どうも、勝ち組です。
今年も各Jリーグクラブの決算報告が出てきました。※3月決算クラブ除く
株式会社京都パープルサンガさんも同様です。
21年度Jクラブ経営情報公表!「コロナ前の規模に戻りつつある」赤字34→20クラブ、債務超過は10クラブ | ゲキサカ
クラブ個別経営情報 - 経営情報 | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
他クラブが順次リリースを出す中、相変わらず京都はそれすらしないので代わりに見ていきましょう(怒ってます)。
なお今回は以下の3つのテーマを対象に触れていきたいと思います
①前年度との比較(売上と人件費)
②財務状態
③物販(グッズ)について
普通はクラブがこういう事をやるものなんですけどもね。
【2021年度 経営状況について】https://t.co/1m5R1pOetO#ファジアーノ岡山
— ファジアーノ岡山スタッフ公式 (@fagiano_koho) 2022年4月25日
また、2020年度決算についてはこちらをお読みください。
1:売上増加→人件費増加→チーム力の強化→必然のJ1昇格
2020年度決算において大きなインパクトを与えた新スタジアム効果は、昨シーズンにおいても予想通り大きな恩恵をもたらしてくれました。
ここでは単年の売上と費用について触れます。
以下の表は直近2年間の対比。
この表から見て取れるのは、「各部門で収入が増加」→「チーム人件費も比例して増加」→「利益幅は減少も1億円の純利益確保」という大まかな流れです。
営業収益に関する分析
前項の表と長期推移をまとめた上表からわかる様に概ね各部門で増収となっています。傾向として、コロナ禍初年度の2020年度の業績が底のクラブが大半なので、増収はある種当たり前ではありますが。
なお各部門別収入についての解説は以下の通り。
引用元:Jリーグクラブ経営ガイド | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
京都は2020年度も新スタジアム効果で増収増益を果たしたレアケースでしたので、2021年度も連続して伸ばして行けたのは非常に良かったと言えるでしょう。
この項目では広告料収入と入場料収入についてピックアップします。物販はあえて最後に言及します。
スポンサー料(広告料)収入
スポンサー料(広告料)収入は前年度比微増に留まりましたが、柳沢敦・佐藤勇人らを補強した2008年(カトQJ1復帰初年度)に迫る金額でクラブ史上2位の金額となっています。
日に日に増えていくスタジアム内のスポンサー様の看板たちは壮観であり、「よく陸上競技場は看板を置くスペースが多いからとか現実逃避の声を聞くけど、全く意味ないまやかしだよな」と改めて感じた次第であります。
ただ良くも悪くも、京都は毎期売上の3分の2がスポンサー料収入。更に広く深くスポンサー料収入を得ながらも、リスク分散の為に対売上高比率を押し下げていく事が求められます。その為にはまず「J1・J2とカテゴリーに関係なくスポンサー様へ変わらず大きな価値を提供する」事が必須です。どうする?どうする?どうする?
サポーターにとっては・・・
この2年間で亀岡を中心に新規のスポンサー様がかなり増えています。日頃から支えてくれている企業のアップグレードも目立ちます。本当にありがとうございます。
日々の生活の中で、ほんの少しだけでもスポンサー様の商品・サービスを利用する回数を増やし、それを発信していく事が大事です。
入場料収入
入場料収入については、前年度より無観客試合が減少した事が寄与しているものと思われます。観客動員数がやや回復しました。
上限5千人の期間も大変長かったですが、リーグ戦終盤に掛けて上限1万人へ緩和された事によって、昇格のかかった秋田戦・最終節金沢戦では来場者数9900人と9608人を記録。高い着券率を誇りました。それにしても、あれだけ制限があって布部→ボスコ期の2018年度と同水準とは。逆にどれだけ酷かったのかがよく分かる。
一方で客単価は下落しています。これは2020年度よりも入場制限やコロナへの意識が緩和された事で、無料招待プロモーションの回数が増加。無料招待客の来場比率が高まった事で客単価が減少したのではないでしょうか。また、高価格帯であるVIP席の契約動向も関係があるかもしれません。
