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昨今のJリーグの招待企画について(京都サンガのケース)

 

このブログの企画ではなく、クラブ公式の企画についてです。

京都では5月の清水戦にて4千人を招待する様です。

サッカー観戦・応援のイラスト

 



現況とクラブの狙い

今回のプロモーションではNHK京都の番組きっかけの企画であるとの説明がありますが、これはあくまで建前で、Jリーグ全体で行われている招待事業の一環としての意味合いの方が強いものと個人的には推測しています。

コロナ禍以前対比で観客動員数が減少した今の潮流として、招待事業という強力なフックを用いて"離れた層""新規層"を開拓する動きが顕著です。

私自身、招待キャンペーンは原則「嫌い」です。しかし、前提としてリーグ全体の流れを知った上で是非を判断すべきであると思います。

 

 

 

 

 

また、(招待に限った話ではありませんが)目標設定がどのように為されているかが重要です。

今回はJリーグIDを取得した上での応募形態になっており、『顧客データの収集』は間違いなく重要指標の一つでしょう。

 

「ぜひこの機会にご家族やご友人、職場の皆さまをお誘い合わせのうえ、サンガスタジアム by KYOCERAにお越しください」というシメの一文や、サンガキャンパス隊 志賀さんのツイートを見る限り『既存客からの誘い合わせによる新規層開拓・離れた層の回帰』も狙いの一つではありそうです。

 

逆に言えば、普段からスタジアムに足を運ぶけど年パスは持っていないという人から、「お得だから」と申込が相次ぐ様だと”負け”でしょう

 

 

 

リスクとメリットについて

招待事業のリスクは、先ほど述べた様な「既にある程度観戦している層がフリーライダーとして便乗する事で本来発生するはずだった商取引が消失してしまう」事が一つ挙げられます。

その延長線上で、戦略なしに招待を連発してしまうと既存客(特に年間パス保持者)にとってチケットを購買する意味が低下するリスクがあります。招待券が容易に手に入るのであれば、わざわざお金を払う意味って無くなりますね。

 

そもそも今回の様な先着応募方式では、クラブが想定する"スタジアムへ招き入れたい層"に対してキャンペーン情報そのものが届かないリスクも推測されますね。

 

 

一方で、本来何もしなければ見込めなかった招待客の来場によってグッズや飲食等の消費への期待値が上がります。いわゆる「空席はホットドッグを食べない」理論。

また、新規開拓においてデータ取得の為の先行投資としてJリーグIDの取得をマスト要件に実験を行うのは悪くはない試みです。

 

ただ、仮に新規開拓がメインテーマだとするならば、想定されるリスクを軽減する仕組みづくりが無さすぎるのではないかという疑問符は付きます。

誘い・誘われ行動を誘発するのであれば、既存のユーザーに動機付けするプロモーションの方が良かったと思います。(ex.サンガクルー会員に招待券を付与して招いてもらう。招き入れた人数に応じて会員にインセンティブを与える)

新規層を開拓したいのであれば、リスク排除の為に無作為に行うより何かしら導線に制限を掛けても良かったのではないかと思います。(ex.亀岡市民やスポンサー企業従業員など)

 

そのあたりは正直狙いが見えづらいので、他クラブのデータも踏まえてまずはPDCAの“P“を策定する為の“A“に踏み切ったのかも。

>無料招待の方を分析したら、初観戦というお客さんが想像以上に多かった。彼らに2度3度と来場してもらうためにさまざまな施策を考えていくのが今後のテーマになります

 

 

 

 

最後に

新しい試みをするのは悪いことではないので、上手くやってもらえたらそれはそれでいいのです。

ただ、個人的に一番気掛かりなのはリリース記事に於ける以下の文。

コロナ禍によってスタジアム観戦から足が遠のいてしまったお客様や日本屈指のスタジアムである「サンガスタジアム by KYOCERA」にまだお越しいただいていないお客様、そしてサンガのホームゲームを未体験のお客様にも”紫”で埋めつくされたスタジアムをともに創り上げ、チームが魅せるフットボールを感じていただくため、本企画を実施することとなりました。

 

京都は過去から現場の“チーム“に全投げする様な形で、“クラブ“としてのファンマーケティングを怠ってきました。

それには西京極という過酷な観戦環境が足を引っ張っていた部分も否めず、致し方ない部分もありました。

 

ただ今は違います。サンガスタジアム by KYOCERAという日本屈指の観戦環境が備わり、「雨に降られてもう二度と行きたくない」等のリピート率向上に於けるハード面のリスクは消えたも同然です。

 

一方で、スタジアム周辺のスペースが少ないこと等もあり、2020年の本拠地移転後はただ単に90分間の試合観戦のみを提供している印象で、試合内容・結果如何により左右される様になってしまいました。

ただし、有観客試合解禁後も5千人迄の入場制限期間が長く来場者の大半が既存サポーターであったと予測される事と、昨年は12年ぶりのJ1昇格を果たすなど試合内容・結果自体が概ね良好であまり顕在化する事なくやり過ごしてきたと思っています。

 

このことを勘違いしていなければ、チームの勢いそのままにクラブはもう少し大きくなれるポテンシャルを兼ね備えています。

もっとわかりやすく言うと、チケット=サッカーの試合を見られる券であり、試合内容を通じて感動や興奮を与える事がサッカークラブの商売なんだと勘違いしているのならば、やがてサンガスタジアム by KYOCERAは白い象と化します。

勘違いをしていれば、今の勢いはフロックのままで終わるでしょうし、曺監督の過去の過ちの経緯を考えるとチームに対して本来求められる責任以外にのし掛かるモノが重すぎる状態は……

 

ただの一個人の杞憂なら良いのです。

でも、チームが勝って満足するのはチームを応援している人だけなのです。その事を弁えなければなりません。

 

 

 

いずれにせよ京都以外にも言える話ですが「チケット購入の対価に何を提供しているのか?」「いかにして観戦の満足度を愛着へ結び付けるのか?」+「クラブの存在意義とは?」という問いに対して明確な解を持っていない時点で黄色信号です。

今年に入って顕著なJリーグクラブの招待プロモーションの裏側に、3つの解が無ければ、それは先行投資やテストではなく、自らの価値を毀損する只の自傷行為だと言えるでしょう。

 

 

個人的には、「単発ではなく2〜3試合来場してもらえる仕組み作り」+「一人ではなく複数人を誘致しグループからの離脱率を下げる仕組み作り」を考えてプロモーションを打たないと意味がないと思っています。(それを「社員のコミュニケーション向上」とか「友人作り」とか、コロナ禍で各ステークホルダーが抱える課題と絡ませてパッケージ化することでチケッティングとブランド価値向上が比較的容易に両立できるのでは…………(涙))

 

なので、既存のサポーターは是非とも今回のキャンペーンを周囲の人に伝えてあげましょう! (本来その仕組みもコーディネートするのがクラブの仕事だと思いますが)

 

サンガスタジアム by KYOCERAの素晴らしい雰囲気を体験してもらえる良い機会なのは間違いありません。

一人が両手に知り合いを携えて来場すれば、自ずとサンガスタジアム by KYOCERAの空席は全て埋まるのです。

 

 

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