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〜生徒指導のプロ 曺貴裁と、北の大地の好好爺〜 【2023 J1】第14節 北海道コンサドーレ札幌 vs 京都サンガF.C. @札幌ドーム

 

 

北海道コンサドーレ札幌 2-1 京都サンガF.C.

得点者

【札幌】7'金子、72'浅野

【京都】41'パトリック

 

リーグ戦4連敗。

この結果自体は全く問題ではない。物凄く素晴らしいパフォーマンスを見せていても何故か結果が伴わない時もある。

しかし今の京都は、なるべくしてなる4連敗を喫している。すなわち一番の問題点は、変わらず「成長」の無い内容である。

 

 

なお今回のブログは、読み進めるにあたって先に昨年の振り返りを見てから読んでください。

 

 

 

似たもの同士

駒井さんの移籍以降、札幌の試合や動静を少し追う様になった身としては、フロントと選手たちからの「監督に対する異様なまでの信頼感」や考え方にシンパシーを感じていた。これが最終的にこの日の気付きに繋がる…

 

 

京都は、昨年に引き続き4バック泣かせの札幌相手に、基本布陣の4-1-2-3から変えずに臨んだ。

基本的に曺貴裁京都は、相手に合わせる事を選択しない。相手の強みを消す事よりも、自分達のやりたいことを優先する。なぜなら自分達の良さがスポイルされることを嫌い、むしろバカ正直に貫き通す事で無理やりカオスに引きずり込む思想を持つからである。

 

しかし、昨年の札幌ドームではまんまと相手の狙いと京都の弱みが噛み合い、2度惨敗。ホームでのリーグ戦は、前半早々にGK菅野の退場で真夏の京都で10人での戦いを強いられた札幌が試合を支配し、京都は辛くも勝ちを拾った。

 

 

試合前に私はこう投稿をした。理由は先述した京都の弱みが要因である。ここでは以下の4つを挙げる。

①相手GKまでアプローチするなど極端なハイプレッシングを志向する事。②ハイプレッシングを志向するがプレッシングが苦手である事。③サイドバックの裏に広大なスペースが生まれがちである事。④ボールを能動的に運ぶ事が極端に苦手である事。

 

昨年の反省を活かせば、①〜③をカバーする為にスタートから3バック+WBで5枚並べる選択肢もあったはず。それなのに4バックがチョイスされたのは、ポリシーなのか、手駒の問題なのか。

CBのリザーブ選手としてはアピアタウィア久のみが名を連ねていた。今季のアピは、井上からポジションを奪えずに、ルヴァン杯でのパフォーマンスもイヨハ理ヘンリーの方が安定感を見せている。昨年の札幌戦で個人名を挙げて褒められていた為、アピアタウィアが選択されたのかもしれない。

アウェイゲームの影響か、記者会見でこの点について尋ねる記者は居なかった様だ。

 

 

 

いつも通りバカ正直に挑んだ京都。いきなりCKからチャンスを迎えるもパトリックのヘディングは惜しくも枠を捉えられない。

 

良い入り方ができたと思った途端、PK献上。負けが続いている時とはこういうものである。

リプレーを見る限り、麻田がボールをクリアしようとした際に札幌小柏が先にボールへ飛び込み、確かに小柏の足へキックが入ってしまっている。あの位置あの角度で左足アウトサイドでボールに先に触った処で何をプレーできたのだろうか?

麻田自身スライディングなど無謀なプレーをした訳でもなく、先にボールへタッチすることでイニシエートした形だとも思ってしまうのだが。

むしろ22分の佐藤が金子を倒した方がPKに見える。この日の審判団は基本的に危ないジャッジが目立った。福岡のイエローはイエローで良いのか。こちらは助かったが、、

 

GK菅野を含めて11人でボールを循環させる札幌と、その菅野へもプレスする京都。局所での噛み合わせ以前に、11vs10となる事で自ずと空く箇所が生まれ、ポコポコと構造で殴られながらも、運良く追加点は許さない。

攻撃はというと、オールコートマンツーを剥がす能力を有していないので、パトリックへのロングボールを軸に前進を試みては失敗を繰り返す。

 

