+1 プラスワン

世界一わかりやすい京都サンガ2022年度決算解説 -絶大なる新スタジアム効果とJ1定着&愛されるクラブの実現へ-

 

5月末からちょこちょこと書き進めてはいたのですが、最終的に2万字を超えてしまいました。

 

こんちゃ!

今回の記事は、他のJリーグクラブと異なり、残念ながら決算状況やクラブの方針に関して情報を全く流さないクラブに代わって…京都サンガF.C.(株式会社京都パープルサンガ)の2022年度決算報告について理解が進むよう解説をまとめたものです。

長めですが、これでもかなり端折っています。「そんな長文読めへんわ」って人は、太字部分と最後のまとめ項目だけでも読んでおけばOKです。大体は理解できます。

※他クラブ参考

2022年度 経営状況について | ファジアーノ岡山 FAGIANO OKAYAMA

決算報告及び役員人事 4/27(木)YouTube 配信のお知らせ | アビスパ福岡公式サイト | AVISPA FUKUOKA Official Website

 

この記事の狙いとしては、「クラブ経営の重要性と京都サンガの現状を本ブログを通じて知る事で、読者のサッカーの楽しみ方および幅が広がること」です。

 

その為、読んでもらいたいメインの対象は京都サンガのサポーターで、中でも「比較的観戦歴の浅い人」また「サンガの為に自身に何ができるか興味はあるが何をすれば良いかよくわかっていない人」ですが、サンガサポーターでなくとも本記事を契機に枠組みを知って、自分のクラブの開示されている情報を読み解けば応用は可能です。なので京都サンガ以外のJリーグクラブやプロスポーツクラブを応援する方にとっても、読んでいただけるものにしたつもりです。

特に、最新鋭フットボールスタジアムへ移転し、業績と成績が右肩上がりな京都のケースは、今まさに新スタジアム計画を進めようとする他クラブ・他都市に於いて非常に参考になると思います。

多くの意見・考えを吸収できれば幸いなので、読後はぜひ「#京都サンガ経営」を付けてで感想を投稿いただけますと嬉しいです。RTも歓迎ですが何故かブロックされすぎてRTでは読んで欲しい層には届かないことでしょう。笑

 

質問やご意見もお待ちしています。

 

なお昨年度以前の分も読んでから比較すると、より理解度は深まります。

お時間ある方はぜひ昨年度分に目を通してからご一読ください。

 

目次

 

決算状況・クラブ経営を理解するメリットとは

まずもって、悲しいかな「別にチームが勝てばそれで良いんだよ。経営なんて何が関係あるんだ!」という方は多いと思われます。もっと言えば、サッカー界の内部からもその考え方を完全には払拭できていないと思っています。口で言っている事とやっている事に矛盾があるので。

筆者はこのリテラシーの低さこそが日本サッカーや京都サンガの「成長」を阻害している要因の1つであると考えています。

 

そこで、まずは何故クラブ経営を理解できた方が良いのか?

メリットを3つの観点から考えてみましょう。

 

その1.チームがJ1で好成績でもクラブ経営が悪化すればへJ2へ強制降格

Jリーグでは、競技水準の持続的な発展・向上を目的に、スタジアムや練習場などの施設や経営状況などを審査する「クラブライセンス制度」を2013シーズンより導入しています。

J1からJ3までカテゴリー毎に基準が設けられており、例えばJ1リーグのライセンス基準を満たしていないと判断された場合、J2リーグ優勝を果たしても昇格が認められない事態が発生します。また、強制降格処分が下されることもあります。

つまり、チーム"だけ"が強くても、クラブとして強い体質を構築できていなければ、無条件で降格することもあるのです。

 

経営状況により、ライセンスを剥奪されるケースは2つあります。

債務超過に陥ること

決算日時点で資産より負債の方が多い状態(純資産額がマイナス)になる事通常の賃借対照表と債務超過の賃借対照表 通常の賃借対照表:負債と純資産の合計が資産と一致する 債務超過の賃借対照表:負債と資産が一致し、負債の下にさらに債務超過分はみ出る

引用元:債務超過とは? ~意味や貸借対照表の見方、解消法をわかりやすく解説~|資金調達ナビ|弥生株式会社【公式】

 

・3期以上連続の赤字。但し、J1ライセンスに限り、赤字額が純資産を上回らない場合はセーフ

→以前は3期連続赤字=アウトでしたが、積極的な投資を促す為にJ1では実質廃止。債務超過にさえ陥らなければセーフ。

 

現在はコロナ禍の特例ルールによる猶予期間の最中ですが、上記の事例に該当すると、本来J1〜J2クラブは翌年に直下のカテゴリー(J2orJ3)に強制降格。元々J3の場合は翌年勝ち点マイナス10の状態からリーグ戦スタートとなります。

この様なライセンス制度は、放漫経営・怠慢経営による倒産・クラブ消滅を防ぐ為のものでもあります。

 

その2.経営が上手くいけばチーム成績も向上する

チーム成績と人件費には相関関係が見受けられます。年俸の多寡が選手としての能力を表す訳ではありませんが、良い選手を雇うには相応のサラリーが必要です。また、クラブハウスやスタジアムといった施設設備や、分析班・メディカルスタッフ・マネージャーら人材への投資による環境整備もパフォーマンス向上の為に重要と言えるでしょう。J3ともなると選手自らが用具を整備するクラブもありますから。

一概に「大企業>中小企業」とは言えませんが、我々自身が就職先や転職先を考えた時に、やはり待遇や福利厚生等は選択する上での重要なポイントですよね。戦力の維持向上・現有戦力によるピッチ上でのパフォーマンスと結果を持続的に向上させていくには、それを下支えする為の経営基盤が不可欠なのです。クラブの成長なくしてチームの成長はありません。

逆に言えば、チームを強くする為にはクラブ経営について良く理解し、注視し、時に声を上げる事が重要だと考えます。

 

その3."サカつく"的楽しさ

チームや選手の競技面の成長だけでなく、既に完成された欧州の一部メガクラブや代表チームでは味わいづらい、クラブの成長を見守る楽しさもサッカーの楽しみの1つだと思います

"シムシティ"、"サカつく"や"Football Maneger"といったシミュレーションゲームがある様に、育んていく喜びや楽しさは一種のエンターテイメントに昇華できるものです。