サポーターにとっては・・・
観戦する機会を増やす。シーズンパスを購入する。1人で見るのではなく、誰かを誘って一緒に観る。
今よりもっと楽しみの総量を大きくする事が、中長期的にはあなたにとってもクラブもwinwinになるものだと思います。
営業費用に関する分析
チーム人件費
Jリーグクラブの事業活動において、費用の大半を占めるのはチーム人件費です。
チーム人件費とは、注意書きの通り、選手の総年俸ではなくトップチームスタッフの人件費や、いわゆる移籍金も含まれます。その為、選手名鑑の推定年俸合計額とはかなり乖離が生じます。
見ての通り2010年以来の人件費10億円突破で、昇格へ向けて相応の札束を積んだことがわかります。なんと前年度比2億1百万円の増加です。本当にありがとうサンガスタジアムbyKYOCERA。
要因としては、ウタカやバイスら主力の残留に成功した処に”曺監督ら新コーチングスタッフの招聘”と”松田天馬らJ1からの引き抜き”で年俸と移籍金支出が膨らんだものと推測されます。
なお、この11億3千万円という金額は昨年のJ2リーグ内で磐田・長崎・大宮に次ぐ4位が濃厚。大宮はあの選手層のどこに金が消えているんだろうか。。。
いずれにせよ収入増加でチーム強化が図れた事がJ1復帰に繋がったと言えるでしょう。
昨シーズンのJ2の最終順位と人件費ランキングです。 #J2 #Jリーグ
— ことも (@tk0105) 2022年5月27日
コストパフォーマンスの高かったクラブベスト4は、甲府、秋田、琉球、水戸
選手のクオリティを発揮できなかったクラブワースト4は、松本、大宮、北九州、愛媛となりました。
※参考https://t.co/mIg9JoTSy5 pic.twitter.com/2rWCTtBDq1
純利益について
人件費が2億増えた影響もあって純利益は前年度比5千万円減。それでも1億6百万円も確保しています。問題のない数字ですし、むしろもっと費用を使って良かった。
基本的にJリーグクラブは純粋な営利企業とは事情が異なります。
従業員を雇用し事業を継続するには売上を上げる必要がありますが、利益を沢山儲けて株主や役員へ還元する事が第一義ではありません。
どれだけ利益が大きくてもチームの成績が奮わなければ「失敗」と見なされますし、戦力増強や地域貢献活動へ投資していかなければなりません。スポンサー企業からしても、クラブの収益増加の為にスポンサー料を支払っている訳ではないでしょう。極論、利益は必要最小限で良いのです。
ただし、クラブ運営の安定化には、利益を確保して現預金や自己資本を積み上げていく事が重要です。またクラブライセンス制度の観点からも重要です。
純利益数千万円程度で着地するのがベストでしょうね。
いずれにせよコロナ禍に於いて二期連続の増収・純利益1億円オーバーは優良児と言うほかありません。そして12年ぶりのJ1復帰という大きな果実まで。何度でも言わせてくれ、ありがとうサンガスタジアムbyKYOCERA!
2:財務状態
個人的にですが、Jリーグクラブの貸借対照表は分析してもあまり意味がないと思っています。
その理由は「良くわからないから」。選手の権利関係とかややこしいし、参考値程度に考えるべきだと思うのです。
それなのに今回あえて触れるのは、今年度からクラブライセンス制度のコロナ特例が無くなるから。
2022年度以降のクラブライセンス判定における財務基準について | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
京都は2008年〜2010年の加藤久全権監督時代に、採算を無視した大型補強を繰り返し、弾薬が尽きてJ2降格&債務超過という暗い過去があります。(その加藤久氏が今また現場の最高責任者として君臨している訳ですが…)
以下は直近5年間の貸借対照表です。
Jリーグ全体では、鳥栖が4億円、お隣のセレッソに至っては12億円の債務超過状態ですが、京都は大幅な黒字着地で繰越損失をちょっとずつ減らしています。
よって簡単に言えば、2021年度末時点で4億6千8百万円分貯金がある様な状態です。即座に債務超過になって強制降格処分となる可能性は極めて低いと言えます。
なお、松田天馬の獲得にあたり移籍金がかかった様ですが2020年度〜2021年度で固定資産額に変動がありません。
