格も早々に消滅。ホーム最終戦では、昨年終盤戦や開幕頃と比較して数もまばらになったサポーターからクラブ史上最も酷いと言っても過言ではない低迷っぷりとクラブの体質、そしてその元凶であるフロント・監督らを名指しで非難する異例のメッセージが送られるほどであった。

 

ホーム最終戦を終えてあいさつする山中社長にサポーター席からは批判する横断幕が掲げられた(11日、京都市右京区・西京極陸上競技場)

サンガ下位低迷、サポーターらブーイング 怒りの横断幕も : 京都新聞

 

 

なぜ2017年はこのような低迷に至ったのか?いったいどれほどおかしなことをしていたのか?

いよいよ17年そのものを見ていきます。

 

上編と中編

 

 

 

 

前任者の遺産が消滅した序盤戦

シーズン序盤、3-4-3のシステムで臨んだ布部サンガは開幕7戦で1勝1分け5敗という圧倒的なクソ成績を残しました。

 

J2で勝ち点を積み上げるには、湘南に代表されるようにスタートダッシュが肝心です

いや、正確には「開幕時点で完成度の高いチームだからこそ昇格できる」と言えるかもしれません。

2012年の開幕戦で天皇杯準優勝チーム/大木体制2年目だった京都に逆転勝利を果たし、最終順位でも京都を3位に追いやって自動昇格を果たした湘南ベルマーレは、トップチームでの指揮は初めてだったチョウキジェ氏が反町氏のあとを引き継いで素晴らしいチームを作りあげ、開幕10戦で勝ち点25を積み上げる圧倒的なスタートダッシュを決めていましたね。

 

一方の京都。

たまたま勝てた徳島戦も、リカルド・ロドリゲス監督の素晴らしいチーム89分間圧倒され殺されていたのにたった一本のロングボールとフリックで奇跡的に金星を挙げただけであり、鹿児島キャンプは単なる遠足か?と思ってしまうような完成度の低さ。

 スタートダッシュに完全に失敗した京都は、まさに開幕時点で完成度の高いチームにとってのカモ」側

 

理由をいくつか挙げてみると…

開幕からつまづいた要因その1:布陣と選手層のミスマッチ

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まず、WBの適任者が石櫃/内田/湯澤くらいで、三人中レフティーは0。左利きという事もあってか本多を一列前に上げて起用したこともあったが、オフェンス面での能力が高い選手でもなく…島村はレフティー(図記載漏れ)だがどう考えてもWBではないし、麻田同様にユースから上がったばかりの高卒ルーキー。

フォーメーションでサッカーをするわけではありませんが、選手という持てる資源を最大限有効活用する為にも適したフォーメーションを用いる必要があります。また、相手あっての競技ですから、自分たちの強みを発揮することだけでなく、相手の弱みにぶつける事、相手の強みを消す事も求められます。

おそらく、この3-4-3は闘莉王を使いたくて3バックに設定し、そこから組み立てたんだろうと個人的に予想していますけど…

予期された編成面の不備=強化部の怠慢と、監督のマネジメント不足の両方によって布陣と選手層のミスマッチが起きてしまいました

 

開幕からつまづいた要因その2:闘莉王らのコンディション不良

先ほど挙げたように、この3-4-3は戦力的なものなのか契約的なものなのかはわかりませんが闘莉王を柱とする事を前提に組み立てられたのではと個人的には思っています。(仮にそうだとすると、この時点でおかしなことなのですが…)

ただ、闘莉王選手自体が「これは活きるように中心に据えますわ」という出来であれば、3バック導入自体は納得できるし、そこから考えていくのもまあ理解できなくはないはずの話。

しかし、開幕戦では「時代遅れの車」とでも形容するほかないようなエンジンのかからなさ。2節 徳島戦では怪我の功名で"FW闘莉王"が生まれ、FW闘莉王のおかげで勝ち点3を奪うも、DFラインはコンディションに合わせるように「ドン引き」状態。DFラインが低ければ悪いって訳ではないし、高ければ良い訳ではないのですが闘莉王いない試合ではガンガン気持ちプレスかけたりしてるんだよなあ…

3節 福岡戦はケガの影響でメンバー外だったのに現地には謎帯同。

4節 岡山戦ではクローザー的に途中出場も逆転負け。そして8節まで連続欠場…

(チームの出来もそうですが、)キャンプ中に「これはアカンやろ」と止める人間はいなかったのか?????

