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鹿児島市サッカースタジアム計画 ドルフィンポート案に対する岩崎会頭発言について

 

 

「必要ない」「芝生広場はどうなる」…鹿児島市のサッカースタジアム構想、本港区利活用検討委員から厳しい意見続出

>鹿児島商工会議所の岩崎芳太郎会頭は、商議所が独自に構想する本港区の活用案には「スタジアムは入っていない」と明言。「J2の試合のためのスタジアムは、将来的にあまり必要ない」とした。県有地に造りたいのなら、市は検討委で県や県民にとってのメリットを示すべきだと注文した。

 

MBCニュース | 鹿児島港本港区利活用検討委初会合 サッカースタジアム否定的な声も

鹿児島市 松山芳英副市長)「スポーツを通じたまちづくりを進めるうえで核となる、重要な施設。自ら稼ぐことのできる、将来に負担の少ない多機能複合型のスタジアムを目指している」

意見交換の冒頭では、ドルフィンポート跡地をサッカースタジアムの候補地の一つとする鹿児島市の松山芳英副市長が、スタジアム整備へ意欲を示しました。

これに対し、鹿児島商工会議所の岩崎芳太郎会頭や他の委員からは、鹿児島市のサッカースタジアム整備に否定的な考えが示されました。

(鹿児島商工会議所 岩崎芳太郎会頭)「J2の試合をするためのサッカー場は、将来的に必要ない。一方、県の総合体育館とプラスアルファの施設は(商工会議所の構想に)前提として入っている」

 

 

岩崎会頭の発言が注目されがちですが、そもそも県と市のスタンスの違い以前に状況を整理する必要があります。

 

現在焦点となっているのは、ドルフィンポート跡地に総合体育館整備を進める県と、サッカースタジアム整備を進めたい市の食い違い。

 

それ以前に、現在のスタジアムの建設候補地は鹿児島市内の3箇所に絞られています。

①ドルフィンポート跡地

②住吉町15番街区

③浜町バス車庫

スタジアム需要予測等調査・整備検討支援業務(令和4年度)|鹿児島市

 

 ①と②は同じ鹿児島市中心部からほど近い港湾部で、同じエリアと言って差し支えない距離関係。

一方で中心部からは少し距離もあり、公共交通機関によるアクセスも相対的に難のあるのが残りの③浜町バス車庫。

 

更にこの浜町バス車庫は候補地中唯一の民有地で、鹿児島交通(株)のバス車庫。

この鹿児島交通と言うのが……岩崎会頭が代表取締役社長を務める岩崎産業(株)グループの企業。

 

つまり、岩崎会頭からすれば、この浜町バス車庫がスタジアム建設地になればグループ企業に賃貸収入もしくは土地の売却益が得られるのです。

(画像引用元:鹿児島市のサッカースタジアム試算 ドルフィン跡地の整備費169億円 年間収支は3候補地で最も黒字 | TBS NEWS DIG

 
この岩崎代表は「もの言う経営者」タイプであり、就任以降の岩崎産業グループは自社の事業活動の妨げになる競合企業や行政の動きに対して訴訟に打って出るなど、極めて"積極的な動き"を繰り返してきたことでも知られています。

屋久島観光、町の自粛呼び掛けに反発 「営業権侵害」と事業者|【西日本新聞me】

鹿児島マラソンに反対?する鹿児島のバス会社の交通規制禁止を求める仮処分を申請。 - Togetter

 

 

地方の経済界ならではのワンマン経営者の様にも思えますが、背景を見れば納得。

例えば、地元地銀:鹿児島銀行のHD会社である九州フィナンシャルグループの大株主には、岩崎産業一般財団法人岩崎育英文化財団が名前を連ねます。政策投資の一環としての所謂「持ち合い株」の性質もあるかも知れませんが、文字通り鹿児島経済界への影響力を自認する1つの要素と言えるでしょう。
 
また、県内の民放放送局が4つある内、鹿児島テレビ放送(フジ系列)と南日本放送(TBS系列)の大株主でもあります。特に鹿児島テレビ放送については43.5%もの議決権を有しており、強気に打って出るだけのことはあります。

総務省 電波利用ホームページ|その他|地上系放送事業者

 
 商工会議所の会頭自体が4期目であり、ドンとしての地位を築き上げてきたことも要素の1つでしょう。

鹿児島商工会議所 岩崎会頭を再任、4期目 「コロナ後へ国の支援引き出す」「次期も務める気ない」 | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com

 

 

もちろん、サッカースタジアム(や総合体育館)の整備が相応しいかどうかは十二分に精査されるべきですが、森市政&三反園県政から引き続いて検討を深めてきた経緯があります。

2017年に本ブログでも取り上げたように、今になって突如ドルフィンポート跡地という1つの土地に焦点を置いた訳ではありません。

サッカースタジアム整備は森市長の公約で、協議会は県や市、競技団体、観光関係者ら13人で構成。2017年3月の初会合から今月まで8回の会合を重ねてきた。協議会は(1)まちとの回遊性や集客が期待できる(2)鹿児島らしさを感じられる(3)既存の都市機能に重大な影響を与えない-の3点を重視し候補地を絞り込んだ。

 

 

これは単に「経済界の偉い人が反対している」とか、「頭の硬い高齢男性が(切り取り様によっては)無礼な発言をしている」とか、そのような薄っぺらい問題ではありません。

 

断言するにはいささか証拠不十分ではありますが、鹿児島の経済界・マスコミに対して影響力を十二分に有している岩崎芳太郎会頭が、「鹿児島のまちづくり」よりも「自社の利益」に繋がる様な世論誘導を行なっている可能性がある。また、行えてしまうシチュエーションにあることを認識した上で情報に触れる必要があるでしょう。

 

 

スタジアムを核としたまちづくりの成功には、都市計画との融和と世論の後押し・丁寧な合意形成が必須です。

有識者による有意義な議論が交わされることを祈ります。

 

 

 

See you soon…!