だが、札幌のゲームらしいオープンな展開の中で、京都の理想とする「前へ素早くボールを付ける」「フリックor落とし」「ダイレクトプレー」「人を追い越す」原則がハマりパトリックに得点が生まれる。前半の内に追い付けたことで勝ち筋が復活だ。

基本的に、京都はパスミスを恐れずにシンプルに縦方向へ手数をかけない攻撃を志向している。その中で、「受け手の体勢に関係なく、ボールをより前方に位置する選手の足元へ付ける」と云う規則性・プレー原則が確認できる。

パスを受けた人間は、反転してドリブルまたはパスを選択するか、視野に捉えている味方へポストプレーやフリックをする。状況によって選択肢は異なるが、「ダイレクトプレー」が選択される事が多い(その分、ミスも多い)。結果として大きなワンツーやピンボールのようなパス交換が生まれる。この時、同時に「ボールホルダーを追い越す」と云う規則性・プレー原則も重なる事で、人数と走力により、物理的に迫力のあるカウンター攻撃を創造する。

 

 

 

この形で決まるのは久々だが、それは上下に行き来する試合展開になりがちな札幌相手だからこそ、賽の目が出たのだろう。

 

一方で、先述の金子のPK獲得未遂も、麻田がボールをトラップしてから前へ付けても大きく状況は変わらないのに、ダイレクトで縦に入れて相手へプレゼントパス。背後のスペースへ裏返された流れから。

また得点シーンも、成功が続いたからこそ良かったものの、ダイレクトプレーを選択したパトリックの落としと川﨑のパスが少しでもズレていればゴールには至らなかったであろう。

 

結局は戦前の予想通り、自分達のやりたいことを優先する事で首を締め、相手のやりたい事をやらせてしまう京都。このチームには後の先という概念はない。この期に及んでも勝負に勝つ事よりも、ポリシーを貫く方がよっぽど重要なのだろう。大したものだ。

 

GK菅野へのアプローチの変化など試合中に工夫は見せつつも、いつも通り運動量と気力で何とかするプレッシング故に危ないプレーも増えていく。

 

そして後半も終盤に差し掛かり、直前の1vs1では金子を上手く抑えてDFラインを助けてくれた左WG木村が、運動量の低下もあり突破を許し万事休す。中では井上がマーカーを外して決勝点を献上。

 

いつも通り。そして予想通りの内容と望まぬ結果。

またもや同じ過ちを繰り返して2-1で沈んだ京都。金曜の夜、すすきので下車する際に多くの札幌サポーターが足取り軽く目前を通過していったのは言うまでもない。

 

 

 

曺貴裁=生活指導の先生

ミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督と、曺貴裁監督は、共に「チルドレン」と呼ばれる選手たちが多い。それだけ彼らは慕われている。いわゆる強い求心力を持った監督だ。

 

その異様なまでのまとまり方を似ていると評していたのは冒頭で取り上げた通り。

しかし、ミシャが"陽"だとすれば、曺貴裁監督は"陰"なのだろう。

 

ミシャの練習も特別凝ったものではなく、特にセットプレーや守備についてはかなり軽視した一面もあるなど、ファジーな部分も多いと言われる事もある。

それでも彼は工夫を凝らし、異なる3つのクラブでスタイルを植え付けて、基本的にやっている事は同じなのにまだ賞味期限を迎えず今も監督を務めている。

根底にあるのは選手を肯定すること。楽しませること。だからこそ一長一短はあるが、選手たちも飽きを感じる事なく、多くの得点が生まれる創造的なチームを作り上げられるのだろう。

 

今回、丸井今井で安売りされていた過去のコンサドーレ月刊誌を一冊購入したので、駒井さんのインタビュー内でのミシャに対するコメントを少し引用する。裏付け資料の1つかもしれない。

 

「常にサッカーのことを考えているし、いつも選手のことを大事にしてくれて、歩み寄ってくれる素晴らしい指導者だと思います」

「本当に心からリスペクトしている指導者。それに尽きますね。ミシャは僕の、というか僕らのボスですから絶対的な信頼も置いていますし。とにかくそれに尽きますね。シンプルな表現をしましたが、ここまで表現できる指導者に出会えることはなかなかないでしょうから、本当に自分はラッキーだと思っています。」