 

もちろん選手は駒でしかないので、ダメな選手は外せばいいだけの話。闘莉王選手に関しては起用する監督または起用せざるを得ない状況を作った人が悪い訳ですが。

(※起用せざるを得ない云々は「明らかにへばっているのに必ずフル出場」とか「試合中一切アップしないような状態でベンチ入り」とか「練習で合流できていないメニューがあるのに試合に出れる」とかを見聞きして想像で書いてるだけですからね。一応)

また、闘莉王選手以外のコンディション問題。例えばケヴィンオリス選手のケガ等は監督にとって不運な出来事だったと思います。

しかしそのケヴィン選手に関しても、「この日のパフォーマンスから、単純に『大黒よりオリスがいい』というわけではない。サッカーはチームスポーツだ。大黒を起用するなら、最前線での動き出しを生かせるパスの供給役が必要となる。そのタイプが不在ならば、オリスのように前線で起点を作れるタイプを置くほうがチームとして機能しやすいのではないか」と雨堤氏が指摘したように、本来あのような(要因3で後述)状況であればスタートから使うべき選手であって…

 

開幕からつまづいた要因その3:ビルドアップできない問題

自陣側からパスを繋いで攻撃を組み立てていく行為のことを「ビルドアップ」と言いますが、この「ビルドアップ」が全く整理されていないからボールが繋がらない。

なぜなら、規律が見当たらないから

 

以下は第3節の福岡戦の雑なキャプ画ですが、これを用いて少し見ていきます。アウェイ側の京都は白のユニフォーム着用です。

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ボランチ吉野選手が福岡の選手間に陣取っており、真ん中を抜かれたくない福岡側はファーストディフェンダー2人が中央に絞ることで吉野選手へのパスコースを消していました(赤丸部分)。福岡からすると「ゴールにより直結するプレーはやられたくない」「中央よりセーフティな外側へ追い込みたい」が故の行為ですね。

逆に京都視点だと、吉野選手がこのポジションをとる事で「福岡のファーストディフェンスを中央に釘付けにできている」と言えます。京都の左サイド(画面側)は左CB本多選手で、右サイド(奥側)は右CB染谷選手。ボールホルダーのCB牟田選手と染谷選手の間に居るのがボランチの仙頭選手。サイドに開いたCBは両者共にWBの選手より中央に絞った位置に陣取っています。

 

 ②1枚目の時点でそうでしたが、福岡のウェリントン選手が本多選手側をケアする動きを見せたこともあり、ボールホルダーは赤丸ゾーンの吉野選手にパスを預け、吉野選手は即座にリターンパス。このパス交換によって、アビスパの1列目は体の向きが中央を向くくらい中央に釘付けです。

 

③リターンを受けた牟田選手は左側に位置取っている本多選手へとパス。しかし画像左側を見るとわかるように、即座に福岡の選手がプレスへ走っています。動画ではないのが申し訳ないですが、牟田選手のパスの蹴り方は動作に入った時点でどの方面へ蹴るか読みやすいものでした

 

④福岡の選手の出足が早かった分、パスを受ける本多選手にかなり接近。

 

⑤本多選手は左利きですが、左足で開き気味(左側)にトラップしてそのまま左サイドへ展開するのではなく、最もリスクの小さいプレーを選択。すなわち、右から来るパスを迎え入れると同時に左から来る相手選手とボールの間に体を置いて守れる自陣側へのトラップです。牟田選手のパスの蹴り方とスピード・本多選手のポジション取りや技量・映っていない左サイドの状況(=次のパスの選択肢)次第では、もっと余裕をもってボールを迎え入れ、左サイドに余裕で展開することもできたはずですが…

 

⑥自陣側へトラップした本多選手はそのまま牟田選手へリターン。福岡からするとここでギャップを創ったりして吉野選手に通されてしまうと元も子もないですが、牟田選手へとリターンさせることに成功したので今度はリターン先へウェリントン選手がプレス

 

⑦リターンを受ける側の牟田選手は、ウェリントン選手から逃げると同時にパスコースを作りたい意図があったのか、ボールから受け入れにいくのではなく逃げるような形でパスを受けようとします