「サポーターが経営を考える必要があるのか?」「集客を考える必要があるのか?」といった意見を目にすることもありますが…考える義務ではなくて、考える事ができる・考える楽しみ方がある。と、捉えられるのでは無いでしょうか。昨日までできなかった事が知恵を絞ってできる様になる。筆者的には、その成長過程って物凄く楽しいものだと思います。

 

また、知識が深まる事で視野が広まります。

サッカーはルールや戦術をよく理解していなくても楽しむ事ができるスポーツだと思います。しかし、知れば知るほどプレー1つ1つの凄さや意味をより理解でき、新たな発見に繋がります。

スタンドの上から俯瞰で見て「あっちにパスすれば良い」と思い付くのは簡単でも、平面で相手のプレッシャーを受けながら正確にプレーするのは容易ではありません。でもプロとしてやってはいけない戦術的・技術的ミスもあります。

これらはクラブ経営も同様です。「なぜできないのか?」を自分なりに仮説立てて考えると、色々な事がわかってきます。目先の小さな事に苛立つ事なく、大局的に捉えられるようになり、サポーターとしてワンランク成長(した様な勘違い)が得られます。

 

 

京都サンガの2022年度決算概要

前置きはこの程度で。本題である昨年度の決算について見ていきます。

以下は、前回のJ1昇格初年度である2008年以降の決算推移をまとめた表+昨年度Jクラブ決算速報値です。京都は公表されている2005年以降で、初めて営業収益(売上高)30億円の壁を突破し、過去最高となる32億8800万円を計上しました。(前年度対比:10億7900万円増)

自分達を軸に考えると、非常に大きな「成長」を遂げたことがわかります。一方でJ1他クラブとの比較で考えると、まだまだ経済規模は小さく、J1で安定して戦うには非力と言えるでしょう。

 

さすがに上記の表は長期間すぎて見辛いと思いますので、改めて過去5年間+昨年度を抜粋しました。

皆さんはコレを見てどんな所が気になるでしょうか?どんな気付きを得たでしょうか?

 

筆者が特に気になった箇所は以下の5箇所です。収入・支出・資産と負債の順に、主にこの5点について触れながら分析したいと思います。

1.各収入の大幅な増加

2.チーム人件費の増加

3.アカデミー運営費の急増

4.固定資産の増加

5.流動資産の増加

 

 

収入編

 

スポンサー収入

スポンサー収入は前年度対比3億6400百万円の大幅増加。18億9800百万円と過去最高の数字となりました。増加額についても2020年の新スタジアム開業時(+1億6500万円)を超えて過去最高です。また、売上全体が伸びている事で、スポンサー収入への依存率は低下。引き続き57.73%と収入の大部分を占めるセクションに変わりはないですが過去最低の数値となっています。

ですが、京セラ・任天堂ら日本を代表する企業が何社もスポンサーに顔を並べる一方で、未だスポンサー収入が20億円台を捉えられていないのが現実。この点について改善をしていく必要があります。

 

現実と希望的観測の中で折り合いを付けて1.20倍として見ると1,800百万円程度。

ただまあ、私の想像をやや超えてきましたね。それでもほぼニアピンですが。ふふ

 

今回の増収の背景として考えられるのは以下の2点です

1.J1昇格に伴う既存スポンサーのランクアップおよび増額

2.亀岡エリアを中心とする新規スポンサーの大幅増加

 

ランクアップ・新規契約の増加は、以下の21年度途中一覧(左)と22年度一覧(右)の比較がわかりやすいでしょう。

プラチナスポンサー・・・3社増加(6→9)

ゴールドスポンサー・・・4社増加(19→23)

シルバースポンサー・・・27社増加(64社→91社)

 

更に分析をすると、直接的な要因としては以下の3つが挙げられます。

要因1.新スタジアム効果・J1昇格効果に伴う協賛価値の増大

要因2.社会貢献機運の高まり

要因3.紹介による広まり

 

要因1.新スタジアム効果・J1昇格効果に伴う協賛価値の増大

比較的露出量の少ないJリーグの中とはいえ、J2とJ1の差は大きいです。

後述する観客動員数の増加やマスコミ媒体での露出増加。特に海外へ向けては、J1リーグASEAN地域を中心に60の国と地域で放映されています。ユニフォームへの掲示が「京セラ」から「KYOCERA」へと変化した様に、サッカークラブを所有する・スポンサードする対外的なメリットが増したと言えます。

また新スタジアム移転に伴い、広告掲出スペースの面積や視認性が大きく改善されました。フットボールスタジアムでは、陸上トラックが無い分、看板やビジョンについても距離が縮まり視認性が高まります。当然ながら中継映像・ハイライト映像や、選手・クラブ・来場者によるSNSへの写真投稿でも視認性は大きく改善されます。

 

リーグ全体での改善が必要ですが、英プレミアリーグの様な全てのクラブがフットボールスタジアムを利用するリーグでは、中継映像でも会場の熱が伝わりやすく「作品」としての質が向上します。ひいては長期的にも視聴者数増加(と放映権料増加)に繋がる可能性があります。

 

商談や親交の場として利用できるVIPルームなどのホスピタリティ環境の改善や、常設看板についてはサンガの試合以外でも常に掲出(代表戦等除く)される点。何より抜群の観戦環境が生み出す熱気が心を動かす事も大きいでしょう

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サッカー好きの社員と昨年地元での試合を観戦し、感動した経験がスポンサーになる決め手だった

1―1の後半37分、サンガのFWパトリック選手が劇的な勝ち越しゴールを奪い、そのまま勝利を収めた。國枝社長は「魅力的な試合は人を元気にさせる」と思いを新たにし、協賛額がシルバーの「倍以上」というゴールドスポンサーになることを決めた

 

要因2.社会貢献・地域貢献機運の高まり

SDGs」に代表される様に、企業側に対しての社会貢献圧力・機運が再び高まりつつあります。この風潮が良いかどうかはさておいて、CSR活動の一環として地域のプロスポーツクラブを支援する事はパターンの1つです。J1昇格に伴ってスタジアム周辺の賑わいもより一層増しており、大企業や近隣(亀岡)エリアを中心に、1と関連して訴求力と協賛メリットが高まっています。前述のよーじや様の事例も広義的にはその1つと言えますね。

 

要因3.紹介による広まり

過去には故 稲盛名誉会長が会頭を務め、現在もサンガ社外取締役でもあるワコールHD名誉会長の塚本氏が会頭を務める京都商工会議所との関係は引き続き良好です。

【会員限定】京都商工会議所140周年記念事業 京都サンガF.C.ホームゲーム観戦デー|イベント・セミナー情報|京都商工会議所|VIVID KYOTO

 