「サッカースタイルは常に変化しています。土台にある攻撃的なプレースタイルやベクトルは一切変わりませんが、実際にグラウンド上で演じるサッカーは常にアップデートされている感じですね。」

「システムは同じでも浦和でやっていたサッカーとコンサドーレでのサッカーには違いがあります。コンサドーレの監督に就任した当初の戦術と、現在の戦術もまた違いがあります。やはり常に、ヨーロッパなどの世界トップレベルの試合を見て、トレンドを取り入れているのだと思います。」

「ミシャはヨーロッパのトレンドのさらに一歩先を見据えている。つまりコンサドーレも常に世界のトレンドの最先端を意識したチームだということですね。それはもう、選手としては非常にやりがいがありますよ。」

 

 

 

片や曺貴裁監督は、ハリルホジッチ元日本代表監督の様に、選手が目を背けていた部分を指摘することで「成長」を促す。

 

 

思わず面談で泣いてしまう選手が出るほどで、人の弱い部分を見極めて奥底を突き、やる気にさせる点で彼を上回る指導者は国内に居ないかもしれない。そこについては私も流石と思う箇所。

 

常軌を逸した肉体的なハードワークも、この求心力と強力なモチベートあってこそで、これまでに語ってきた様に曺貴裁京都とは気持ちのチームなのである。

 

でも、それ以上のものが無いのだ。

 

これは練習見学が解禁されて、今年の始動日にトレーニングを見学した際の感想である。

初日からゲーム形式のトレーニング中に笛で止めて、ピリッとする一声を発するシーンは流石。一方で、コーチング的な声掛けが多過ぎて、明確な正解は教えない。やはりあくまで「考えるのは選手」であることを改めて実感した瞬間であった。

 

髪の色とか、髪型とか、スカートの丈とか、曺貴裁監督とは生活態度や風紀を厳しく指摘する生徒指導の教官なのだ。

学問以前の基礎的な部分はめちゃくちゃ厳格だし徹底させるのがとても上手いトッププロ。しかし肝心の学問自体は教えられない。トレーニングの中で自習をさせるスタイル。正解を与えないし、正解を出しやすい仕組みを作ってあげない。「お前がその時の正解をその場で見つけろ」と。これも幾度となく書いてきたが。

 

対して、ミシャが痛烈なアンサーを返してきた。

おそらくサッカーをエンジョイしている彼にとっては、どうやってゴールを奪うか、どこでボールを奪うか、意図も見えずに只ひたすら苦しそうな顔で必死にボールを追い続ける京都の選手たちを見て、指導者として思う処があったのだろう。

この2年半私を含め一部のサポーターに指摘されてきた曺貴裁京都の勘違いを、欧州の指揮官らしく遠回しに、老獪に揶揄している。

 

 

 

サッカーに限らず指導に於いて教えすぎない事は重要。だが曺貴裁監督以下コーチングスタッフは、教えすぎないにも程がある。京都の選手たちはその場その場での最適解を導き出すことを求められているが、問題の解き方がわからないので、逆に言われたことしかできない選手になっている。これでは本末転倒だ。

 

できれば避けたかったが個人名を挙げると、例えば荒木。彼は生活指導の観点では基準をクリアしている。曺貴裁監督1年目に変わったから。

だから見る側からすれば「また同じ失敗してる」と思うプレーを繰り返しても、何回でも何回でも起用される。ピッチに立つ最低ラインをクリアしている選手だからだ。


曺貴裁チルドレン筆頭の松田。彼は生活指導の観点では優等生中の優等生。模範生だ。彼のボールホルダーへの果敢なアタック、プレスバック、カバーリングは素晴らしい。

でもサッカーとはそういうスポーツか? 彼はアタッカーなのにゴールに背を向けた状態でボールを受けてしまう。受けてから前を向く。相手DFにとっては好都合だ。そして前を向いても、ボールを持って何か違いを生み出せる選手ではない。パンチのあるシュートも持っているがそれをチラつかせる事もまずない。あの小柄な体格でプロにまで到達してる時点で化け物なのだが、もう長い期間を掛けてスポイルされてしまっている。