湘南MF松田 J2京都完全移籍が決定、クラブは移籍金を満額支払う― スポニチ Sponichi Annex サッカー
なぜ経済的理由で選手を売却したクラブが、新たな選手を”移籍金あり”で獲得できるのか|Yuta Saito Jクラブ強化部/元コンサル|note
この事からも、やはり私個人としてはJリーグクラブの貸借対照表を見る時は、売上・損益以上に参考値程度で見ておくべきだと思います。
3:物販(グッズ)について
最後に、再び売上・損益面について立ち返って、物販収入に触れておきたいと思います。
物販収入の内訳は、先ほど紹介した経営ガイドにて「グッズ販売収入」「委託手数料」「ロイヤリティ」と記載があります。
委託手数料については、長野パルセイロの森脇氏のツイートがわかりやすいです。要するに外注ですね。
現在当クラブの商品化事業は、一般社団法人長野市開発公社様に業務委託契約で、担っていただいています。
— 森脇豊一郎 (@Toyomoriwaki) 2022年5月27日
つまり、グッズ売上の全額がクラブの物販売上になるわけではなく、クラブプロパティの使用料金、わかりやすい言葉で言うと「手数料収入」となりますので、数字の見え方が小さくなります。 https://t.co/iBF9ld1yrt
最近、京都サポの「グッズがイマイチ」という声をSNS上で見かける回数が増えた気がします。たぶん最近見始めた方が気付き始めたんでしょう(笑)
悲しいかな昔からずっと言われている事ですし、京都に限った話でもないです。
Jリーグでは、近年村井チェアマン体制で物販(マーチャンダイズ)に関する規制が大幅に緩和されてリーグ共通ECサイトも立ち上がりました。
引用元:https://jlib.j-league.or.jp/-site_media/media/content/48/1/html5.html#page=75
世界的にもマーチャンダイズ部門のテコ入れが目立ち、国内でも前述の規制緩和も相まって、金沢・岡山など地方クラブを中心に独自のマーチャンダイズ開発が進んだり、神戸やガンバの様に大手ブランドとのコラボでタウンユース商品を拡充するクラブが増加傾向にあります。
ツエーゲン金沢アパレルブランド「WAYZ」立ち上げのお知らせ|ツエーゲン金沢 公式
『岡山魅力再発見プロジェクト』 第一弾 宮下酒造コラボ 『ファジビール』『ファジレモンサワー』を販売 | ファジアーノ岡山 FAGIANO OKAYAMA
ヴィッセル神戸 GELATO PIQUE×VISSEL KOBE 特設サイト
「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」が、Jリーグ・ガンバ大阪とのコラボアイテムを企画・制作|株式会社ユナイテッドアローズのプレスリリース
また、現Jリーグチェアマンの野々村氏も札幌時代に「グッズの売上が伸びて観客動員数が伸びれば将来有望な選手が獲得できる。そうすれば、クラブが更に強くなれるし、ACLも夢じゃない」と説いたそう。
世界的なデザイナーはなぜJ1札幌と契約したのか サッカークラブが抱える収益の課題(村上アシシ) - 個人 - Yahoo!ニュース
北海道コンサドーレ札幌は、単純にクラブの売上を増やすだけでなく、クラブの理念を体現する手段として何ができるか?その一つがマーチャンダイズであると認識。
マーチャンダイズを入口に「コンサドーレ」というブランドに対する愛着を持った新規顧客を獲得し、その人達を試合観戦・チームの方へ結び付けていく事ができるかもしれない。また、地域の社会課題解決に繋げられるかもしれない。仮説を検証していく力強さを感じますし、その志の高さには惚れ惚れします。
今回開始する「PROJECT 179」事業は、北海道の全179市町村の地域活性化を目的とした事業です。プロジェクトに賛同いただいた企業や団体が購入するミズノ品の収益の一部を地域活性化策として還元します。今後はプロジェクトへの参画対象を一般生活者にも拡大する予定です。 還元施策の第1弾として、2022年から4月に入学予定の北海道全域の小学校1年生全員(約38,000人)に「PROJECT 179」オリジナル文房具を毎年提供する予定です。今後は、運動教室の開催や道内の施設への寄付等を予定しています
前置きが長くなってしまいましたが、翻って京都はどうでしょうか?