また、京セラ・京都銀行堀場製作所ら既存トップスポンサー絡みでの紹介を含め、こうした組合や直接の"横の繋がり"の威力は大きいものと思われます。(例:九電工は京セラと太陽光発電絡みで縁が深い。ソフトバンクは後援会会長でもお馴染み堀場製作所CEOの堀場厚氏が社外取締役を務めるほか、亀岡市とも提携協定を締結)

>トップスポンサーでもある京都銀は昨年9月、京都パープルサンガと業務提携を結び、取引先への呼び掛けを通じてスポンサーの増加に一役買う。

>本拠地のサンガスタジアム京セラがある亀岡市の包装資材メーカー「ナカノ」も、京都銀経由でスポンサーになった1社だ。玉川弘社長は「サッカー好きの社員と昨年地元での試合を観戦し、感動した経験がスポンサーになる決め手だった」

サンガJ1復帰、スポンサーに地元企業が続々名乗り「支援心強い」|経済|地域のニュース|京都新聞

 

このような要因から過去最高の広告料収入を叩き出せたものと推測されます。

しかし、創業50周年・社名変更という一大イベントを迎えたニデック(旧:日本電産)が今季スポンサーに"復帰"したものの、株主および過去の主要スポンサーで、離脱また離脱以降縁が全く無い大手企業も多いです(イシダ、MOVIX京都、ユーシン精機、佛教大に京産大…)。一度も縁のない上場企業・優良地場企業はまだまだ存在します。

また、京都は北海道コンサドーレ札幌水戸ホーリーホックセレッソ大阪川崎フロンターレらと異なり、これまで「アジア戦略」に一切着手していません。しかしメインスポンサーである京セラをはじめとする大手企業は、世界中をマーケットとしており、世界中に工場や営業拠点を構えています。

「他にも、セレッソ大阪のメインスポンサーであるヤンマーがタイでシェアを広げる際にサッカーを活用しています。セレッソ大阪が「バンコク・グラス」というチームと提携して「U14(14歳以下のチーム)」の組織構築を手伝いながら、ヤンマーがタイの地元の農協と共催してサッカー教室を開催しています。」「地方で光が当たりづらかった子どもにチャンスを与えていると、農協とヤンマーの双方が支持されるようになりました。タイの耕運機シェアはクボタがトップですが、その農協ではヤンマーを手厚く扱うようになってくれたり、サッカーというコンテンツを活用することで売上を上げていく仕組みができたんです

 

北海道コンサドーレ札幌:クラブが持つ現地ネットワークを活かし、日系企業のタイ進出を支援 - JSPIN

【公式】【特集】Jリーグアジア戦略10年~川崎フロンターレ編(後):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)

 

サッカーの持つパワーを、京都サンガF.C.だからこそ創出できる価値を用いて、スポンサー企業とWin-Winの関係を構築し協賛価値をより「成長」させる必要があります。と同時に、単純な営業力を強化し、更なる支持・支援を開拓しなければなりません。

会社概要 | 企業情報 | 会社案内 | 京セラ

https://www.kyocera.co.jp/ir/library/pdf/presentation/FY23_4Q_p.pdf

 

【我々にとってできること】

まずはスポンサー企業を知ることです。そして日々の生活の中で、ほんの少しだけでもスポンサー様の商品・サービスを利用する回数を増やし、それを発信していく事が大事です。

はてな様もスポンサーです。

㊗京都サンガF.C. J1昇格 - はてな2代目社長のブログ

 

なお、今年度については7月12日時点でプラチナ2社増・ゴールド9社増・シルバー6社増。19億7千万円〜8千万円台の着地だと個人的には見積もりますが、既存のトップスポンサーまたはプラチナスポンサーが追加支援していれば初の20億円台到達の可能性もあります。

 

入場料収入

入場料収入も大幅に増加。前年度比3億4900万円増加の5億7200万円と過去最高を記録。史上初の5億円台を突破しました。観客動員数についても、「落ちひん」でお馴染み布部〜ボスコ政権だった2018年の1.85倍。コロナ禍前・西京極ラストイヤーの2019年の1.33倍を記録。

 

要因としては以下の3つが考えられます。

要因1.入場制限の解除等コロナ禍の収束具合に応じた客足の回復
要因2.J1昇格に伴う観客動員数増
要因3.新スタジアム効果

 

2020〜2021年はコロナ感染対策による無観客試合や有制限試合が足枷でしたが、昨年度は開幕からフルキャパシティで運営(声出しエリア設置時除く)。J1昇格に伴って注目度も高まり、アウェイサポーターも含めてJ2時代よりも多くの来場者がサンガスタジアムbyKYOCERAに詰めかけました更に昇格によるチケット価格見直しも相まって客単価(収入÷総入場者数)が上昇し、史上初の2500円台を記録

更に更にルヴァン杯ノックアウトステージ進出とJ1・J2入替決定戦による試合数の増加も影響した格好です。

 

アビスパ福岡の決算報告動画内で示されたデータによると「定着」の基準までは明かされませんでしたが(おそらくはリピートの有無)、初回来場者の定着率が47%。2回目で71%。4回目になると85%と、他クラブと比較して高い数値を誇っています。これは西京極と異なり、雨に濡れる事が無く、駅からも近くて、ピッチ上の熱戦や応援の雰囲気等臨場感や熱気の伝わり具合が段違いのサンガスタジアムbyKYOCERA効果が十二分にあるでしょう。

 

一方で、若年層を中心に新規客の増加傾向は肌身で感じられるものの、まだまだボリュームは不足しています。天皇杯ルヴァン杯鳥栖横浜FC戦から察するに、ほぼ毎試合足を運ぶような上位のコア層は変わらず2千人〜4千人程度でしょう。

新スタジアム移転以降、目立った集客イベントは全く無く、優れた観戦環境を利用した企画チケットの販売等ユニークなチケットセールスもありません。J1・J2、リーグ戦・カップ戦に関わらず、常時安定してスタンドが埋まる様に、勝敗に関係なく来場者が満足できる観戦パッケージ・仕組みづくりが必要です。

【我々にとってできること】

観戦する機会を増やす。シーズンパスを購入する。1人で観るだけでなく、友人・同僚・恋人・家族等、誰かを誘って一緒に観る。なんなら自発的に誘わなくとも「あの人がそこまで魅力に感じるってことは相当良いのだろう」と思ってもらえるくらい人としての魅力を備えること。