 

⑧この時、牟田選手には、右サイドの染谷選手と後ろに控えるGK菅野選手への2通り、セーフティなパスを出せる相手・選択肢があると言えるかと思います。しっかりボールを止めて本多選手へ戻す選択肢もあるでしょう。

しかし牟田選手は余裕のある味方選手にパスするのではなく、1列前の仙頭選手へのパスを選択します

 

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⑨仙頭選手にボールが一応通りますが、背後から相手選手のプレッシャーを受けている事もあってか、少し仙頭選手がトラップ処理にもたつきます。右足(赤丸部分)でボールを保持しています

 

⑩このまま自陣深いところでボールを奪われてしまうと大ピンチですので、ここで仙頭選手は繋ぐことよりリスク回避を取る判断をします。反転してボールを大きく前へ蹴りだします

 

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 ⑪福岡DFがボールを回収。京都は低い位置でボールを奪われてそのままピンチへ…という最悪の展開こそ免れましたが、この10秒ちょっとの展開の中で簡単にボールを失ってしまいました。

 

なお、後半もこんな感じの様子が。(牟田→仙頭のところで捕まる→本多に叩いて本多は前に無理くり蹴りだすの図)

 

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というような地獄絵図でして……

横幅68mをたった2人で担当している福岡のDFライン1列目に対し、これだけ人数をかけて、しかも2列目の壁にぶち当たって前進に四苦八苦とは一体どういうことなのか。

選手が探り探り、また福岡の圧力にビビりながらプレーしており、各選手のポジショニング・プレーの優先順位…どれもトレーニングにて整理されていないままに試合をこなしているから、重心の重たさ/ポジショニングのいびつさ/精度の低いパスやトラップ/自陣深くでのリスキーなプレー等の問題が起きているとしか私には思えませんでした。

ちなみにこの試合で布部監督はこうコメント

Q:開幕から難しい試合が続いていますが、終了間際の粘り強さのようなものも出せていると思います。今後、どのあたりを修正して波に乗りたいとお考えでしょうか?
「自分たちとしては、ハーフウェイラインまで、もう少しボールをつないで、相手陣内に侵入してから、いろんな攻撃を仕掛けたいと思っているんですけれども、ハーフラインまでの組み立てが、現在の課題だと感じています」

【無料記事】【監督会見 J2第3節 福岡-京都】一矢を報いるも完成度に課題。「今日の試合を次につなげたい」/布部陽功監督 : 「football fukuoka」中倉一志

 
開幕からつまづいた要因その④:守る事すらできない問題

えー、更にこのように、"試合中に監督が大声を張り上げてプレスの開始地点を指示する"驚きの光景が見られました。

ゴールを奪われない/ボールを奪う為に必要な、ボールの奪いどころ・ポジショニングなどがトレーニングで十分に落とし込めていないが故の事象ではないでしょうか?高校サッカーの県大会3回戦じゃないんだから。もちろん試合中にズレが起きていたら即座の修正は大事なんですけども、こういう場合は……

秋田氏が解説してるのが良い味出してますね。

 

そしてこの試合の後半、先の動画で監督から指示を受けていた石櫃選手がボールにチャレンジするところからズレてズレて失点。もっと言うとこの1試合前の千葉戦でもズレズレ守備を露呈。

 ※丁寧な解説ツイートを引用させていただきます

中編で書いたように、前任の石丸体制でもボールホルダーへの寄せが甘い等々立て直したとはいえ守備にも少々不備がありましたけれど、これはもう問題外です。

石丸監督では足りないからと、布部監督を招聘したのに、酷い弱体化です。

twitter.com/tome_beta/status/850323522291245056

 

後に、9月に開かれた説明会でフロントにサポーターから疑問を投げかけてみたところ返ってきた答えは…

・PO後に監督が決まったので、ストーブリーグに出遅れて監督からの要望に応えきれなかった

・キャンプ地の芝が火山灰の影響で硬くなって思っていたトレーニングが積めなかった。コンディション問題にもつながった

・サイドと高さを活かそう!闘莉王をCBに据えるなら3バックだろう!と強化部と監督が話し合って3-4-3でチーム作りを進めた

・ビルドアップができない問題は、キャンプでブロックを敷いて守るJ1のクラブとしか試合をしてなかったから。いざ開幕するとJ2のがんがんプレスに手を焼いて前に運べなかった

