2023 高円宮杯U-18プリンスリーグ関西 第4節
得点者(京都のみ)
熊谷空大×2,吉田遥海×2 ※23日18時時点で公式結果未公表
仕切り直しの一戦は京都勢対決。冬の高校サッカー選手権準優勝チームである東山高校との対戦だ。
京都は右WGに兎澤玲大(9番/3年)がスタメン復帰。また、神田が出場停止処分で欠場となった左CBには、喜多壱也(4番/3年 ※2種登録)が戦列に戻ってきた。今季初スタメン。
一方で、1年生ながら開幕から3試合連続スタメンだったMF尹星俊(25番)はベンチ外となった。
午前10時キックオフのこの試合、強い日差しの中でスタートから攻勢を強める京都。良い試合の入り方ができていた。前節とは異なり自信を持ってプレーができている。
すると7分。手薄な左サイドでボールを受けた柴田了祐(15番/2年)が、左ハーフスペースへ突撃するCF熊谷空大(7番/3年)へとショートスルーパス。熊谷にはCBが付いていたが、自慢のスピードを活かす見事なファーストタッチで上手く抜け出すと、GKとの1vs1を落ち着いて決め切り先制。トラップで勝負ありであった。
前半早々の先制点にゴールラッシュの期待が高まるが、東山もセットプレーやロングスローから京都ゴールを脅かす。特に高い位置でのスローインは、必ずと言って良いほどロングスローを選択。
前半14分、自陣ビルドアップの中で、喜多がトラップの際にボールを踏んづける様な形でロスト。拾った東山は即座にクロスボールを入れる。中央で東山CFの松下凌大(11番/3年 ※サンガU-15出身)が飛び蹴りの様なジャンピングボレーで合わせて同点に追いつかれる。
京都・村田虎太郎(2番/3年)と東山・松下凌大(11番/3年)
松下のプレーを見るのは中1以来5年ぶり。先日ゲキサカで見て、東山に進学していたのは把握していたのが試合中は忘れてしまっていた…京都にとっては手痛い恩返し弾であると同時に、こうしてユースに進めなかったor進まなかった選手の活躍に再会できるのは、日頃から見続けている事で得られる喜びでもある。
さて、トラップミスで失点に絡んでしまった喜多であるが、Twitterでベタ褒めした様に試合開始10分間のオフザボールの振る舞いと精度の高いパスはさながら皇帝の様で異次元であった。去年の試合で、あそこまで声を出して味方に要求する姿は見たことが無かった。明らかにトップチームへの帯同を通じての変化だ。乾いたスポンジの様な彼らにとって、やはりプロの舞台は失うものもあれば得るものも大きいのだろう。
また、前節の飯田と今節の喜多。既にトップチームデビューを果たした2人が失点に絡むミスを犯したのは、長い目で見れば非常に貴重な事だと思う。人間は意識しても慢心や勘違いをしてしまう生き物である。良い薬にして欲しいと同時に、喜多の様な明らかな成長・変化が、チーム全体に伝播していけば良い。
戦線復帰し今季初スタメンの喜多(3年/4番)は、1失点目は自身のトラップミスが起因も、それまでの前半冒頭10分間は出色の出来。トップチーム帯同を通じて明らかに伸びが感じられ、周囲への要求の声やコーチングからも意識の高まりが見られる。あとは攻守共にタイムアップまで保ち続ける事。 pic.twitter.com/WNwZiCzsxL
— n (@nks137) 2023年4月22日
喜多の冒頭10分間のプレーが凄すぎて、正直他が薄まってしまっている。去年よりも明らかに伸びている。
— n (@nks137) 2023年4月22日
プレミアとプリンスの違いもあるが、麻田や江川や井上にあれ程の凄味を感じた事は無い。でも、今日の喜多には有った。
トラップが大きくなって突かれたり、逆にホッとする場面も有ったけど笑
喜多の1本目の対角線ロングフィード、50m〜60mは距離有ったと思うけどピンズドで笑っちゃったよね。本当に伸びたし、でもまだまだノビシロがある事が羨ましい。
— n (@nks137) 2023年4月22日
その後、CKの流れから失点を喫し、前半をビハインドで折り返す。
ミスや不運な形から逆転される流れは前節と瓜二つ。嫌な流れだ。
ハーフタイム明け、京都は柴田を下げて吉田遥海(11番/3年)を投入。
一進一退の攻防が続く中でこの交代が当たる。立川遼翔(16番/2年)のロングスルーパスがピッチ中央を貫き、高いDFラインの背後へ抜け出した吉田がGKとの1vs1を決めきり同点。
更に後半20分(※)、再び立川のロングスルーパスに、今後は熊谷が快速を飛ばして抜け出す。GKとの1vs1を左へ交わし、無人のゴールへ丁寧に流して逆転ゴール!
後半26分(※)、すると今後は東山のターン。京都DF背後へのボールをGK三反畑篤樹(1番/3年)との連携が上手くいかず、いきなり処理を依頼された三反畑が慌ててPA右方向へ飛び出すも東山の選手が先にボールに追いつき、角度の無いエリアから無人のゴールへシュート。
間一髪のところで喜多がダイビングヘッドでスーパーなクリア。CKへ逃れる。
このシーンはあの位置にGK三反畑を飛び出させる方が酷。DFで処理しておきたかったが、喜多のリカバーに救われた。
後半29分(※)、自陣ゴールキックから繋ぐ京都。GKと両CBで交換しながら機を伺うと、喜多から中盤へ縦パス。少しリスキーではあったが、これをフリックで右へ繋ぎ東山の中盤を置き去りに成功。一気にスピードアップし、流れる様に相手バイタルエリアへ攻め込むと、最後は立川からのラストパスを受けた吉田が落ち着いて決め切り4点目!