今よりもっと楽しみの輪と総量を大きくする事が、あなたにとってもクラブにとっても中長期的に得をするのだと思います。

 

配分金収入

配分金収入はほぼ倍増の3億2600万円を記録。こちらも過去最高となりました。J1昇格に伴いDAZNからの放映権料を主な原資とする当該収入が増加した形。

しかし、2023年度からはカテゴリーだけでなく、人気やDAZNの視聴者数に応じて傾斜分配される事になっており、減収が予想されます。

【我々にとってできること】

ハイライトを見るにしてもyoutubeではなく極力DAZNで見ること。

周りに仲間を増やすこと。母数を増やすこと。

DAZN加入・視聴のお願い

 

アカデミー収入

大きな変化なく割愛。しかし、今最も重要視すべき項目。詳細は費用面とまた何処かで。

 

物販収入

「物販収入」が項目として仕分けされたのが2016年からの為、データの蓄積が不足しているのはご容赦願いたい。前年度比6300万円増加の9100万円と大幅増収も、過去最高とはならず但し、これは過去に書いた様に委託販売形式へのシフトが要因の1つとなっています

利益率自体は2019年以前よりも良いパフォーマンスを見せており、ようやく外注化の効果が結果に現れた形。余談ですが、先日の意見交換会では、実力4億規模まで伸びれば内製化したい・(SANGA LIFE LAB含め)物販部門は拡大したいとの意向を、伊藤社長が示してくださいました。

 

富士山を登ろうとしているのか、愛宕山を登ろうとしているのか。体力作りでまずは河川敷をランニングしている処なのか。何処を目指し何をしようとしているかが分かれば、こちらは判断ができます。安心ができます。逆に「それは違う」と声を上げる事もできます。何も伝えられなければ、不信感と疑問しか生まれません。誤解も生まれるでしょう。先日の回答は非常に貴重な情報でありがたいことだと思っています。今後、ますます広く透明性のある情報公開に努めていただきたいと思います。内側に秘めていて良いことは何もありません。

 

閑話休題。同じく委託販売形式に切り替えたセレッソ大阪を見てみると、元々2億〜3億円あった物販収入が9700万円と京都とほぼほぼ同じ程度になっています。委託先が異なる為、単純比較はできません(セレッソ→ファナティクス/京都→加茂商事)。しかし、度重なるユニフォーム完売+限定ユニフォームの販売も勘案すると、京都もクラブが直に販売すれば正味2億円強くらいの実力はあるのでしょう。これを短期的なものとせず、地力として身につけなければなりません。

引用元:セレッソ大阪の経営情報 | Jクラブ経営情報ポータル

 

【我々にとってできること】

良いグッズがあれば購買すること。

普段使いできるグッズを普段使いすること。

 

支出編

チーム人件費

支出面に移ります。Jリーグクラブにとって最大の資本投下セクションであるチーム人件費(総年俸ではない)は、収入の増加と比例するように5億7600万円の大幅増。17億600万円は過去最高です。J1残留へ向けて相当の投資が為された証拠ですが、それでもJ1で下から数えて4番目になってしまいます。

2022年度のJクラブトップチーム人件費が判明!! 最多は48億円超の神戸、王者横浜FMが8.7億増で2位に急浮上 | ゲキサカ

 

推移を見ての通りサンガスタジアム開業以降の伸びが顕著であり、観戦環境の整備→収入の増加→強化費の増加→選手補強・契約維持→戦績の向上→J1昇格→観客動員数等の増加→更なる収入の増加…と新スタジアムを契機に非常に良いサイクルが起こっています。全面屋根と高い利便性そして陸上トラックの無いフットボールスタジアムを整備することは、真っ先に取り組む事であり、コレができないサッカークラブが今後上へ上へうねりを起こしていくことはまず無いでしょう。

 

アカデミー運営経費

前年比1億6400万円増と急増しています。コロナ禍での活動縮小の反動にしては、収入の伸びに対して大きく乖離しており、疑問点を抱く処です。U-18もプレミアリーグではなく関西圏の移動に留まるプリンスリーグ所属でした。

考えられるとすれば、サンガタウン人工芝グラウンドのリニューアルでしょう。京都の練習場であるサンガタウン城陽は(株)サンガタウン城陽が所有しており、年間約5千万円で借り受けています。なので本来は(株)サンガタウン城陽が修繕して利用料に上乗せし、サンガが利用料を毎年払うのが筋です。しかしこれ程までの費用の増加ですから、一括で支払ったぐらいの線しか…正解が気になるところです。

 

なお、お隣のセレッソ大阪や、セレッソ大阪から宮本氏を招聘した横浜F・マリノスは、アカデミー事業等を別法人に切り離して活動しています。それにより、企業版ふるさと納税を活用した普及活動・地域振興や、スポーツくじtoto助成金を活用したクラブハウス新設を実現しています。

経営陣が他クラブの事例を「知らない」「初めて聞いた」では済まされないのです。一体何を勉強しているのか…?レベルです。所謂アジア戦略や、部活動問題・地域型スポーツクラブへの移行然り、時流を読み、事業戦略を構築し、各関係者がWin-Winになれる「構造」を作ることがサンガには強く求められます。

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資産・負債編

直近3年間の好決算により、純資産額が緊縮財政時(2011〜2015年)よりも大きくなっています。冒頭で述べたクラブライセンス制度に於いて、財務要項で抵触する可能性は低いと言えるでしょう。

 

固定資産

固定資産が7400万円増加し、1億7200万円となっています。過去との比較で言えば、2011年に匹敵する額です。

Jリーグクラブの決算に於いて固定資産に計上される代表的な資産は「練習場やスタジアム、事務所」「選手獲得に要した移籍金」です。以下は左から北海道コンサドーレ札幌アビスパ福岡柏レイソルの決算内の貸借対照表の詳細。私もこうした貸借対照表そのものを見る機会があまり無いので不慣れですが…「長期前払費用」が移籍金の計上に該当します。柏の場合は日立製作所から現物出資されたスタジアムが「建物」と「構築物」に該当していることでしょう。

引用元(※PDF注意)

https://www.consadole-sapporo.jp/club/settlement/images/2023/06/kessankoukoku-r0501.pdf

https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/92458/1/040620-simin-avispa.pdf?20220826104130

https://www.reysol.co.jp/fileg/2021_30th_reysolkoukoku.pdf

 