以下の表は直近5年間の物販収入と経費を抜粋したものです。
2020年度を機に大きく物販収入と物販関連費が減少しています。
これは先ほどのパルセイロのケースと同様に業務委託している可能性が非常に高いです。そして委託先は状況証拠から察するにおそらく加茂商事でしょう。
KAMOが扱ってるからサンガスタジアムでクレジットカード切ると「加茂商事」と出るのね pic.twitter.com/DXVcg1DR7Y
— n (@nks137) 2021年5月20日
加茂商事。
— n (@nks137) 2022年2月16日
完売になったとて、どれほどクラブに実入りがあるのだろうか pic.twitter.com/VeCrwvZ8xT
どういった意図・経緯で外注に切り替えたのか不明ですが、物販収入と経費だけを見ると売上だけでなく利益も減少しています。(販管費の方で別途経費削減に成功しているかもしれませんが…)
「グッズを買うことでクラブの強化に繋がる!」なんて思いで購買している層にとっては、残念ながら只の片想いと言えます。
前述した様なクラブ自身の努力で新しいグッズを積極的に開発したり、それをもってして新規層を開拓する様なクリエイティブな活動も難しいでしょう。
これは採算面も勿論、金勘定抜きで現状維持どころか衰退を選んだ非常にチープで愚かな嘆かわしい選択であったと個人的には思います。甚だ遺憾です。めちゃくちゃ時代の流れに逆行しています。
また、広く開かれた経営が求められるJリーグクラブでありながら、クラブの理念やビジョンに反しておきながら、この事について説明責任を果たさないのが更なる憤懣ポイントです。気に食わない。美しくないし品がない。
サポーターにとっては・・・
それでも良いと思ったグッズがあれば実際に購買しましょう。欲しい機能や不満について届くように声をあげましょう。
最後に
2021年度決算も内容自体は非常にポジティブで、戦績と業績が比例して右肩上がりの好循環が生まれています。債務超過の恐れもなく、安心してリーグ戦を戦える土壌があります。夏のウインドーでの補強も必要ならば資本を投下するだけの余力を有しています。
ですがコロナ禍以前の決算情報から鑑みるに、J1で安定して戦うには40億円〜50億円程度の予算を確保していく必要がありますので、20億円強もの不足分を「今ある収入の柱をより太くする事」「新たな収入の柱を作る事」で補って、京都サンガという家の強度を高めていかなければなりません。
(PDF注意:https://aboutj.jleague.jp/corporate/wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/club-h31kaiji_1_20200731.pdf )
が、しかし。京都サンガが考える家の強度を高める策はさっぱりわかりません。どのように現状を把握し、どんな狙いを持っているのかわかりません。
他クラブがこうした経営状態の開示・説明を高い次元で行い、ファン・サポーター・スポンサーと共にリテラシーを高め、関わる人全てと共に手を携えて前進を図っている中で、依然として遅れをとっている状態を見ると「たまたま」上手くいっているだけでクラブの体質は何ら変わっていない再現性の低い状態です。
マーチャンダイズ然り、親方日の丸体質が変わらない限りは持続可能なチーム強化及び真に地域に愛されるクラブの実現は到底不可能と思われます。
新スタジアム開業、そして12年ぶりのJ1復帰。最大瞬間風速の追い風が吹いている今だからこそ、自分本位ではなく顧客・地域本位の活動の展開を実施しなければ、チーム成績及び試合内容への依存度を高めてしまう事でしょう。愛されるには、まず愛すること。
延いてはそれが監督への依存強化と、監督へのし掛かる責任の増大に繋がってしまう事は、回避して欲しいと願います。前所属クラブでの過ちと現場サイドへの過度な負担は決して無関係ではないでしょうから。
曺監督はチームが目指す到達点と目指すサッカースタイルを明確に広く説いています。だからこそ狙いとするプレーが起きた時、スタジアムで拍手が自然と生まれる様になりましたね。
これは選手だけではなく、支える側も含めた全員が共通認識を持って同じ方向を向いているからです。大木監督と中田一三監督の時も同様でしたね。強い一体感を感じます。
では、クラブが目指す方向はどこなんでしょうか? 目指すゴールに対して、現在地はどこなんでしょうか?
いま私たちは、明確な答えを共有できていますか…?(そもそも共有できた試しがあっただろうか)
私がサポーター向けに説明会を実施しないクラブ(京都に限らず)を嫌い、より明確な説明を実施するクラブを評価する理由はただ一つ。
目的・目標・実践項目を説明していないクラブは、「面倒だから説明しない」ではなく、「答えを持ち合わせておらず、そもそも説明ができない」クラブである可能性が高いから。
何の為に生まれて、何をして生きるのか。答えられないなんてそんなのは嫌だ
以上