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サッカークラブとお金の関係【収入編①】

 

先日、Twitterでテキトーにアンケートを取ったところ、当ブログで扱うネタとして「サッカークラブとお金の関係」が最も支持を集めました。

リーグ戦もなく暇なので、しばらくの間ですが定期的に投稿していきたいと思います。

 

今回はサッカークラブの収入について。

 

 

Jリーグクラブにおける収入原資

さて、新型コロナウイルス感染症に発端する公式戦の中断・延期により、我々見る側も辛いところではありますが、なによりJリーグ各クラブの資金繰りに対する影響が大きいという報道が出てきています。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/sports/list/202003/CK2020031302000133.html

 

一番の売り物である試合が開催できない以上、チケットをはじめ売れるものがありませんから、資金繰りの悪化という話題が上がるのは必然と言えます。

 

そもそも、Jリーグクラブの収入構造とは  

 

①チケットを販売する事によって得られる『チケット収入』

②スポンサー企業からの『スポンサー(協賛金)収入』

③グッズ等マーチャンダイズによって得られる『物販収入』

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この3つがクラブの自助努力によって確保する事のできる収入の3本柱です。

 

この3本柱に加え、各スポーツイベントにおいて大きな収入源である放映権収入は、Jリーグの場合ではリーグが販売・管理そして分配される『分配金収入』として。また、サッカースクール運営によって得られる『アカデミー関連収入』も存在します。

よって上の図に修正を加えるとこんな感じ。アカデミー関連収入除け者になってるけど。

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いずれの収入も、現在の試合やスクールが休止・延期される中では販売ができなかったり、平日に試合開催が振り分けられる事による入場料収入の減少や、入場数の減少や経済の悪化によるスポンサー収入の減少など将来的な減退が推測されています。

チケット収入・・・試合を興行し、チケットを販売した対価として得られる

スポンサー収入・・・試合や試合以外の活動によって得られる企業価値に対して協賛していただき得られる収入

物販収入・・・試合開催日などに物販を販売して得られる収入

アカデミー関連収入・・・スクールを運営し、月謝として得られる収入

 

繰り返しになりますが、難しい状況に置かれている事は間違いありません。

 

 

 

 

多角化による収入源の確保

今回の場合、コロナウイルスによる影響で明るみになっていますが、そもそも年間365日ある中で収入の源泉であるホームゲームが30試合程度しか実施できない以上、構造的欠陥である収入源の増加はJリーグクラブにおける喫緊の課題の1つでした。

クラブ経営の安定化とチーム強化の為には、より多くの収入と安定した収益確保が必要ですから、本来はこのような危機が訪れる前から「今ある収入の柱を太くする」ことと「新たな収入の柱を立てる」ことを同時並行で加速的に進めなければなりません。

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私がサポートする京都サンガの場合はそのような行動は現状見かけられないのですが、他クラブにおいてはいくつか先行事例があります。

 

町田ゼルビア

J2サポならお馴染みゼルビアキッチン。Jリーグクラブは、 プロのアスリートを養成・管理している訳ですから、トレーニングや栄養管理の部分で模倣しづらい希少な価値を有していると言えます。そうした強みを活かした事業を展開することはナイスですね。ただ、昨今の自粛ムード・外食控えではこの事業も厳しいところですが…

 

 

湘南ベルマーレ水戸ホーリーホックコンサドーレ札幌

親会社を持たないクラブで流行ったとも言えるのが電力事業への参入。利用する事でチームにもメリットが出る商品というのは、チームへの愛着が強い人による購買が期待できます。またインフラ事業は地域密着というコンセプトとも親和性が高く、電力会社にとっても全国規模ではなく地元住民に展開するのならば地元プロスポーツクラブをプロモーションに使える旨味も。

これ一本で稼ぐというよりかは、アジア戦略同様に既存収益源(スポンサー収入)の強化という意味合いも強いですが、自社ブランドの強みを活かせる異業種への参入は王道です。

 

 

セレッソ大阪

セレッソ大阪の事業多角化Jリーグの中でもトップレベル。

2011年に一般社団法人を設立し、ユースチームやスクールなどのアカデミー運営等については一般社団法人で管理。主にアスリート育成ノウハウを武器に体づくりやフィットネス事業を展開。タイ/バンコクでもサッカースクールを運営しています。最近では長居公園の維持管理事業や、ホームスタジアムの改修にあわせて映像制作会社の設立に動くなど、東の鹿島・西のセレッソと言わんばかりに今後も事業展開を続けていく事が予想されます。

その規模はかなり大きく、2018年度の時点で収入22億円規模に達しています。

 

この他にも、ガイナーレ鳥取芝生生産販売事業鹿島アントラーズスポーツクリニックなどスタジアムを活用した事業展開もありますが、事例紹介はこの程度で。

 

 

 

今後のトレンド予想

今回紹介した事例では、いずれも「自社の持つ中核資源(コアコンピタンス)を活かせる公共性の高い事業」を展開しています。

現在はアルビレックス新潟の社長を務める是永さんは、アルビレックス新潟シンガポールを運営されていた際に『カジノ運営』で多角化を実現されましたが、日本においては倫理的にも難しいもの。

やはりプロスポーツクラブとして有しているはずのアスリート養成機能や、地域に熱狂的なファンベースを確保している点を活かした事業展開が多くなるのは必然の流れでしょうか。

 

ただ、それだけでは限界があるのも事実。

五輪後の各スポーツをする需要や更なる健康志向の高まりに合わせたフィットネス事業の強化はもちろんですが、今後の流れとしては、ツエーゲンヴェルディのユニフォームが話題を呼んだように、欧州ビッククラブ同様ブランド確立によるマーチャンダイズの大規模展開。スタジアム運営権を活かしたエンタメ空間の演出・提供…

エンタメ産業としての機能強化を図りつつ、社会情勢やチームの成績に左右されない収入源を確保していかなければならないでしょう。

 

 

今回のコロナウイルスに伴うリーグ戦の中断によって飢餓を覚えるサッカーファンは一定数居ます。

スタジアムグルメへの出店取り止めや警備会社等、機会損失となっている事業者も居るかと思います。

ただ、その輪ははたしてどれだけ大きいのか…?

 

メインとしては余暇の中での娯楽産業ではある訳ですが、地域住民のライフスタイルにいかに溶け込むか。

今回は収入源の確保という観点から書きましたが、不要不急の用であるサッカーの試合興行をメインに営むだけでは存在価値は乏しく、存在価値が乏しいからこそ収入が得られない…

先日読んだフットボール批評で前監督が就任前に「こんなクラブなくなってしまっても問題ないではないか!」と言ったとか言ってないとか書いてありましたが、新型コロナウイルスに発端する一連の騒動は、リーグ運営等非常時のオペレーション云々よりもサッカークラブの存在意義そのものを見つめなおす機会なのかもしれません。

 

個人的には、これまでもTwitter等で書いてきましたが地域の潜在的課題をプロスポーツクラブの力を使って解決できるクラブこそが今後の勝者になると思います。あ、これってまさに「シャレン」ですね。