ちなみに移籍金を資産として計上する理屈は以下の通りです。

めちゃくちゃ簡単に例えると、Xクラブから移籍金9千万円でA選手を3年契約で獲得したとします。その際、9千万円を投じてA選手との契約権という形の無い資産を手にしたと見なしますそして契約期間は3年なので、3年をかけて資産価値が0円になるように費用の計上と資産を減少させます(=減価償却

実際のお金の流れとしては、獲得時に一括で移籍金9千万円をXクラブに支払っていても、会計上では3年分割で費用に計上する訳です。

ワールドカップの前に・・サッカー選手の価値は決算書に載る?  

https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2020/01/ifrs-ifric-news-2019-11-02.html

長期前払費用|繰延資産となる理由とよくある仕訳|freee税理士検索

 

話を戻しますが、京都の固定資産が増加したのはこの「移籍金」が理由と推測されます。特に井上・アピアタウィアの両選手

来季J2に降格する仙台DFアピアタウィア久(23)が、J1昇格した京都に完全移籍することが25日、決定的となった。大卒1年目の今季、29試合出場1得点。高さとスピードを武器に主力として活躍した。リーグ関係者によると、契約が2年残っており、移籍金が高額だったが、まとまったようだ

来季も岡山との契約を残す井上には移籍金の設定がなかったが、京都は5千万円を大幅に超える移籍金を岡山に提示したという。J2からの移籍では破格となる好条件で複数クラブとの争奪戦を制した

 

なおファジゲートへの移行に伴い閉鎖して見れなくなったファジラボ(ファジアーノ岡山専用Webメディア)にて井上の移籍金が7〜8千万円程度と推測されるインタビュー記事が掲載されていたので、おそらくこの両者獲得に費やした金額は想像以上に大きく、資産の増加はほぼほぼこの二人の移籍金分という私の読みに繋がる訳です。

余談ですが、2011年の固定資産額が過去最多かつ2011年→2012年でチーム人件費が3億400万円も減少したのは、数億円単位の移籍金+高額年俸を要したディエゴ選手・ドゥトラ選手が在籍→移籍した頃だからですね…

 

流動資産

また、流動資産も新スタジアム開業以降だけで4億8400万円も増加しています。コロナ禍でも新スタジアム効果により儲かっていた為、補強やスタッフの交代(違約金負担)に対応できる「現金及び預金」は十分あるものと推測されます。純資産も蓄積できており、繰り返しになりますが即座のライセンス剥奪の可能性は低いです。お金の面だけを切り取れば、他の財政に悩むクラブと違って夏のウインドーで積極的な動きを見せる事は容易でしょう。

 

以上が2022年度決算について、目に見えている情報からの分析となります。

 

 

今後クラブが取り組むべき行動とは

今回は簡単な分析のみに留めましたが、この様な話をすると、得てして「対案を出せ」「お前がやってみろ」と言われるものです。

本記事をより伝わる様にまとめるだけでも過去一大変なので…全てをお話しするには労力が甚大過ぎます。そこで私見にはなりますが要点のみお話しします。これでも長くなると思いますが。

京都サンガ(やJリーグクラブの多く)の問題点は一言で言い表せば「経営理念が実践できていない」点です。

その改善の為には以下の3つの項目で抜本的な見直しが必要だと考えられます。

改善点1.顧客第一主義の徹底

改善点2.評価基準の見直し

改善点3.組織の再編成

 

前提として、私はJリーグクラブはサッカーを中核とした「ローカル・プラットフォーマー」であるべしと考えています。これは人・企業・行政を性別・年齢そして国境を問わず繋ぐハブ機能集団として社会に貢献することで、サッカーという世界一楽しいスポーツを未来永劫楽しめる様にする為です。

クラブ経営が上向けば競技レベルも上向くと話をしましたが、逆も然りです。もっと大局を見渡せば、日本の経済規模・社会機能が低下し続ければ、サッカーどころではなく自ずとレベルや取り巻く環境も低下します。サッカーに限らず、日本スポーツの頂点は今まさにこの時なのです。

特に90年代以降、多くのスターと輝かしいシーンを我々は目にすることができました。でももう終わりの時は近く、既に競技人口をはじめパイは急速に縮小しつつあります。少子高齢化と経済の衰退が急速に進行するこの国で、大谷翔平三苫薫がコンスタントに生まれるはずがありません。マーケットの消失を防がなければなりません。

 

一方で、Jリーグの理念と仕組み。野球でもバスケでもなく「サッカー」というスポーツが国内外で持つ価値。これらに目を向けると、まだ我が国にはより良い未来を創り上げる可能性のある選択肢が1つ存在する事に気付かされます。この貴重な選択肢を、タイムリミットまでに間に合う様に今よりもっと強く加速して世に示さなければなりません。

 

京都の街も同様です。この街は素晴らしい街です。都です。しかし、問題が山積しており沈みゆく泥舟である事も事実です。決して目を背けてはなりません。

だからこそ「サンガに関係する全ての人々と夢と感動を共有し、地域社会の発展に貢献する」という経営理念を必ずや実践しなければならないのです。サッカーの力で京都を中心とする全ての人々の物心両面の幸福を追求しなければならないのです。

 

改善点1.顧客第一主義の徹底

京都は第一に顧客を愛する姿勢が不足しています

例えば対スポンサー企業向け。

京都サンガでは新規スポンサー契約締結に至った場合でも、リリースやSNS上での周知は過去から全く行われません。また今年は「今年度のスポンサー企業はこちらです」という紹介すら3年前に続いてありませんでした。その紹介もただURLを貼るだけで、翌年には何の意味も持たないリリースなのですが。本当に顧客を愛しているのならば、自ずともっと違う行動が取られるはずでしょう。

 

次に、サポーター向け。

文中に「ご覧ください」とありますが、instagramへと誘導するURLは貼られていません。また、Twitterのプロフィール欄にinstagramアカウントへのURLがある訳でもないです(補足するとTwitterのIDは"sangafc"ですが、instagramのIDは"kyotosanga_official"で異なります)。本当に見て欲しければ、見てもらえるように行動するはずです。

しかし、これでは①このツイート文を見る→②instagramでサンガの公式アカウントを探す→③アカウントに辿り着き、当該投稿を選択する という手間が発生します。言動と行動がチグハグです。実は見て欲しくないのでしょうか?