・また、選手の技量などが監督が想定していたレベルに達していないからビルドアップができない

・(J2 5位に導いた監督を「時間とお金が無い」で切っておきながら)布部監督が現状なにができるかを見ている

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ちなみにこの頃のわたくし。

「見たらわかる。バドゥと和田さんの時と同じやつやん」ってな。

 

 

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ツインタワー依存の春~中盤戦

こうした「守れないし攻めれない」という絶望的な状況下ならば、本来監督交代があってもおかしくないところ。しかし、さきほど紹介したように「現状でなにをできるかを見ている(キリッ)」で布部体制のままで山のようにある問題を解決しようとします。

 

そこで、解決の為に強化部との話し合いと布部監督の説得とやらで8節以降採用されたのが、オリスと闘莉王をFWに据える4-4-2システム。

そう"ツインタワー"です

 

思えば、唯一勝利を収めた徳島戦の決勝点がそうだったように、192cm92kgのオリスと185cm85kgの闘莉王がゴール近くで競ればJ2のディフェンダーにとっては勝ち目なし。

89分試合を支配されていてもたった1本で壊せてしまうその圧倒的ば物量面での優位で他クラブに札束ビンタを喰らわせます。

クロス/ロングフィード/ロングスローを放り込むだけでチャンスになるという札束攻撃により、京都は8節以降の11試合で5勝6分けと復調します。

 

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しかし見ての通り、引き分けの数が先行しており連勝も0。

 

それもそのはず、

①4-4-2に切替により守備時にブロックを敷いてごまかせるようになったほか、前年の遺産でなんとかマシ(開幕7試合11失点→次の7試合7失点)にはなったものの石丸体制より明らかにふんわりした守備。2トップが共に重量級の為に守備タスクをこなせず、2列目への守備の負担が激しくなる問題発生

②前に蹴ってごまかしているだけでビルドアップは相変わらずできない。また、そもそもプレーの選択肢から捨てている。その為、ツインタワーがそろわないと分が悪い

③J2ではチート級とはいえ同タイプの2トップ故に2トップ間でなんとかしてはもらえない。速攻時に闘莉王にボールを持たせても鈍重故に停滞したりする

④先の映像で見せたように、半年間のブランクと年齢などの影響からなのかコンディション不良の闘莉王(36歳)の運動量の少なさ。および試合欠場

と、ツインタワー導入によって前線にポイントができる→キック&ラッシュでボールを前に運べるようになる→ボールを持てる時間が増える→ボールを持っていれば守備をしなくて済むので失点のリスクが減る→しかもツインタワーのおかげで相手がラインを下げたりしてくれるとより安全になる→勝ち点が積みやすくなる

というだけで、ビルドアップや守備等の問題自体はなにも解決されていないが故に、「2点目が取れない」「1点を守り切れない」状態が生まれます。

 

また、ツインタワーしかないやり方故に、ツインタワーが封じられたり、そもそも2枚揃わない事が出てくると機能はせず当然結果にも影響が出ます。4-4-2導入以降、闘莉王が未出場の公式戦8試合は1勝4分け3敗。オリスが未出場の11試合では4勝5分2敗となっています。

じゃんけんで絶対に勝ちたければ、相手の出す手が分かっていればいい。相手がグーを出したら後出しでパーを出す。あるいは相手にグーを出させてパーを出す。敵と戦って勝つには、引き出しの数を増やし、状況に応じて最善の手を選択することが重要。グーしか出せないから相手の顔面を殴るようなやり方では当然限界を迎えます。

 

何より、組織で連携して相手を崩したり、ゴールを守ったり、そういった戦術的な洗練度合のないチームは見ていて実につまらない。今季「サッカーをした」試合はいったい何試合あったのか?

