+1 プラスワン

京都新聞による「スタジアム寄付金の不足による府の負担増加」記事について

 

はい。

 

 

20億円目標の寄付集まらず サンガスタジアム整備費、17億円超の府債で穴埋め

http://archive.ph/B3C29

「サンガスタジアム京セラ(京都府亀岡市)の整備を巡り、京都府が建設財源として見込んだ20億円分の寄付金が集まらず、不足分全額を府民の借金である府債で補うことが5日までに分かった。」

「また、日本サッカー協会から施設の不備を指摘され、改善工事のため5億8400万円を支出する」

「スタジアムの総事業費は約181億円(亀岡市の用地取得費20億円を含む)に膨らむ。」

 

 

 要するに、「20億円集まらなかったから府民の負担が増えるよ~」「国際試合対応する為追加経費かかるよ~」という趣旨に『なっている』記事。

 

さらっと読んで気になるのが以下の2点。

府民の負担増を強調する書き方

②事業費の金額カウント

 

ここをちょっと掘っていく。

 

 

 

負担増と煽る"からくり"

まず①番。今回の京都新聞報道では、約18億円の追加負担が発生するかのような書き方ですが、そもそもスタジアムの整備費自体は追加で18億円必要になった訳ではありません。

 

過去の資料を今回の報道をきっかけにもう一度見返してみたのですが、そもそも、本スタジアム計画が進められていく中で府・亀岡市合計で206億円の予算枠が形成済み

予算枠組みの中で、負担軽減の為に寄付等を用いようとして20億円を寄付で賄えればと想定。実際には20億円に及ばず、絵にかいた餅に。枠組みそのものは変わらず、「負担が増えた」のではなく「負担軽減の目論見が外れた」というのが正しい認識。


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f:id:nya137:20200307204601p:plain※府の枠、156億円はアユモドキ保護による計画地移転以前の整備費用で2015年に予算案可決。実施設計2億円+本体工事費154億円亀岡市の枠50億円はスタジアム用地取得費用等「府に建ててもらう為に準備する部分」代

http://www.pref.kyoto.jp/k-hyoka/documents/290126stadium00.pdf

 

ただし、この記事で判明した国際試合開催に対応する為の追加工事について。こちらについては想定『外』の、設定されていた予算枠『外』の費用負担(国際試合対応への改善工事費用)に対して想定が甘かったのではなどと批評するのはわかるのですが、寄付金が予想より少なかったから府民の負担増加というのはたしかに事実。事実ではあるけども今改めて言うのは後出しじゃんけんというか何というか…

これまでの京都新聞の本スタジアム計画への批判的姿勢を加味して読むと、ミスリードを誘うグレーな書き方ではないかと反感を持ってしまうのは事実否めません。

そもそも、本スタジアム寄付については、ガンバ大阪セレッソ大阪の様な、「民間団体が募金を原資に建設し国等へ寄付する計画」ではなく、長野Uスタジアムミクニワールドスタジアム北九州と同様に寄付が集まらなくともスタジアムが建つ事は確定していた事例。また寄付制度開始時に報道等であった通り、アユモドキでヒステリックに騒ぎ過ぎたことによる本スタジアム工事に対するイメージ悪化と、圧倒的PRの少なさによる寄付の周知不足が足を引っ張ったことは明らか。寄付が集まらなかったという結果にフォーカスするよりも、以前の報道の後追い取材としてプロセスにフォーカスすべきなのでは…?