 

昨今、エンブレム等を変更して「リブランディングです!」と謳うサッカークラブが増えてきましたが、手段の1つでは有ってもあれだけではリブランディングでも何でもありません。日頃の言動や行動の中に込められた顕在的・潜在的メッセージこそがブランディングの肝です。この様な顧客軽視とも受け取れるアクションはクラブビジョンに反する行動であり、その矛盾に対して不信感が生まれます。不信感が生まれると売れるものも売れません。

顧客視点に立ってサービスを提供すべき点が第一の改善点です。

一時期は「ファンからの愛着がJ1クラブ一低い」と酷評されたグランパスが、どうやってこの「大逆転」を実現したのか。

背景には、ファンと向き合い、結びつきを強固にした、顧客体験の改善があった。

ファンはターゲットではなく“ファミリー”。 4万人の家族と名古屋グランパスが目指すゴールとは - CX(顧客体験)のメディア「XD:クロスディー」

 

改善点2.評価基準の見直し

1と関連して、今年の開幕戦前にこんな事がありました。

京都と徳島、共にシーズン開幕前の所謂"煽り動画"ですね。開幕戦の数日前に投稿されたものです。この動画投稿・Twitter投稿に関して考えたいのは「目的」と「目標」です

"開幕戦のチケット購買促進"と"目前に迫るシーズンへの期待感を高める"狙いがあったと推察されますが、徳島はチケットの購買促進がメインテーマで、動画は「手段」として活用しています。Youtube上でも動画はUPされましたがそちらへの誘導はなくTwitter上で完結していますね。

一方で京都はYoutube動画への誘導が「目的」になっており、ティザー広告もややわかりづらい画像1枚のみ。動画の一部すら添付されていません。しかもチケット購入への誘導は同じ投稿内に存在せず、自ずとアクセス数が減る別投稿でぶら下げられています。訴求力が低かった事が作用したのか、24時間以上が経過時点で比較するもTwitter上での表示回数は徳島の半分以下。伴ってチケット購入案内投稿の表示回数は更に大きく減少。

 

重ねて、Youtube動画の再生回数自体も、5か月が経過した今現在、投稿日が1日早い徳島に1800回の差をつけられて劣っています。完敗ですね。

 

ここで、なぜこのようなミスが、失敗が起こるのか?を分析・考えた時に、仮説として浮上してくるのが「評価基準設定の誤り」です。

本来であれば、経営理念「サンガに関係する全ての人々と夢と感動を共有し、地域社会の発展に貢献する」の為に、売上や入場者数など目安となる目標設定があるはずです。所謂"KGI"ですね。

設定された目標をクリアする為には色々な手段が用いられます。チケット購入ページや試合情報へSNS投稿を用いてリーチさせるのもその1つでしょう。そうした手段についても、進捗具合などを可視化・管理する為に数量等が設定されます。所謂"KPI"ですね。

【例】

目的・・異性にモテたい

目標(KGI)・・体重を5kg減量する/腹筋を割る/清潔感を保つ

手段(KPI)・・週に述べ10kmランニングする/毎日腹筋トレーニングを20回×5セットする/朝夕洗顔+化粧水・乳液ケアをする

 

ところがおそらく、このケースだと「Youtubeに力を入れるぞ!」と兎に角Youtubeの再生回数を回す事が優先されてしまった。手段が目的化してしまった。

結果としてチケットへの誘導も果たせていなければ、投稿自体が世に広く出回らなかった事で動画の再生回数も伸びなかったのでは…というのが仮説です。作成(投稿)側ではなくて発注者側のミスですね。

 

これは改善点1とも結びついていて、京都は目的・目標・手段の関係性を組織として常に誤っているから、人が変われど繰り返し顧客視点の欠落した行動が露呈されてしまう。
だから、行動の動機づけとなる組織内の評価設定・プロセス自体を改善しなければならないでしょう。

このままだと、おそらく次はTikTokが「目的」になってしまうのではないでしょうか…

>しかし、たまには一歩引いて全体像を見る機会を持つことが必要だと私は考えています。そのSNSは何のために、どの指標を伸ばそうと運用していますか? これに明言できないと落とし穴にはまってしまう危険性が高そうに思えます。

例えば、あなたがYouTubeの担当になったら月間総再生数をひたすら伸ばそうとするでしょう。あなたがTwitterの担当になったらひたすらフォロワー数を伸ばそうとするでしょう。そういう部分最適の思考は、ファンづくりを阻害してしまいます。あくまでデータ活用やデジタル施策は手段です。ファンをつくるという前提の目的を明確にして、そのためにどういう役割を担うのかを視座を上げて判断すべきだと考えています。

「フォロワーを増やせ」は古い! SNS運用はKPI設定がすべて:日経クロストレンド

 

改善点3.組織の再編成

プロセスを改善する為には、環境を整備する必要があります。経営執行部門・広報部門・スポンサー営業部門・ファンマーケティング部門・強化部門・普及部門・総務部門…もちろん選手・コーチングスタッフたちも含めたクラブ全員が同じ方向を向いて、目的・目標・手段を共有できる構造を作らなければなりません。

全社的に同じ方向を向いていないからこそ、誤った評価設定が行われ、顧客視点の抜け落ちた行動が生まれてしまうのです。

 

そこで例えばですが、大きくは以下の3つの事に取り組むべきでしょう。

1.組織の再編成

2.各事業部門の権限強化と補完機能強化

3.風通しの良い組織風土づくり

 

1.組織の再編成

京都サンガあるあるですが、このクラブはやたらめったらと組織の名前と位置付けを変えたがる。その度にオフィスが城陽から四条へ、四条から城陽へと行ったり来たり…

余談だが、今なんかアカデミー部門は何がなんだかわからない状態となっている。最上位の強化アカデミー本部長は昨年夏に退任。トップチームを司る強化部長代理には安藤淳氏が、アカデミー育成統括部長には李さんが就いている。育成統括部の下には5つの課がぶら下がっており、育成スカウト課・育成管理課・フットサル課・ジュニア育成課・チアスクール課と存在する。

 

まあ課(という名の実質1人部署)が多いのは別に悪いとは言わないのでさておいて全社戦略を浸透させる為にも組織図は整理する必要があるでしょう。

営業畑育ち、人事畑育ち、財務畑育ち。社長にも色々なタイプがあります。監督と同様に1人で全てを担う必要はなく、分担すれば良い。ただ、札幌の様に専門人材と手を組むのも良いが、お任せ或いは言いなりになってしまうとよろしくない。なので「自分にはうまくできないこと」を見極めて、組織の整理と補完できる人材を経営の中枢に登用する事が肝でしょう。一例を挙げると以下の7点の様に。

