+1 プラスワン

〜ミスはなぜ起きるのか?〜 【2023 J1】第1節 京都サンガF.C. vs 鹿島アントラーズ レビュー 

 

 

 

 

 

【得点者】

鹿島:8' ディエゴピトゥカ 34'知念慶

京都:なし

 

 

 

誤算と動揺

・最も重要なのは先制点だろう

・万が一、鹿島に先制点が生まれようものならば、彼らは「大丈夫。俺達はできるんだ」と失いつつあった自信を回復させて試合を進められる

・これが一番厄介であり、故にセットプレーやクロスボール処理など事故の起こりやすい場面では細心の注意を払ってプレーしてもらいたい

・特に昨年マークを外されて得点を献上したセットプレーは、両CBの高さを筆頭に引き続き鹿島の強みである

・京都にフォーカスを置くと、試合の入り方を間違えずにソリッドに戦い続ける事がまず最も重要

・開幕戦なので今年も3年連続3回目の5トップ化(WGが中央へ入る)に挑戦するかもしれないが…

・1点先取できれば3-0で勝ってもおかしくない。一方で相手に自信を与えてしまっては逆の展開もあり得る

・共に完成度が疑問視されるチームだからこそ、より精神的なものが左右するだろう

・スコア予想は極端な贔屓と、祈りを込めて3-0。浦和戦や神戸戦の様な「精神のクオリティの高さ」に期待したい

 

・ここまで予測していたバッドシナリオの方になるとは…笑

・佐野を左SBではなくアンカーに置いた4-1-2-3で挑んできた鹿島

・監督コメントでも「予想と違ったところが」と有る様に正直面食らった感は否めない。個人的にもサプライズだった

・また鹿島は試合開始より素早いプレッシャーとハイテンションな戦いぶりで先手を取りに来た

・対して京都は完全に試合の入りを誤った。大卒新人の木村と福田が試合にあまり入れていなかったのは仕方ないが

・しかし麻田&井上の両CBに対して、鈴木&知念が多少のアバウトなボールでも勝てる事が早々にバレてしまったのは痛かった

・先制点となったCKはお粗末そのもので、まずはスペースを目がけたアバウトなロングボールを、背走する形になったとは言え井上が処理しきれず鈴木に拾われてCKを献上

・そして昨年に引き続きマンマークでの対応を敷いたが、その井上らがスクリーンの形でマークを外されて大外からフリーで折り返しを許す

・かろうじて助かったものの、川崎の中途半端なクリアをディエゴピトゥカがボレーで叩き込み鹿島が先制

・明らかな課題であったセットプレーで、新シーズンが幕を開けてたったの7分で失点を許す京都。結果だけを見れば一体何をしてきたのか案件

・片や、まるで優勝Vゴールかの様な盛り上がりを見せる鹿島の選手達とベンチ。戦略や戦術、技術以前に、この一戦に懸ける気持ちの差は明白であった

・残念ながらその時点で準備不足と言うほかない一戦だっただろう

 

 

 

必然の失点

 

・色々な見方のできる2失点目だったと思う

・アンケートを取ってみると、各々の選択理由まではわからないが面白い結果となった

・個人的には、この中なら「麻田のミスも原因」を選ぶ

 

・このシーン、京都はGK若原から地上戦で繋ぐ選択肢を選んだ(Twitterの動画では麻田からのシーンのみとなっている)

・まず、この麻田の受ける位置と麻田から福田へのパスがよろしくなかった

・パスを送った麻田も、受ける側の福田も、ただ立っているだけ

・そして麻田のパスにはなんの工夫もなく、受ける福田は足元で止めてしまった

・麻田がもう少しボールを運ぶ事ができれば、あるいは福田が遠いサイドの足(左足)を正しく使い更にタッチライン際にボールを置けたならば、あと1歩でも2歩でも前方で次のプレーができていたかもしれない

・であれば、福田のプレーの選択肢は増えていた。仮に麻田にパスを戻しても、麻田はもう少し余裕を持ってプレーができたかもしれない

・しかし現実は違った

・麻田は右(若原)から来たボールをただ左へ受け流すだけ。他の選択肢をチラつかせる事もなかったので、藤井は麻田が左へ体を開けた途端に福田へとプレスバックを開始している。つまりバレバレ。これは荻原と組んでいる時から言っている。。。

 

・藤井(鹿島)があっさりと福田へ追いつけている時点で、この麻田→福田のパスはただ責任をなすり付けあっただけの意味のないパス

・1つ目に選手のボールを扱う技術(≠ボールテクニック)の問題があったと言えるだろう

・麻田の福田の位置関係で、福田がより前方で受けようと位置取る(図右)とパスコースの角度が鋭角になり、そもそも藤井にパスカットされる可能性が増す

 