 

また、このツインタワー方式はユースや若手育成的にも当然良くありません。

「チームの強みを活かしているサッカー」と言えば聞こえはいいが、それしかできないから活かすほかないし、活かしているというより依存しているだけ。補強ができるトップチームだからこそ成し得るサッカーであり、育成年代において大型FW2枚並べてそこにボールを集めるなんてサッカーは実現可能性がほぼ0な上に、仮にできたところで選手の成長になんにも繋がらない。育成組織に対する投資の比重が非常に高い京都において、ツインタワー頼みのサッカーをトップチームがやっていても無駄でしかない。

また、争奪戦を制して獲得した高卒ルーキーのFW岩崎悠人について「最低でも代表には」と語っておきながら、サイドハーフの位置でツインタワーの介護をする事を良しとしていたのだから、岩崎本人の成長曲線の変化や新卒選手獲得等多方面に生じる悪影響も怖い。

仙頭のようにキック&ラッシュへのスタイル変更でポジションを失ってしまった選手もいる。ボールを繋げないチームにおいて潤滑油的な役割を果たしていた仙頭は、ツインタワー導入以降、TMでは活躍を見せたりするものの出場数が激減する。

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つまり、「その場しのぎのプランとしては良いが、やがて終わりが来るプランであり、かつ戦略的に見ても正しいとは思えないやり方」である。

そしてこのプランから正しいプランへと修正を実行するには、布部体制で無理なのははっきりとわかっていた。だってツインタワーに当てるほかに何もないのだから。

 

暑い夏が来れば、試合中にそがれる運動量や集中力はより増す。組織として整備されきってないチームにとっては苦しい夏だ。整備されていない分、無駄走りでカバーをする。整備されていない分、思考を要する、なのに、暑さがそれを邪魔するのだから。

さらに、監督交代やコーチ招聘によって解決を図ろうにも、夏ではコンディション調整が優先されてトレーニングで戦術を落とし込むには支障が出るかもしれない。

一刻も早い決断が求められていた…求められていたはずだった…

 

 

ツインタワー効果、消える

 湘南に敗れて負けなし記録が11戦でストップすると、気持ちでなんとか持っていた部分が切れたことと暑さが原因だろうか、選手の動きも悪くなって、改善されてこなかった問題が超顕在化してくる…そらそうだわな…だから監督変えろってずっと言ってるのに…

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どれくらい酷いかってこんな感じ。

 

更にこのあたりからプレーの粗さだけでなく"荒さ"も目立つようになる。

J3の沼津にほぼベストメンバーで挑んで完敗を喫した天皇杯では、吉野が差別的発言で3試合の出場停止。水戸戦では吉野とハソンミンの両ボランチがそろって退場。さらにハソンミンは水戸さんの看板を破壊。「負けていて熱くなり言ってしまった」と吉野が語るように、いびつな組織故の負担がかかるポジションなだけに、ストレスまでためこんでいたのかもしれない。もちろんやった本人らが悪いのだが、下手なチームはファウルが必然的に増加するもの。

「闘争心を持ち、フェアプレーに徹し、最後まで全力でプレーする」サッカーを標榜しておきながら反則ポイントは昨年の70から120に増加しJ2最下位となった京都と、ロティーナ監督&イバンコーチ招聘で戦術的に洗練されてPO進出にも成功し、例年100ポイント程度貯めてしまうところが今季はたった15ポイントの東京V。両者を比較すれば答えはおのずと出てくるのでは。

 

また、指揮官の"迷言"がより一層目立ったのもこの頃。

①4-4-2システムでボランチ以前(=4-2の部分)にオリス・ヨンジェ・岩崎・小屋松・闘莉王エスクデロ・仙頭・大黒とFWと元FWのみを起用する策を展開後に「逆転する為にもっとパワーが必要」

 

②最下位相手に試合を終始支配され、しかも誤審による得点取り消して勝ち点3を辛くもつかみ取った群馬戦後の前半戦総括コメント

「自分たちの力が分かったと思います。上位チーム相手でも自分たちのサッカーをやれば十分に通用するし、勝利出来ると確信したと思います」

 

③力負けを喫した長崎戦の試合前後

試合前日「勝ちにいかなきゃいけないので、先発は勝ってきたデータを踏まえて考えたい」

試合後「ミスが起きたときに、それは技術的なミスだったのか、それとも周りの選手のポジショニングや選手を落ち着かせるためのコーチングが必要だったのか。そういった個人戦術とチーム戦術が少し足りなかったと感じています」