 

少なくとも、京都新聞社の寄付額が"0円以上~寄付レリーフ掲示可能な金額未満"なのは判明しているので、なぜ寄付しなかったのか己の胸に手を当てて考えてみれば理由の一端はわかる訳ですし。

f:id:nya137:20200209124214j:plain

 

この計画における府の進め方にはスタジアム賛成派である私も納得しかねる場面もいくつかありましたが、それをもってしてもオープニング後にイニシャルコストの部分で数字のからくりを用いてネガティブキャンペーンのような記事を出されるのは正直心外かな。繰り返しになりますが決まっていた予算枠自体は(追加工事を除いて)変わらずです。

いま追求すべき点はむしろランニングコストの部分。テナントしょぼいけど大丈夫か?どう見ても当初想定と異なってるけど入居予定あるの?と。報道機関として本当に追及すべき部分ではなく、わかりやすい行政批判の実施で京都(滋賀)のわかりやすい購読者層を掴みにいく浅はかさも含めて個人的に残念だなと思います。だから我が家も購読を打ち切ったのですけど…

 

 

 

事業費の謎

スタジアム事業費について、2020年1月11日の京都新聞報道「総事業費は176億円(うち20億円は亀岡市の用地取得費)」をはじめ、各社最終的な事業費は176億円と報道している。

総事業費は、亀岡市が出した用地費を含め約176億円」(2020/1/9時事ドットコム)

アメリカンフットボールやラグビーにも対応でき、総事業費は約176億円」(2020/2/9ニッカン)

サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどの専用球技場で、総事業費約176億円、2万1600人収容」(2020/2/12football zone web)

 

この書き方から言うと、京都府156億円+亀岡市20億円=176億円。

156億円の枠組みについては前述した通り、当初計画していた楕円形状のスタジアムで想定された本体整備費の枠そのままです。

 

ただ、2019年8月時点では「スタジアムの総事業費は167億円(うち20億円は亀岡市負担)」で、2020年1月の建築業界専門誌報道でも府が計上したスタジアム本体の整備費は約147億円とある。(用地費20億円を足せば出来上がり167億円)

差額9億円が気になるので予算案そのものを見返すと、平成31年度予算で計上しているスタジアム本体整備費が8,122,599千円。平成30年度が5,379,060千円。実施設計の約2億円と足して約137億円。

156億円の当初枠組みの中で府が亀岡市の土地買収を支援する事となったので、19億円が支援分?

 

寄付云々よりどうせならこっちを明確にしてほしいかな。分離発注だしわかりづらいのよ。

 

 

 

 

 

 

最後に。

スタジアム建設において、スタジアム建設を要望する団体(多くはプロスポーツクラブ)が税金に頼らない自主財源を確保する事は設計の自由度とスタジアム計画への合意形成の為にも重要であると思います。また、裕福ではない地方公共団体においては公金拠出が軽減されるのであれば越したことはないですし、今回の記事では明記されていませんがtoto助成金30億円と寄付3億円+京セラやauによる現物寄付で計33億円超イニシャルコストの負担が軽減されています。

しかしながら、京都スタジアム計画については過去に京セラを筆頭とする京都経済界から「65億円」の拠出を持ちかけられながら破談になった過去があるなど、費用負担含め行政主導で進めなければが解決できない案件となっていたこと。

なにより、府民として税金を納め、それが様々な施策、中には大型公共事業に用いられてきた中で、ことフットボールスタジアムにおいてはなぜか「自分たちで賄え」という論調を押し当てられることに違和感を抱かずにいられるほど大人しくはありません。

予算9000億円規模の自治体が足掛け27年かけて150億円程度のハコを整備するのにここまでゴチャゴチャ言う一方で、他の大型公共事業にどれだけ追及のメスが入れられているのでしょうか?毎年150億円かかる事業ならわかるんですけども。

 

あと寄付寄付言うてますけども、府民ふるさと納税制度使って寄付をする。地元企業が寄付して損金算入する。結局支払うべき税金の使い道を選択しているだけの話なので、負担減と言い切って良いのかどうか。

つまるところ、金がいくらかかったではなくて、支出に対する収入・メリット、数字を見て論じるべきなのはここなんですわ。そこをすっ飛ばして、目先のわかりやすい材料をピックアップして煽って、支出に対するメリットを損なうような行為をする。プロパガンダしろと言うわけではないですが、そのセンスがやはり相容れない。ましてや京都という看板背負ってるならね。