その1.現執行陣(社長・常勤役員)と各事業部の間に経営戦略の策定と実行への監督管理を担うレイヤーを設置すること。ここでは仮に「経営戦略本部」とネーミングする。

その2.経営戦略本部には、サッカークラブ経営や会社経営に長けた経営人材を新規採用・登用し、一定の裁量を与えること。

その3.経営戦略本部は後述する各小集団を束ね、横断的組織としての役割を果たすこと。

その4.経営戦略本部内に新規事業やマーケティング戦略を立案に特化したセクションを設けること。ここでは「マーケティング部」とネーミングする。

その5.マーケティング部は全社的な営業活動及びブランディングを強化し、どのセクションも京都サンガのカラーを理解して機能できるように活動する。その為にマーケティングに長けた人材の登用と一定の裁量を与えること。

その6.マーケティング部の下には「経理・総務・人事部門」「法人営業・個人営業(グッズ・ファンクラブ・チケットセールス)・ホームタウン担当・運営・広報部門」をぶら下げること。

その7.マーケティング部は、下位レイヤーにある法人営業・個人営業・ホームタウン・グッズ・広報の各セクションを監督・補完すること。またスクール事業のマーケティング機能を担うこと。

 

北海道コンサドーレ札幌は「クリエイティブディレクター」や「インキュベーションディレクター」など外部人材と手を組んで社内に無い専門知識を補っている。

北海道コンサドーレ札幌クリエイティブディレクター・相澤氏が語る新契約先・ミズノへの期待値(対談後編) | 財界さっぽろ

>クラブからは三上大勝代表取締役GMと平山浩司執行役員、菅井研インキュベーションディレクターが出席した

企業も町も「目減りしない価値を」コロナ禍の再構築支援 OEZO CEOの菅井研さん(39)

 

2.各事業部門の権限強化と補完機能強化

各小集団が全社戦略・事業戦略に沿って機能を果たせるように、各小集団に於いて専門的な知識を有した人材の決裁権限を強化すべきでしょう。一方で人員増加や外注の活用をする。また前述の例で言えばマーケティング部(仮)が戦略・戦術の立案を監督・補完する事で、各セクションのマンパワーを捻出できる様にすべきでしょう。

例えば、今現在の京都サンガでジュニア育成課長は藤田聡コーチが担っています。氏はコーチであって、「スクール生を増加させる」といったビジネス面での成果まで一任するのは酷です。このような場合はマーケティング部(仮)が補完をする事で、負担の軽減と各部門の足並みを揃えて全員参加型の経営を実現させるべきでしょう。

 

3.風通しの良い組織風土づくり

「風通し」には2つの意味があります。

1点目は労務・人事管理的な意味合いです。スポーツ業界全般に言えることかもしれませんが、京都は余りにも人材の流動性が高すぎます。入っては辞め、入っては辞め。働きやすい職場環境を物心両面で作り上げなければならないでしょう。

2点目は所謂「声を上げやすい」雰囲気の話。サポーターだけでなく、社員さん自体に情報が共有されていなかったり、逆に上へ物申すのが難しいのだろうと察する場面に遭遇する事が多い。

例えば先述した動画・Twitter投稿の話も、誰かから「これって…」という話が出てもおかしくはないはず。でも直らないのは、言っても通らないor言っても無駄だという空気が醸成されているorそもそも誰も見ていないか。ではなくて、全員が同じ大きな目的・目標を共有し、興味関心意欲を持ち、意見を酌み交わし、顧客第一主義で活動できる組織にしなければならないでしょう。

マーケティング専門部署を立ち上げ、スタジアム来場者数が倍に伸長─株式会社名古屋グランパスエイト | マーケティング・デジタル・クリエイティブ職の採用支援はマスメディアン

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言及すべき点を挙げて、かつ改善例を出せと言われれば山の様にあります。

例えば内容重複しますが、既にチケット販売が開始している次週の試合を告知するのに、チケット購入URLすら貼らない。何故なのでしょうか?1人でも多くの来場者を集めたいのならば、行動は変わるはずです。セールスする気が無いのでしょうか?

 

HP内のスポンサー募集のページ。以前はこんな記述すら無かったからかなり改善はされていますが、問題点はまだまだ山積状態。

京都サンガF.C.の強み」として、最新のスタジアム」「アカデミーの充実」などと記載も、ただ単にサンガ自身が自分達の強みだと思っている事が羅列されているだけ。どの様にスポンサーメリットとして機能するのか?がまで掘り下げられておらず、情報を伝えられていません。

京都サンガF.C.のスポンサーシップとは | 京都サンガF.C.|オフィシャルサイト

 

これがセレッソ大阪の場合は、「ビジネス交流や社交の場としてご利用いただけます」や「自社商品の販売促進に活用」などと記載して、どんなメリットがあるのか、どの様に利用ができるのか、サービスの受け手側に立って情報を発信しています。その為、非常にわかりやすい。サンガと異なり5W1Hを補完しています。

パートナー・スポンサーページ|セレッソ大阪 公式サイト | Cerezo OSAKA

 

こうなるとWeb上の情報伝達が上手い下手ではなくて、サンガは表面的には真似をして体裁を整えているが、そもそも企業全体としては"スポンサーシップ"の本質を理解できていないのではないか…?という不信感も募ります。(上っ面だけは似ている)

 

 

個人向けも同様です。

例えば、今年HPがリニューアルされましたがその際に”数年ぶり”に観戦ガイドページが復活しました。(このHPリニューアル自体も過去のリリースや監督・選手コメントなどが遡れなくなるもので、クラブの歴史やコンテクストを断絶する非常に嘆かわしいもの…)

しかし、チケットの購入方法など「どうすれば観戦できるか」の案内に留まっており、そもそもなぜサンガの試合を観戦すべきか?何が魅力なのか?観戦を通じて何を得られるのか?は教えてもらえません。精々「スタジアム観戦で一番盛り上がるのがゴールシーン!スタジアム全体が一体となる非日常空間をお楽しみください」と記述されている程度。ゴールは必ず生まれるものでもないし。(しかも去年も今年も下から数えて4番目程度の得点数)

おそらくは「サンガの試合って何が良いんですか?一言で教えてください」と直接問うても、芯を食ったアンサーは返ってこないことでしょう。

はじめての観戦ガイド | 京都サンガF.C.|オフィシャルサイト

 

