京都スタジアム(仮)は我が国の歴史上もっとも多くの行政機関と絡みのあるスタジアムと言っても過言ではないくらい数か月に一回定期であ~れこれ出てくる出てくる。
これまでにもtoto助成が決まった点等を当ブログにまとめてきましたが、また新たな動きがありました。それが「今年法改正された『地域未来投資促進法』に基づいた亀岡市の計画が支援対象として認められた」というもの。
地域未来投資促進法に基づく地方自治体の基本計画に同意しました~第1陣として全国から提出された70の基本計画に同意~https://t.co/c5SyAh5omp
— 経済産業省 (@meti_NIPPON) 2017年9月29日
●これまでのおさらい
まずおさらい。これまで(前回ブログ↑を書いた2017年6月時点)に京都スタジアムに関係する各省庁などからの補助金や支援と言えば
②スタジアム本体の建設費に対するスポーツくじ助成金(30億円)
③京都スタジアム(仮)運営権PFI事業導入可能性調査への内閣府からの支援
④文教施設における公共施設等運営権制度を活用したPFI事業に関する先導的開発事業に指定
があり、そもそもアユモドキ等の件で環境省と絡みがあるし、経済産業省・スポーツ庁とも絡みがあるし、総務省とも絡みがあるし…
そしてスマートスタジアム事業の公表後に初めて設計・着工するスタジアムであるし(J1本拠地ではないけど…)、我々は他都市にとって参考になるような、市立吹田とはまた違ったモデルケースとならねばならぬ存在なのです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/ppp_dai5/siryou3.pdf
(だから、ファーストペンギンである我々がコケれば非常に大きなマイナス効果が生まれるし、J1には上がれなくとも"まともなクラブ運営"だけはしなければならないのに……!!! 違うだろー!この〇〇ー!!!)
●地域未来投資促進法
さて、話は本題の地域未来投資促進法。
この地域未来投資促進法は『企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律』という元々製造業なんか向けの法律だったのを、門戸を広げて地域を活性化させる産業へ国が支援をしていくよ!規制緩和していくよ!という法律に改正したもの。ざっくり、アベノミクスの一貫ですね。
この法律の事を指していたのか、スポーツ庁などの事業をひっくるめての発言だったのかは当人にしかわかりませんが、安倍首相は今年の未来投資会議で「スタジアム・アリーナをスポーツ観戦だけでなく、市民スポーツ大会、コンサート、物産展などが開催され多様な世代が集う地域の交流拠点に生まれ変わらせてまいります。その際、民間の投資や知恵を呼び込み魅力を高める方針で取り組んでいきたいと思います。自治体や地元企業を巻き込んだ地域ぐるみの取組を後押しします。そのため法律、予算や税制を総動員し、こうした拠点を2025年までに20か所整備します」とスタジアム・アリーナ整備に関係する法整備について言及していました。
そして今年度の国会で法案が無事に通り「観光・スポーツ・文化・まちづくり関連」も支援対象になり、そして法改正以降第一陣の亀岡市の基本計画が国から支援を受けることになったのです。わーい。
http://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170929001/20170929001-3.pdf
で、この地域未来投資促進法の存在や可決自体はスタジアム問題やスポーツビジネスに明るい人なら認知していた事でしょうが、いち早く認知していた方も、「いったいどのようにスタジアム・アリーナ改革へ支援が行われるのか?」がいまいち掴み切れなかったのではないでしょうか?
(一応ミクスタのIoT化とゴールデンキングスの新アリーナに関連した話がスポーツ未来開拓会議に出てたりはしたのですが、法改正は今年の話だったので支援の形もあまり見えず)
地域未来投資促進法案可決されたんだ。
— n (@nks137) 2017年5月26日
コレでスタジアム・アリーナ整備時に税制面での優遇などが期待できる pic.twitter.com/CjUck36cF6
ですが今回、第1例目となる亀岡市の計画が選ばれた事でその一端が見えてきました。
●亀岡市の掲げるスタジアムを活用したまちづくり
亀岡市が国に提出し、支援の同意を得られた基本計画がこれです。
http://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/miraitoushi/kihonkeikaku/kyotofu-kameokashi.pdf
全部解説するのは骨が折れるので5点のみピックアップ。
①対象地
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に規定する生息地等保護区、及び京都府絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例に規定する生息地等保全地区は、本促進区域には存在しない」
国の定めたガイドラインに抵触しないほか、保津川公園やスタジアム予定地を含む駅北開発地区が直接的なアユモドキ生息地ではない事を改めて国が示した形になります。
②目指すべき将来像
「促進区域の中でも、特に図1に示した「亀岡駅北土地区画整理事業」エリア、「京都・亀岡保津川公園」エリア、桂川改修で生じた高水敷等の「保津川かわまちづくり計画」エリア等において、これらのエリアの地域特性が最大限発揮されるよう基盤づくりを進める。まず、土地区画整理事業地内の京都スタジアムにおいては、国際試合や日本プロサッカーリーグ等によるスポーツ興行の開催や年間を通じた多様なイベントの開催による交流人口の拡大に取り組み、さらに、複合機能化したスタジアムと土地区画整理事業地に誘致される商業施設との連携や双方向の多元的な利用を図っていく」
