+1 プラスワン

〜勝っても負けても反省は続く〜 【2023 J1】第24節 京都サンガF.C. vs 北海道コンサドーレ札幌

 

 

本題から外れるが、「勝ったのに文句を言うのか?」という声を耳にすることがある。

勝利したが中身は悪かった試合もある。敗れたが中身は良かった試合もある。たったそれだけのこと。

 

京都サンガとしてあるべき姿だったのかどうか?選手は、監督は、サポーターは、クラブはどうだったのか?妥協しないこと。たったそれだけのこと。

 

単に勝利が見たいのならば、レアル・マドリード読売巨人軍だけを見続けていれば良い。

そうではない。でも、美しく、勝つべくして勝ち続ける理想を忘れてはならない。だからクラブ経営を含めて、現実と理想の折り合いを一生懸命に探し求めるのだ。

 

そんなことすら…というか京都人として生まれながらに持った矜持を捨ててしまうのならば、もうそこで終わりなのである。

己の至らなさを知る。偶然を排除する。その先に勝つべくして勝つ、必然の成功があるのだろう。

 

 

 

 

 

さて、試合はというと京都・札幌共に特異なプレースタイルかつ近頃調子の悪いチームが故に、粗の目立つ展開となった。あれは本当にJ1のゲームだったのか。

気になった点だけ記しておく。

 

・京都は相変わらずマンマーク要素が強い。中でも相手FWにCB(この日はアピ・麻田)がストーキングをする。またサイドへ出ていく代わりに、アンカーの金子がカバーに入る運用がここ数試合続いている。

・この方法はメリットとデメリットとでやはり後者が大きい様に思う。アピが足を攣って途中交代となったのも、暑さや久々のスタメン出場の影響が大きいと思うが、更にこの運用で負担が大きくなったのも影響しているのではないか。

・細谷とかジェバリとかディエゴオリヴェイラとか、身体の強さとランニングを兼ね備えたFWに悲しいかな京都のCBは対応しきれない。この日は小柏が欠場で、CMFが本職の小林が最前線で非常に助けられた。

・そしてマンマーク要素が強い為に、京都のDFラインはチャレンジ&カバーの概念が薄い。特にアピと福田の両名。

・アピは自分から突撃しにいく際の強さは有している。一方でセンターラインでプレーするには視野の確保が弱く、またCBとしては恐ろしいくらい一か八かのプレーが目立つ。

・福田はとにかく右サイドへ大きく開く。チームとしての狙いなのかもしれないが。三竿と対照的に「絞る(右SBとの距離を詰める)」事をおろそかにしがち。なので万が一ビルドアップやロングボールで引っ掛かると、大ピンチに繋がりかねない。アピが担当しないといけないエリアがとても広い=アピの負担が大きい。

・キックオフ直後の大ピンチも、アピはボールホルダーへの突撃を優先して駒井のことはガン無視。(福田がラインを上げてくれると思っていたのかどうか)

・福田も福田でこのシーンに限らず、あまりにも距離を取りすぎ。もっとサッカーの常識的に正しいポジションから前へ出ていく方がリスク回避の面では好ましい。

 

・また相手のスローインの際に、サイドへ流れるあるいは落ちていく相手FWにCBが付いていく。入れ替わりで抜け出した相手アタッカーを金子が見れていない→ピンチになると言うシーンが、対戦相手が変われど続いている。

・金子がストーキングするのか。スペースに入るのか。これを徹底しないとクオリティを有したチームならここを突いて即座に失点する。

・いずれにせよ現状の運用ではフリーマンとスペースを相手にプレゼントする機会が増えていくことは避けられないだろう。

 

・3バックにしたことで、後ろに重たくなったと評価する人も居ると思う。実際に、相手の変則的なビルドアップ部隊3枚vs京都の3トップで睨み合いをしていた事で、札幌の前進は効果的ではなかった。それを崩したことで、札幌は京都陣内へボールを運びやすくなり、守備ラインが低くなったのは事実。

・但し、一昨年と昨年もそうだった様に、70分ぐらいから京都はガス切れをし始める。(理由はハイプレスが無謀すぎるのと、ボール保持ができない為に休む暇が無いので)

・大谷はキックが冴えているGKでも無いので、睨み合いを続けていても良かったけど、前述のDFラインの運用と併せて考えると、5枚にして固めたのは良かったと思う。

・5枚にした事で、福田が右に開きすぎる傾向もカバーできたし、リスクをカバーしながら福田の積極性を活かせた事が、2点目に繋がった。

・ただ、5バックがただ存在するだけでまともなチームならズタズタに切り裂かれそうな守備であったことは忘れてはならない。向上させなくてはならない。山﨑と原がボールを収めて時々陣地を回復できていたからまだ良かったものの。