(補足:「コミュニケーションは戦術の一つ」)

 

⑤繰り返される「まだまだですね」と「ちょっとしたところ」

・まだまだ編

30節

40節群馬

 

・ちょっと編

41節

「もう少しというところまで」「もうちょっとのところで」

「そういった部分でも東京ヴェルディさんは、勝負強さも持っているなという風に感じましたし、そういった部分が我々に今必要なところかなとも感じました」

「ちょっとしたところをもっと磨かなければいけない」「ちょっとしたパスのミスでピンチを招いたり」

「今日も負けました。でも、みんな負けた感じがしないという、選手の表情をみても感じましたし、選手もそういう声を出ています。やってきたことはここ何試合も間違っていないと思いますし、もう少しちょっとしたところをこの後(残り1試合)やっていきます」

42節

「松本さんが今日の試合まで13敗。我々が13敗。でもこの順位の差。そのちょっとした差というところで課題があったシーズンだったと思います。来季に向けてはそのちょっとしたところを埋めていけるように、一歩、1メーター、1プレー1プレーをしっかりこだわりながら、上を目指してプレーしていきたいと思います。」

 

・どちらも詰め込んだ欲張り編

27節

32節

京都新聞「ちょっとしたところが足りない」と布部監督や選手たちは繰り返す。昇格プレーオフ圏の6位にいる東京Vとは勝ち点差が13。「ちょっとした差」で済まされない現実に、来季サンガは向かい合わなければならない。

大木武監督たとえば「距離感」、たとえば「コンパクト」。具体的にどれだけの距離・広がりかも示さず、指導を曖昧・難解にしている。指導者の整理の仕方、伝え方、指導者と選手の言葉の共有(コノテーション)、選手の理解力をわかったうえでの効果的な言葉遣いが必要ではないか

"指導者としてよく口にしているのは「言葉をかみ砕く」。例えば「バイタル(攻撃エリア)」という言葉があるが、一言で「バイタル」と言われても、各選手が頭に浮かべるイメージは三者三様だ。イメージがバラバラではチームにならない。だから、風間監督はあいまいな言葉は一切使用しない"

 

もちろん、記者会見で監督が事細かにしゃべる必要はない。むしろ手の内を隠すためにはぐらかすべきだろう。しかし意図して抽象的に話すのと、具体的に話せないのでは当然訳が違う。指導の際にも非常に難解な表現を用いているのではないかと心配にしかならない。

 

また、チームの機能不全の原因を正しく認知できているのだろうか?指揮官はどうも選手に責任をなすりつけるような表現を用いる時がある。「ミスが響いた結果かな」とか、じゃあそのミスの原因はなに?っていう。貴方たちに原因あるでしょう?っていう。

認知→判断→決断→実行というサイクルを回す、またトレーニングにおいてチームの課題から計画を立ててPDCAサイクルを回す…って作業が重要だと思うのですが、監督もフロントもわかっていない、またわかっているのに実行に移す術もやる気もないのであれば、何時まで経っても「ちょっとしたこと」は改善されませんよね。うん。

 

https://twitter.com/nks137/status/901785270156009472

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s://twitter.com/nks137/status/926062208710197248

 

 繋いだ!繋いだ!布部サンガはまだ終わらなーい!

 そんなこんなでサッカーと呼べないような代物を展開しつつも、さすがは名古屋に次いでリーグ人件費2位(予定)を費やしただけはあるチーム、なんとか12位フィニッシュでJ3降格は免れます。

秋ごろからオリスが使われなくなって代わりに仙頭がスタメンに復活したあたりは、「ツインタワーから脱却したい」が為の能動的な起用法/戦術の変化と、来季以降を見据えた(=来季残さない人間は使わない)受動的な戦い方の変化の両面を感じましたが、昇格も降格もなくなった事で大野らを含め若手の出場機会が増加したのはいいことでした。

 

ただまあ相変わらずサッカーはgdgdで…

https://youtu.be/RKN_IDJ8NWg?t=1m35s

 

ハソンミンの前半早々の退場にキレておきながら、出場停止明けの残り3試合全てスタメン起用で…相変わらずよくわからなくて…

 

 