ゴールキックから一度も相手に触れさせる事なく決めた美しいゴールに感情を爆発させる。3年生FW2名のドッピエッタも見事だが、立川も後半だけで3アシストを記録と見事な活躍であった。
2点差かつ東山イレブンの運動量も低下し、余裕を持った展開になった京都。
1年生の小鷹天(28番)が投入され、公式戦・プリンスリーグ初出場。小柄ながらボールテクニックの片鱗を見せる。
このままタイムアップを迎え、京都サンガU-18が4-2で見事な勝利を収めた。
次節はこの日と同じ東山高校醍醐総合グラウンドで、4月29日に開催される。
※=手元の時計での計測時間
さて、心情的な話とお金の話を最後に。
この日は15名ほどのサポーターと多数の保護者が応援に駆けつけていた。
京都に限らない話ではあると思うが、私見ながら、「ユースの試合を見に行かないのにいざトップに昇格すれば我が子の様な扱いで贔屓する」サポーターは多い様に感じる。
私自身は、見たいから、応援したいから、"京都サンガ"の試合へと好きで駆けつけている。トップとかユースとかは関係ない。全部サンガだ。
別に現地に行く事が義務ではないし、人それぞれ都合はある。ただ、勝ち馬に乗るような、上澄みだけを楽しむスタイルは個人的に好きではない。勝ちたいから厳しい事も求めるが、私はネット上の評論家ではないと思っているし、今後もそうなるつもりはない。現場も見た上で得られた情報を基に話す(勿論見えていない要素もあるが)。
アカデミーの頃から見守る事で、トップに上がる選手も上がらない選手も「応援されていたな」と思ってくれれば、大学や他クラブあるいは一般企業を経由して再び結ばれる縁があるかもしれない。
あるいは上澄みだけを享受するのではなく、日頃から見ている事で点と点が線になり、線が面になっていく楽しみや喜びもあるだろう。この日、松下の活躍や喜多の急成長に出会えた様に。
次いで、お金の話。
京都はアカデミーの選手たちが着用するユニフォームにも、トップチーム同様のスポンサーが名を連ねている。また、選手バスにスポンサー企業が付くなどもしている。
<アカデミーバススポンサー締結>
— 京都サンガF.C. (@sangafc) 2020年10月20日
この度株式会社ステージ様 @stage_kyoto とアカデミーバススポンサー(オフィシャルシルバースポンサー)の締結を致しました。『「人間性」を重視した、「心技体すべてに優れたトップアスリー ト」の育成』という、サンガアカデミーの理念に共感頂き、支援を賜りました。 pic.twitter.com/pAixiJ742a
株式会社ステージ様 @stage_kyoto は1991年に創業された京都の人材紹介会社。「良い人を、良い会社へ」をモットーに、ヘッドハンティング・エグゼクティブサーチに強みを持つ企業です。
— 京都サンガF.C. (@sangafc) 2020年10月20日
「人材紹介会社ステージは京都サンガF.C.に関わる皆さんと社会をつなげます」https://t.co/iBQY5CAWTE pic.twitter.com/QtYsNdTpFv
これは決して当たり前の話ではない。次代のアスリート育成に対する理解あってこそのスポンサードであり、アカデミー所属選手たちにはこの有り難みをしっかりと理解した上で日々のプレーと勉学に励んで欲しい(散々言われていると思うが)。
その上で、例えば川崎フロンターレU-18の様に、ホームゲームに2千人〜3千人の観衆が集まれば…? 今より広告価値は高まるし、新しい機会や価値が生まれるかもしれない。
川崎F 富士通スタを「青く」 U-18最高峰の大会で | 川崎区・幸区 | タウンニュース
Soccer D.B. : 川崎フロンターレU-18 観客動員
アカデミーは、収支上単なるコストセンターになりがちである。スクール事業と違って、月謝を受け取って回転していける訳ではない。残念ながら日本国内の市場では育てて高く売る事も難しい。奥川雅也の様にプロ生活3か月にして約2億円の移籍金を残して飛び立つ選手なんて、日本全国どのクラブのどの事例を見渡しても彼しか居ない激レアさんだ。
でも、年に20回程度しかないトップチームのホームゲームだけがファン創出の場ではないし、誤解を恐れずに言えばアカデミーの試合を"実験場"に使う事もできる。この国は高校生の全国大会に4万5万の観衆が集まる国でもある。
様々なフットボールを楽しむ気持ちと高い視座とを持ち合わせている人間が何人居るだろうか。
その母数が増えれば増えるほど、文化として醸成されていくのだろう。
何はともあれ、今季も引き続き様々な制限が有りつつの観戦にはなるが、昨年までの3年間と異なり試合会場に入れる機会は増えている。
今季は喜多と飯田のトップデビューを果たした両名も居るので、まだ一度もアカデミーの試合を見たことが無い方はタイミングが合う際に一度訪れてみてはどうだろうか。
See you soon…!