・また、豊川の全く中も見ていなければ誰にも合っていないクロスが、なぜか札幌の自滅的ミスによって「どうぞ〜」とチャンスをプレゼントしてくださる流れに繋がり、得点を得ただけの偶然の得点であることは忘れてはならない。

・3点目のパトリックによるダメ押し弾も同様である。

 

 

 

 

札幌も京都も中々に酷いプレーぶりだった。でも京都は偶然こぼれてきたチャンスをきっちり物にした。

1点目の原のPK奪取も、札幌の高いけれど統率されていないDFラインの裏を、前半早々から福田→豊川など執拗に狙い続けていたことがハマった結果である。福田も"古巣"相手に気持ちが漲っていて、この日はそれが悪い方に転ばなかった。菅も明らかに疲れていたし。

目先の残留争いを考えると、このようなプレゼントゲームを拾っていけたのは大きかった。異常な暑さと声援も京都にとっては追い風だったように思う。よく我慢し、よく踏ん張った。やはり気持ちのチームなのだろう。それはそれで素晴らしい。

 

 

そして最も忘れてはならないのは太田岳志の素晴らしいプレーの数々である。彼がMOMである事に誰も異論はないだろう。

開始直後の決定機を彼が止めていなければ、この試合は札幌の3-0勝利だった可能性も十二分にあった。PKストップも大きな分水嶺であった。採点を付けるのなら9.5点をあげていい。

 

これまで、彼のプレーで一番物足りなかったのはやはりステップワーク。国内のハイクラスGKと比べると少しモタっとしている。ガンバや柏はそこを突いて、ファーサイドへのボールやDF背後のボールを意図を持って使用していた。

でもこの日、前述の2つの被決定機も、17:26〜や27:30〜のハイボール処理も、彼は見事なステップワークを見せて京都を救ってくれた。

単に気持ちが入っていたとかではない。自分の足らぬ点を真摯に見つめて準備した賜物であり、心技体が高いレベルで揃っていたからこその必然のハイパフォーマンスだった。彼のプレーは紛れもなく偶然が排除されていた。

 

試合後のコメントも涙を誘うものがあったが、それ以上に、サッカー選手としては一つの節目でもある30歳を過ぎて尚、「成長」を体現した姿に感動してしまった。本当に物凄い事だ。

熾烈な守護神争いは続くが、結果はどうであれ、彼はきっと成長し続けるに違いない。できれば成長した姿をより多く見せてほしい。そう願っている。

 

 

 

 

 

P.S.

京都新聞の取材によると安藤強化部長代理は以下のように回答したと言う。

「さまざま意見がある中で何度も議論を重ねた」とした上で、「残り十数試合でサンガのサッカーにフィットするのかも考え、しっかり成長させていくところにフォーカスしたい。福田も育ってきていて、荒木も右ができる。左では三竿が調子を上げてきて、植田も良い状況。彼らの成長やチームとの親和性を止めないように進めた」

 

 

この日のMOMは間違いなく太田岳志であった。しかし、私は影のMOMはクソンユンだった様に思う。

 

彼の加入そしてFC東京戦でのパフォーマンスは、岳志の心の中の炎を大きくしたに違いない。

そして菅野とクソンユンを欠いた札幌のGK⇔DF間はあまりにも不安定だった。原のPK獲得シーンも、福田の得点も、大谷ではなくクソンユンだったらどうなっていたか。補強とは相対的に強くさせる事を考えねばならぬと思い知らされた。

 

 

中長期的に考えて、あえてチャンスを与える編成を組むことは必ずしも否定されるものではない。

 

では、開幕戦では福田と共に大卒即開幕スタメンを飾った木村が、サイドで守備とドリブルでの陣地回復に追われて活かされる事も無く、片道感すら漂うコメントを残してローン移籍する羽目になったのは何なのか。

 

このチームはJ1でタイトルを目指してシーズンインしたのではないか。いまは下方修平して、目先のJ1残留を争っているのではないか。

それとも選手を育てて売る事を目的にしているのか?

 

出場機会は与えるべきだが、ポジションは自動的に与えてやるものではないと思う。

サンガタウンでの競争をよりハイレベルなものにすることで促される成長があることを、この日の太田岳志は教えてくれたではないか。

 

 

 

See you soon…!