5位に導いたサンガOBで天皇杯優勝時のキャプテンだった監督を「時間とお金が無い」で切っておきながら、42試合で14勝15分13敗/55得点47失点の12位という成績とサッカーになっていないサッカーを残した監督を「雰囲気がいい」などと述べて続投……

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私物化クラブよ、どこへ行く

という訳でして、いよいよまとめに入るんですけども…

 

どこまで書いて良いものかわかりませんし、まだ言えない(ひょっとしたら今後も言えない)話もあるので、ぼんやりした記述になってしまいます。ごめんなさい。

ただ、昨年末および今年いろいろな方から聞いた信頼できる情報や、表に出てきている情報から察するに、この2年間は以下のようなシナリオかなと思います。

公表・報道されている部分に関しては太字にしておきます。

 

2015年 前社長が私物化して17位と低迷

オフに大補強。本多牟田と名古屋の主力を引き抜く

小島卓スカウト加入

自主規制

石丸監督の解雇および放出選手内定

5位になるもPO準決勝で敗退

自主規制(※時期不明)

小島卓スカウトと同級生で近畿大学/ブラジル留学/V神戸での繋がりがある、監督未経験の布部氏が就任

田口(名古屋)と同じ代理事務所で同じボランチの選手である望月を獲得。吉野を残そうとしつつも田口にもオファー

偏ったままの編成で始動。「キャンプ地のコンディション不良」「J1のチームとばかりTMをしたからプレスに来るチームに慣れなかった~」

去年のサッカーの見る影もなく、7戦1勝1分5敗で「布部、涙」報道

強化部が介入し、4-4-2導入で誤魔化すことに成功

ツインタワーが効かなくなるけれど、監督更迭はなし

自主規制

リーグ戦成績が昨年の勝ち点69 5位から勝ち点57点 12位と大幅に悪化

闘莉王らへ契約延長オファー

野口強化部長と細川強化本部長が更迭

小島スカウト、強化部長へ昇進

布部監督、続投

あの人にフラれる

自主規制

ボスニア代表監督候補でもあったボスコにヘッドコーチのオファー

現在

 

 

というわけで、

本来は、「軸となるクラブとしてのプレーモデルおよび戦略の策定/決定→適した監督/選手の獲得および育成」という流れで有能なフロントがチームビルディングを行い、有能なコーチングスタッフが戦術の落とし込みやマネジメントを図るもの。ですから、中編で「サンガバリューの策定→キジェ監督にオファー→石丸監督の留任」という流れを私は褒めたのです。

※「プレーモデル」=「チームの全プレーヤーが共有する原則/判断基準」という意味で使用しています。 

交渉の席でフロント陣は「マリノスとしてのプレーモデルは決まっているので、それをさらに成長させてくれる監督にする」と説明 [契約更改交渉スタート]

 

しかし、いまの京都は明らかに「プレーモデルおよび戦略等中長期的な視点の欠如」。そして「軸とすべき判断基準より、ある特定の個人の意思や考えの方が意思決定時に優先されている」異常事態です。名古屋や群馬、そして2年前の京都で起きた悲劇がまた繰り返されようとしています。

クソ編成のチームを任された布部さんも、闘莉王選手のせいでやりづらかったとか、色々と被害者な部分はありましたが、でも加害者な訳でもあって。辞任って責任の取り方もあるんですよ。でも来年の契約更新にも合意してしまった。

 

なにより、前年に5位に導いた監督を「時間とお金が無い」とか嘘ついて解雇しておいて、全てをぶっ壊した監督は続投させる客観的な根拠って何なんでしょう?

チーム作りにおいて、ファンの心理を過度に考慮する必要はありません。勝利というゴールから逆算してチーム作りを行う、その為にチーム内で絶対に守らなければならない原則などを作りあげて継承する、それができていればチームが崩壊する事はありませんし、「なんであんな奴取ってきた!」というファンも結果を出されると文句を言わなくなります。現場はプロダクトアウトの形でいいんです。

しかしですよ、天皇杯優勝時のOBを切って、山瀬を出して、(また乗っ取られたから擁護しないけど)ミスターサンガ野口も切られて、小島氏と布部氏がこのクラブに居残る。

ただでさえチームアイデンティフィケーションがJ1/J2でワーストクラスの京都サンガ、ファンがまた消えますよこれ?????

