(株)京都パープルサンガの2020年12月期の売上出てきた…
と思ったら速報版で各クラブの決算資料が出てきましたね。
さきほど、2020年度クラブ経営情報開示に関するメディア説明会を終えました。
— Jリーグのコーホーちゃん (@J_League_PR) 2021年5月28日
経営情報に関する資料はこちらhttps://t.co/piuodZMxXl
決算一覧はこちらhttps://t.co/RR7OQcxJlz
※3月決算の3クラブ(柏、湘南、磐田)を除く
新スタジアム効果?コロナ禍だけど黒字
「え、黒字なの?」
今回についてはこの一言に尽きると思います。
各Jリーグクラブが軒並み損失計上し、債務超過状態に陥るクラブもある中で、まさかの増収増益。
コロナ禍でクラブライセンス制度の運用も柔軟化しているとは言え、安定したクラブ運営を続けていく上でも、また好調なスタートを切っている2021年シーズンのチーム戦績向上へ向けても、この単年黒字達成は非常に大きな成果と言えるでしょう。
Jリーグの決算リリースによって細かい数字も見れるようになったので深堀りしていくと、新スタジアム移転がエポックメイキングである事がより良くわかります。
まずは大まかな全体像を。見づらいですが、以下は経営資料が開示されている2005年度以降の営業収入とその内訳になります。(その他については現在更に細分化されていますが割愛)
各クラブの経営努力により拡大均衡路線を歩むJリーグの中で、対照的に2008年をピークに下落線を辿っていった京都。債務超過脱却と財政健全化という名のコストカット路線を歩んだ今井社長時代(2010~2015年途中)は年々クラブ規模が小さくなっていた事がわかります。
その後、「卵が先か鶏が先か」と巨額の赤字を覚悟で人件費への投資を強めた山中社長体制(2015年途中~2018年)を経て、新スタジアム移転直前の2019年シーズンは7年ぶりの営業収入20億円台回復。氏の経営方針が正しかったかどうかは疑問符ですが、こうして見ると「京セラ本体から強気な発言がする人が送られてきた=お財布の口が緩くなった」という処でしょうか。
J1時代とそん色のない広告料収入
部門別に簡単に紐解いていきましょう。
営業収入20億円台回復とコロナ禍でも増収できた一番の要因は広告料収入の増加です。20年度はJ1の舞台で戦った06・08~10シーズン並みの15億2千万円を記録しています。
J2において、このコロナ禍において、これだけの多くのご支援をいただけたというのは、"①新スタジアム効果による新規スポンサー獲得"および京セラ本体やユニフォームスポンサーに加わった堀場製作所をはじめとする"②既存スポンサーからの増額"の両輪がうまく回った事が要因でしょう。
そして過去のクラブ関係者の発言を鑑みるに、昇格を果たした際には良くも悪くも既存スポンサーから「J1価格」として更なるスポンサーフィーの上澄みが期待できます。但し、本来はカテゴリーに関係なく同じ価値を提供して同じだけの対価をいただく事が正常な状態だと思いますが。
入場制限に苦しむも入場料収入微増。客単価は大幅な改善
続いて入場料収入。無観客試合開催など入場者数に上限を強いられた20年シーズンではあったものの、チケット収入は前期比4百万円増の202百万円を記録。この数字については、"①セレッソ大阪との有料プレシーズンマッチの寄与" "②新スタジアム移転に伴う客単価の向上"が要因と考えられます。
①については、2月9日開催で制限もなく入場者数17938人を記録。大人前売りチケットの最低価格が1600円なので、この数字を基に単純計算すると2870万円の入場料収入。
1試合で緊急事態宣言下での試合×4試合分くらいの人を出迎えできたのは大きかったですね。無観客はもとより上限5千人はキツい。
②ついては一目瞭然。
要因として考えられるのは"移転に伴うチケット値上げ" "スポンサーによるVIPルーム契約" "招待客の激減" 等々。
正直、単価2400円弱というのは実勢価格よりかなり上振れしているとは思いますが、仮に2千円と見積もった場合、2千円×5千人×21試合=2億1千万ですので、1試合あたりの平均入場者数が5千人程度で乗り切れればまずもって前年並みの水準は確保できそう。
もしも本当に2400円程度にまで客単価が向上したのならば、仮に平均入場者数1万人を記録した場合、2400円×1万人×21試合=5億4百万円。リーグ全体の中で見れば大した事はありませんが、過去の自分たちとの比較で言えばとてつもない進歩でしょう。安藤ブランドアンバサダーの語る「満員のサンガスタジアム」が常時実現できれば、夢のまた夢であった入場料収入10億円達成もギリギリ可能なラインです。
ちなみに、布部体制2年目でJ3降格危機を迎えた18年が底となっていますね。(もうこれ以上)落ちひん!
収入増加→チーム人件費の積み増し
収入が増えるという事は、即ち良いコーチングスタッフ・良い選手を雇う為の原資が大きくなっているという事です。
とはいえ、ウタカら高給取りと予想されるようなネームバリューのある選手を複数名獲得した割には、小屋松・一美・仙頭の3トップに代表されるように若手主体で躍進した19年シーズンと比較して+34百万円の増額に留まりました。
「競争力のあるチーム水準を定めていき、そのためのチーム人件費を確保する。新加入選手たちを見ていただいて、その水準が上がっていると感じていただければ」
とも語っていただけに、選手たちが自主的に減俸を申し出た…?もしくは山道強化部長の就任で年俸の査定方法が変わり、戦績の振るわなかった事で勝利給など変動部分が当初予定より減少した…?
まとめ
①一番手っ取り早く費用対効果の大きい広告料収入部門で大きな伸び。今季も更なる増収が期待ができる
②客単価は大幅に上昇。VIPルーム利用が困難な今期は…?
③単価維持できれば入場料収入の上振れも期待できるが、市中のコロナ感染流行に大きく左右されるだろう
④収支のバランスから考えて、今シーズンの人件費も9億円台後半程度で計画してそう。勝ち続けて勝利給等変動部分マシマシでいけば嬉しい悲鳴?
⑤クラウドファンディング未着手、まさかの仙頭復帰も頷ける数字。今夏のウィンドーも指揮官のリクエストあれば財政的には応えられそう