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少しだけ未来の話を -2018J2第37節 京都vs徳島-

 「殴るか、弄られるか。」

 金曜日の夜、つまりは徳島戦の前に、個人的に予想していた試合展開である。

 

 前節、大分トリニータ戦での内容も鑑みれば、京都サポーターの心境は皆同様だったはず。

 結果的に、京都にとっては前半3分に自慢の高さを活かした幸運な得点が、徳島にとっては出会い頭の事故のような失点が生まれ、勝敗を決した。DAZNによるスタッツでは21本のシュート(内、枠内12本)を放った徳島と、文字通り体を張った守備でゴールだけは割らせなかった京都。先制パンチを守り切り、大分戦の二の舞を回避して無事に「殴れた」試合だった。良い方に予想的中。まだまだ安心はできないが、J2残留を手繰り寄せる貴重な勝ち点3となった。

 

 

 思い返せば、昨年の「ツインタワー」導入から、高さ・強さ・粗さ。質的優位というよりかは、ある種の暴力のような勝ち点の貪り方を京都は続けてきた。

 今季は闘莉王の不調と離脱等によってバイオレンスさは鳴りを潜め、またヘッドコーチから昇格したボスコ・ジュロブスキーの4-1-4-1システムへのこだわりなど「浸透しないのに妙に小奇麗さに固執する」癖もあって唯一の武器すら失っていたが、夏のウィンドーにおける大量補強と、再度落ち込み始めた9月頃からの闘莉王の復調によって「殴れる」試合が急増。26節が終了した時点での順位は最下位で、残留圏内である20位との勝ち点差が『8』と、前半戦21試合で4勝のチームが最低でも3勝分の勝ち点を残さないといけなかった絶望的な状況から這い上がることができたのは、やはり唯一のストロングポイントのおかげだろう。使い方がなっていないが、カイオ・レンゾロペス・闘莉王が前線に3枚並び「トリプルタワー」を形成する時間帯すら存在するのだから。

 

 

 徳島戦も、4-4-2の基本布陣の2トップにカイオと闘莉王の長身FWを並べ、サイドハーフに岩崎と小屋松が入る形。すなわち、昨年のケヴィンオリスと闘莉王によるツインタワーと、そのツインタワーの守備面でのハンディ(運動量/スピードの不足)をサイドハーフに入った岩崎と小屋松が常人離れの運動量とスピードで補う介護シフトと大枠は同じ。紆余曲折を経て、結局1年前と同じ戦法に回帰したことになる。

 ゴール前にバスを止め、数多く被弾しながらも最後まで粘り強く守って勝ち点を積み重ねる事ができている点。ショートパスの交換を含め、ボールを運ぶ・持つ手段があることで昨年より自分達でペースをコントロールできている点は選手たちを褒めてあげたいが。

 

 もはや京都サンガはまともにサッカーをやって勝てるチームではない。まともにサッカーをしたところで勝ち目は薄いし、現にボスコ就任以降、「夏の大量補強~高さで勝負」時期に至るまで勝ち点を全く拾えなかった事が証明している。私自身、本来は否定的な立場だが、やらざるを得ない戦い方だと、わざわざ難しいことをやらずとも(ツインタワーかどうかはさておき)4-4-2で基本に忠実にやればいいと思ってきたし主張してきた。

 

 だがこの戦い方は、昨年ほど酷くはなく、前監督時代より組織的な一面も見られるとはいえ、クラブ側も昨年の現状説明会にて否定したやり方のはず。その場しのぎの策としてはアリだが、やはりこれが基本軸になってはいけないし、なり得ない。そうクラブ自身も思っていたはずなのである。

 季節は変わるのに心だけ立ち止まったまま―― 「M」ではなく「N」なんだけども。

 

 

 

 

 今季、布部前監督もボスコ監督も「京都のサッカーを作り上げている」と公式な媒体で発言している。前者は新聞や監督コメントで。後者はファンクラブ会報誌で。

 しかし、一時期はショートパスを小気味良く繋ぐだけで「京都らしいサッカーが展開されています」などと実況アナにアナウンスされた頃もあったが、現状の京都らしいサッカーとは「高身長FWへのハイボールによってアバウトに相手を押し倒すサッカー」である。チームが機能しているとは言い切れない、個々の能力に依存した幅の狭い、緻密さにかけた現状のサッカーこそが目指すべきサッカーなのだろうか。フィロソフィーとやらに基づくものなのだろうか。

 

 先日、またもや上背の低い京都橘産・大卒新人ドリブラーの獲得がリリースされ、ますます似たタイプの選手が増える見込み(整理しなければ)となっている。いくらダブつかせるつもりなのか…「岩崎をFWで固定しろ」とは思わないし、むしろ徳島戦でのプレーを見ていたらもうサイドアタッカーで良いんじゃないのとも思ってしまうので余計にどうすんねん感ある。


 

 いずれにせよ、あまりにも歪なポジションバランス(適正ポジションの未発掘含め)の修正とこの低迷からの脱出を考えれば、今オフこそは指導者をはじめとするチーム編成を整理し、成功しなければならない。その為には、チーム編成を指揮する立場に大ナタを振るわなければならない。

 しかし、現状は使えないし使いたくもない強化部長と謎SDのにらめっこでも繰り広げられてそうな悪い予感しかしない。2015年の低迷時には大型補強によるショック治療を断行できたが、今はそんな資金的余裕(赤字を出せる体力)はない。昨年、今年、そして来シーズンと、3年連続で打つ手を間違えてしまったならば、今年の比ではない低空飛行で、J3にて新スタジアム初年度を迎えてしまう結末となってしまっても何ら不思議ではないのだが…

 

 来年の話をすれば鬼が笑う。だが、目先の結果と少し先の未来・遠い先の未来を見据えて着々と仕事をしていくのがプロフェッショナルなサッカークラブのフロントというものである。