最近力を入れ出しているYoutubeをはじめとする動画投稿も同じく。

【求人案内】映像クリエイター募集のお知らせ | 京都サンガF.C.|オフィシャルサイト

先程も登場したコレ。いやそもそも動画コンテンツなら、instagramがダメとは言わないがYoutubeで良いのでは…?せめて両方にUPするか。開幕戦の煽り動画の際にはチケットセールスよりもYoutubeの登録者数や再生回数を優先させていた。しかし今回はInstagramへUPしている。何故なのか?これもきっとInstagramのフォロワーを増やす事が手段ではなく、目的と化しているのでしょう

 

更に掘り下げると、動画コンテンツの内容。最近シリーズで投稿されているのが選手の対談動画。これまでのサンガの動画と比べると諸々のクオリティが高く、私自身も楽しみに見ています。

しかし、選手のパーソナリティ等が知れるとは言え、余りにも視聴対象のパイが小さすぎます。これを見て喜ぶのは選手個人のファンや、既存の京都サポーターがメイン。更に沼にハマらせるツールとしては有効だと思いますが、広く人を流入させる様なフックにはなりづらい。

 

プロスポーツクラブでYoutubeを上手く活用しているクラブといえば、Bリーグ:川崎ブレイブサンダーズです。選手たちがバスケの技術を活かして挑戦する系の動画や、人気Youtuberとのコラボ動画などを次々投稿。Youtubeきっかけでの来場客・ブースターを創出することに成功しています。

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サンガの再生回数の多い動画を見ても、ロッカールームや練習風景などの舞台裏や、コラボ動画が、印象的な試合のハイライト動画らと並び上位に位置付けています。


Jリーグ全体でも"Inside動画"をUPするクラブは増加傾向にあり、今季のJ1では18クラブ中12クラブが定期的な投稿をしている事を確認できます。しかし、ロッカールームなどでカメラを回している事が後半戦煽り動画でも確認できた京都は、なぜかYoutube上のみならずどの媒体でも定期的な投稿はありません。なぜこのような選択をしているのか背景はわかりませんが(使える素材が乏しいのか…?DVD化して売りたいから控えているのか…?)、目的と目標、需要と供給がミスマッチしている気配を感じます。J3から昇格初年度のいわきFCでも、かなりのスピードと頻度でUPして、再生回数もクラブの規模を考えれば良い回り方をしているのに。

 

サッカー:日本サッカー協会の動画配信が人気 裏側密着でサポーターとつなぐ 元川悦子 | 週刊エコノミスト Online

 

無論、"動画クリエイター"との契約形態+マンパワーの問題でできない事も多いとは思うのですが、その投稿頻度の低さを含めて何のために帯同させているのかイマイチ意図が見えてこない。

選手にフォーカスを当てた動画は、選手が移籍でもすればぶっちゃけて価値が無くなります。(生え抜きの選手で、海外移籍や代表入りなどステップアップを見せれば、過去を映し取った動画として持続的に再生されてかつクラブへの誘引材料にはなりますが。)

これは戯言と思っていただきたいのですが、例えば「子育てをしていて使える動画」なんて良いですよね。育児の中でスマホで動画を見せる親御さんの割合は今やほぼ100%。サッカーを絡めて、子供の機嫌が良くなる・夢中になる都合の良い動画が作れたら、再生回数はずっと回る。動画を契機にクラブを認知してもらえる。そこから誘引できる。「泣いてもかましまへん」と謳う府の子育て施策とも絡めて、世の小さな子を持つ親の困り事をサンガが解決できればどれほど素晴らしいか。ものの例えですけど、そういうクリエイティブな発想が無い。

 

ほらまた言ってる側からね。

 

 

まとめ

細かい話は強化・育成面含めまだ尽きませんが、この辺にしておきましょう。語り始めたら2日は必要でしょうから。

 

振り返りです。

・クラブ経営について理解を深めることはサッカーを楽しむ上でメリットがある

・なので京都サンガの経営状態について分析をする

・売上はクラブ史上最多の32億8800万円を記録

・これは前年比10億7900万円の増加

・但し、他クラブの経済規模はもっと大きく、更なる成長が必須

・売上の内訳を見るとスポンサー収入と入場料収入で過去最高値を記録

・要因として考えられるのはサンガスタジアム効果+J1昇格効果など

・物販部門も昨年度迄は低パフォーマンスも収益性が大幅に改善

・夏の移籍市場で積極的に動けるだけの資金力は有るはず

・一時を思えば好決算続きで成果こそ表れている。しかしクラブの地力には疑問符

私見としてクラブが着手すべきは「顧客第一主義の徹底」「評価基準の見直し」「組織の再編成」の3点を通じて経営理念を実践できる構造にすること

 

偶然を排除し、勝つべくして勝つ構造を作らなければなりません。

 

お客様第一主義。全員参加型経営。ガラス張りの経営。目標の周知徹底……

それらは全て、「父の教え」そのものではないのでしょうか。

 

利他の心を。

 

See you soon…!

 

 

#京都サンガ経営 で投稿 or RTやご意見等、是非よろしくお願いします。

 

その他参考資料

Jリーグチームの社員数について調べてみた(2023年春) | Tassiy's Blog2

ガンバ大阪はなぜロッカールームの映像を見せるのか? - footballista | フットボリスタ 

Jリーグクラブ経営ガイド | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

【エスパルス】プロサッカークラブの「フィロソフィ」「ビジョン」ってなに?|spulse39 

 地域の価値を高めるスタジアムを創造する(株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー)

マリノス優勝を「必然」にした改革5年間の知られざる真実 シティ・フットボール・グループ利重孝夫の独白 | REAL SPORTS (リアルスポーツ) | スポーツの"リアル"を伝える

名古屋グランパス | CRM事例 | シナジーマーケティング株式会社

 

親企業がJクラブの戦略性に与える影響と対応

ワイドインタビュー問答有用:“4度目の正直”=川森敬史・アビスパ福岡社長/840 | 週刊エコノミスト Online

 川崎フロンターレ社長のサッカー経営「最前線」|サッカーだけではないコンテンツの提供が責務/インフラとしてのサッカーチームとは?【EXTREME TALK】吉田明宏 後編 - YouTube

B1千葉ジェッツ 危機から再生、プロスポーツの新たなモデルに | 2019年11月号 | 事業構想オンライン

思想 | 稲盛和夫について | 稲盛和夫 オフィシャルサイト

 

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