ボスコを招聘する事で「J3降格はないな」という安心はできますけど、でも監督はこのまま布部氏でスタートする訳で、そりゃあこんなおかしな事をわざとやってたら消えちゃいますよ。しかも一部のサポには知られている自主規制部分のネタもあるしねえ。

Twitterで取ったアンケートの結果

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サンガ(に限った話ではないですが)が弱いのは、軸となるサッカースタイルやプレーモデルが定まっておらず戦術的な優位性がないからです。今年に関しては、人件費がリーグ2位(予定)と物量では比較優位を有していながら、戦術面でしてやられて12位になっとるわけです。

だから、世界の潮流と適しているサンガのサッカーを作って管理できる強化スタッフ人材・サンガのサッカーが実現できる監督・そして選手が必要なのです。

 

例えば、競技面でサンガがやらなければならない事をかいつまんでみるとこういう事。

①全カテゴリーで共通したプレーモデルの設計/中長期的な戦略の構築

②1で挙げた事を実行し、モニタリングできる有能な強化スタッフの招聘

③1や戦術的な適応能力等を選手に落とし込める有能なコーチングスタッフの招聘

④1.2.3によってトップと共通の基準のもと、スクール~アカデミーにおいて戦術的な適応能力やボールテクニック・フィジカル等全てを早い段階から鍛え上げる

⑤プレーモデル/戦略/監督の戦術に適した選手の補強

⑥優秀なコーチングスタッフと選手で、軸に沿ったトップチームを作りあげる

予算のハンディを覆すためにも、育成組織にかなり投資していることを活かす為にも、日本人のスタッフで満足していてはいけないし、ましてや今いる人間なんかに任せたらダメですよ。せめて失敗さえしなければいいのに、訳のわからない監督を連れてきたり、クラブが私物化されたり…2年に1度ペースで大ダメージ喰らわされたらそりゃあ無理。新スタジアムで連覇なんて無理。J3連覇(債務超過状態でJ2ライセンス取得できず)の方が可能性あるくらい。

なんで戦略→組織→戦術駆使という当たり前の事ができないのか…私心だらけで無茶苦茶ですよもう。

 

 

 

最後に

京都新聞の振り返り記事に、書いてあったのですが

サンガは、京セラが長年メインスポンサーとして支え、資金的に恵まれたクラブという印象があるが、今季の収益見込みは約18億円で、実はJ2でも5番目前後にすぎない。京セラからの収入もJ1時代に比べて大幅に減少しており、稲盛名誉会長が西京極に観戦に訪れることも減っている

 まあ撤退はないにせよ、このままではクラブ消滅も近いかもしれませんな。「勝てば客が集まる」「良いサッカーができれば客が集まる」。そんな"病気"に経営者らがかかっている中で、まともなサッカーの構築すらできない。

そもそも、ファンサポーターを騙す行動を取っていて、誰がついていくのだろうか。嘘に嘘を重ねていった先になにがあるのだろうか。

 

膿は外へ出すべきだ。たとえもう手遅れでも、痛みを伴うモノだとしても、このまま蝕まれ朽ち果てていくよりも、はるかにいい。今季はU18がJユースカップ優勝を果たしたが、彼らの目指す先がアレっていうのは、むごすぎる。悲しすぎる。

私は貴乃花でありたい。サンガにはクリーンなクラブであってほしい。罪を罪と認めず、なあなあにすることは許されない。サンガは単なる企業の持ち物ではない。みんなのものだ。このまま破滅に向かってはいけない。

クラブハウスに掲揚されている「敬天愛人」の書は、単なる飾りのままなのだろうか? 理念の達成、行動指針の実行はいつなのだろうか?

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サンガってなんだ?

チーム運営とクラブ運営の両面に皆が抱くその疑問にアンサーを提示できるのか。大げさでもなんでもなく、クラブの運命は今の判断に懸かっている。

 

 

 

 

今日の1曲

 

 

 

今年1年間、必死に耐え抜いた選手・スタッフ・ボランティアの皆さん。そして耐えて耐えてチームを支え続けた同志の皆さん、おつかれさまでした。

特に選手。今年のサンガに来てくれて本当にありがとう。J2残留を成し遂げられたのはあなたたちのおかげです。ありがとう。