 

木村と福田。特に木村はこのままでは近い内に相手選手を大怪我させてしまうことだろう。既にこれまででも危ないシーンがあったが。

ガムシャラに行く事がこのチームでの仕事だと思って、遅れてても行く。ギリギリのシーンで足で滑る。あるいは滑らなくても、遅れて行った後に足や手が相手に絡む。無意識的にプレーがもうダーティーになりつつある。大学サッカー有数のCFだった彼を、自陣CKフラッグ辺りで守備に追わせる京都の戦い方が、健全な成長に繋がるとは到底思えない。

 


他の選手も基本全員一緒。プレーの戦術的・技術的課題が直らないのは、意識してトレーニングを積む機会が乏しく、かつ明確な意図を持って向かってくる対戦相手との試合に於いて、走って走ってヘロヘロの中で改善するなんて至極困難なのだから。

例外はウタカの様に元々サッカーをよくわかっている選手か、川﨑の様に気付きを得て自己学習する能力が極めて高い選手だ。

 

 

京都の選手はそれぞれ役割を与えられている。大枠のコンセプトもある。だから皆目的地は一応共有している。しかし目的地に向かうルートは共有されていないので、ノッキングが起こる。

 

京都の選手は、ゴールを奪う為に、試合に勝つ為に、走っているのではない。曺貴裁に言われているから走っているのだ。

 

 

それでプレーしていて楽しいという感情が生まれるか?

辛そうな顔でヘロヘロになりながら徒競走をしている彼らに、エンターテイメント性が感じられるか?

4連敗を喫してもなお、選手コメントを見ても前を向き、監督への信頼は失われていない。しかしその"陰"の連帯感は札幌とは好対照である。

 

 

 

一番成長しないといけないのは誰?

曺貴裁監督は試合後に以下のコメントを残している。

ですが、やはり不運と言ったら言い訳のようになってしまいますが、最初のPKと最後のクロスの失点が結果的には痛かったです。1-1に追いついたこと、得点を取れる場面が何回かあった中で、取れなかったことが勝敗につながったかなと。ただ、こういうアウェイの難しい試合で、走ることをやめないで堂々とプレーをしたと思いますし、何か無理やり課題を見つけ出して改善して次の試合に臨むというよりは、自分たちができていることにも目を向けながらやっていきたいと思います。まだ甘さがある、と言われてもそうなので、僕も含めてですが、チームがそれに気づき次のステージに進んでいかなければなりません。

 

試合後のコメントかつこの人はまともな監督なので、全部をバカ正直に喋る人ではない。だがこれは無い。

 

勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負け無し。不運ではなくて必然の負けであり、甘さがあるのは貴方だ。

成長成長と説くけれど、この2年半チームが戦術的に進歩していないのは貴方が一歩成長していないからだ。そして貴方が選手に突き付ける様に、監督に対して「お前の弱点は!」と突き付けて変化を起こせる存在がこのクラブに居ないからだ。

何度も何度も繰り返しになるが、この大いなる勘違いを直さない限り、京都の「成長」はあり得ない。

 

 

 

4月半ばのガンバ戦に勝った後、私はこう予告していた。

 

以降、リーグ戦1分5敗。悲しいかな大当たりである。

なぜ分かるか。それはこれほどまでに同じ事を繰り返し続け、先が読み易いチームは無いからである。

 

 

繰り返しになるが「秩序の中のカオス」「秩序のあるカオス」という戦略・考え方自体は否定しないし、秩序とカオスが必ずしも矛盾するものではないとも思う。しかし、構造上の致命的欠陥と矛盾をクリアしなければ、来季の順位表の一番下に京都の名前が刻まれても何らおかしくはない。それもダントツで。

このまま団子虫の様に振る舞っていれば、この予想が現実になってしまう可能性はますます高まるだろう。

 

 

敵将からの心憎い"アドバイス"を糧にできるのか。

私からも、監督と選手たちに一言アドバイスを送って〆とする。

 

 

 

 

See you soon…!

 

 

 

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