「また、新しいまちの機能を高度化するためICT化に取り組み、それにより得られたビッグデータを公開し、そのデータを活用した新たな観光ビジネス等の創出で好循環を目指す」
スタジアムを核に街づくりを行い、その中でICT化を進める事でスマートシティ・スマートスタジアム化を図っていくという所でしょう。(後ほど詳細が出てくるのでここでは短めに)
③支援の形態
「(駅北地区に誘致するホテルや商業施設の為)不動産取得税、固定資産税の減免措置の創設」
「地方創生推進交付金を活用した桂川沿岸の整備やアユモドキ生息環境の保全」「スタジアムや土地区画整理事業地等の機能高度化を図るために情報通信技術を活用し、スマートシティ・コンパクトシティを目指すまちづくりを進めるとともに、森の京都地域や京都市内観光のゲートウェイ機能を強化する取り組みも併せて推進し、促進区域全体で持続的な民間ビジネスが展開・創出される基盤づくりを実施する」
「京都スタジアム来場者や観光客の消費行動、嵯峨野観光鉄道トロッコ列車や保津川下りを訪れる観光客の行動パターン、土地区画整理事業地でのスマートなまちづくりにより得られる様々な情報(ビックデータ)について、インターネットなど、民間企業が利用しやすい環境のもと公開を進める」
「事業者からの事業環境整備の提案への対応」
という事で、サンガ的にはビッグデータを活用してスタジアム来場者の行動を認知・分析できるのが一番大きそう。指定管理を取れた時のビジネスにも活かせるでしょうから。
IoT化・ICT化とスタジアム運営の関係については、1つは海外のスマートスタジアム事例。国内のスマートスタジアム事例。書籍の「プロスポーツビジネス 私たちの成功事例」の元SAPジャパン馬場さんのお話なんかを見てもらうと活用のイメージがつくかと思います。IT技術関連は全くわからないので、馬場さんの逆CRM的お話は非常にインパクトがありました
それから亀岡だけでなく、トロッコ列車と保津川下りの関係性から嵐山一帯なんかともデータの活用などで組めると良いのですが
http://www.soumu.go.jp/main_content/000493128.pdf
④地域経済牽引支援機関が行う支援の事業の内容及び実施方法
行政(国)ではなく民間なりの機関とやっていく内容ですね。シスコは市立吹田のサイネージでPanasonicと一緒にやってる企業です。ただ、ここで頭が痛いのが、Jリーグがスマートスタジアム事業で手を組んでいるのがNTTグループ。サンガのスポンサーがKDDI。という事でこのあたりの調整をどうするのか?
個人的にはできるだけスポンサー企業をはじめとする京都企業に参加してもらいたいですし、J1ではないですがスマートスタジアム化をなんとかお願いしたいところ。
⑤PDCA体制
毎年5月に有識者会議(地域経済牽引事業促進協議会(仮称))を開催し、基本計画や承認された地域経済牽引事業計画に関するレビューを実施し、効果の検証を行い、その結果及び基本計画や京都府及び亀岡市が実施する事業の見直し等の対応について府や市のホームページ等で公表
戦略・ビジョンに対する実行度や達成度をしっかり精査していく体制づくり。
スタジアムは建ててからが本番です。(広義の)プロフィットセンターとなれるように、施設単体では赤字でも税収や経済効果で利益・公益を生む。あるいは建てたあとも施設の改善・拡充、サービスの通じて単体で収益を生む。ホームタウンの為に、後進の為に、なにより私達市民の為に、こうしたマネジメントは大事です。
●今後のモデルケースに
という事で、(繰り返しになりますが)京都スタジアム(仮)を核とした亀岡市の当計画が地域未来投資促進法を活用したスタジアム計画支援の第一例目になる訳ですが、一言で言えば「スタジアム計画成功およびスタジアムを核としたまちづくり成功の為の支援体制づくり」ですね。
今後のケースでもこのような活用例が主流になる可能性は高いと思います。
社会資本整備総合交付金などのようなスタジアム本体建設の為の財源の柱となるような補助金や資金調達方法も欲しいところですが、スタジアム整備は周辺の都市開発と連携しなければ成功できない難しい事業。
その点、今回の亀岡市の基本計画は昨年公表されたスタジアム・アリーナ改革指針の内容に則り、現在不足しているハード・ソフトを整備するような内容。スタジアム本体はもちろん、京都サンガの経営的にも効果をもたらしそうで、(府民そしてサポーターとして)非常に期待の持てる計画です。
また、スタジアム用地の買収などで財政的に支出額の大きくなった亀岡市にとっては、保全努力義務を果たさなければならない中において補助金を得たり、ソーシャルビジネス的なやり方でアユモドキを保全できるのも大きいのではないでしょうか。
亀岡市の掲げる「スタジアム計画と絡めた攻めの保全」に一致するものであり、アユモドキの持続的な保全も京都スタジアム(仮)計画の成否基準の1つと言えますので、こうしたエリアマネジメントも非常に重要です。
スタジアムと使用するスポーツクラブが持っているハブ機能を働かせて、顧客満足度を総合的に高める事がスタジアム計画成功へのカギ。
今回、ICT化やビッグデータの活用といった一歩進んだ話も出てきた事で、ますます新スタジアムが楽しみになってきました。
※なお、札幌市・大阪市・大分市の計画において、亀岡市ほどではないもののスポーツチームの活用・スタジアムの活用について明記されています。札幌、セレッソ、大分サポーターの皆さんも軽く目を通してみては