・そもそも麻田がよりサイド側に位置取りしてプレーするか(左図)、ボールを運ぶなどして藤井を自分に引きつけてから福田へ渡していれば、余裕を持ってプレーができた

(・カメラの画角が狭いので現れていない選手については想像で配置。ご容赦を)

 

・あるいは福田のコントロールオリエンタードが上手ければ袋小路に入り込まなかった

・でも足元に止めてしまった。その上、どこに蹴るかバレバレのプレーで左端に映る鈴木優磨が麻田へ行き易くなってしまった

 

 

・福田からのボールを受ける選択肢についても、武田が無駄に動きすぎてホールディングセブンの川﨑と被っている

・武田が下がって貰おうとした事で、前方の木村にパスを送っても木村は孤立した状態

・福田はタッチライン際でプレーしているので、そもそも選択肢は180°の中からしか選べない

サイドバックは、180°しか無いメリットと、180°しか無いデメリットとがある

・故に選択肢がなく、一旦やり直そうと麻田に戻したのは理解できる

・2つ目に周囲の選手のポジショニングの問題があったと言えるだろう

 

・また、シンプルに「鹿島の守備が上手かった」とも言える。

・京都は、いつもGKまでボールを追いかけ回しては、ボールを奪えずにむしろピンチを招くギャグみたいな守備を続けている。しかし、ハイプレスというのは相手に勢いよく突進することではない

・「守備網」という言葉があるように、組織で網を作って相手の選択肢を狭め、ボールを絡め取っていく事が重要。

前からプレッシャーをかけに行く途中で蹴られてしまっていたので、そこは修正が必要でした。いつものように前からがむしゃらに行くだけではボールを奪えないので、そこはタイミングなどの微調整が1年を通して必要だと感じています。

・ピッチ内で感じ取って、コーチングを交えて修正していく事は重要とは言え、そもそもどうやって守備をするかが体制発足3年目にもなってアバウトすぎる京都と、鹿島とでは大人と子供くらいの差があった

・そして、そんな守備をする京都だからこそ、本物のプレスを受けてプロとしてはあり得ないミスが起きるのだ

・そもそも練習から正しく強いプレスを受けていれば、自ずと受け慣れて、外すのも容易になっていくはず(理論上は)

・でも京都の標榜するハイプレスとは「ボールホルダーへ激しくアタックする」事であって、その肉体的強度と連続性はリーグ屈指であるが、先述した様に悪く言えば追いかけ回しているだけ

・無理にプレッシングに行く必要はなく、組織的な守備ができればボール回収は容易

・だから果敢に行っても良いが、食い付く必要はない。食い付く必要はない

・大事な事なので2回言いました

・レビューでもこう書いたけども、この試合でも進歩は見られなかった

・だから、昨年のリーグ柏戦(A)の様に、ただ単に追いかけて来るだけの守備相手なら、普段のトレーニングでより肉体的強度のあるプレスに慣れているから、結果として外す事ができる。

・逆に今回の様な良いプレスをされると、普段受け慣れていないから、消極的な判断やミスが発生しやすくなる

・パンチが来たから交わしてカウンター。それはできても、自分達からパンチは打てない。つまり能動的に行動ができない…

・3点目に京都と鹿島のプレスの質の差に問題があったと言えるだろう。

 

 

・しかし、今回の様な出来事は今に始まったことではない

・例えば、昨年の磐田戦。まあこのシーンはGKから苦し紛れの逃げ先がSBで、SBで奪われたらCB2枚しか居ないよねって話なので別物とも言えるが

 

・受け手側のポジショニングの話についても、この試合でも他に危険極まりないシーンがあったし、昨年の総括記事でも書いた様にプレーオフでも馬鹿げているとしか言えないシーンがあった

 

・今回、「ボールを繋ぐぞ!」という、新たな一面を見せようとトライした京都

・しかし、そのファイティングポーズは虚しくも形だけで、修正はあまり見られなかった

・今に始まった話ではなく、ずっと欠陥がある事はわかっていたはずなのだが

・いや、やっぱり把握すらしていないのか…?

・結局、これまで指摘してきた通り、選手の裁量が大きすぎてチームとしての共通認識はできていなかった事で、戦術的なミスと技術的なミスが試合のあちらこちらで起きてしまった

・この試合で京都が初めてシュートを放ったのは前半AT

・そして初めて枠内シュートを放ったのは後半41分(関川のブロックに合う)

・試合後、開幕戦にも関わらず京都のゴール裏からは一部ブーイングが巻き起こった

・それはこの試合があまりにもお粗末だったからだけでなく、3年目にしてなお積み上げが見られない内容に対する不満もあっただろう

 

・レビューでも書いた様に、開幕戦は各チームの狙いが表れやすい舞台である

・でも京都には狙いを実現する為の準備が圧倒的に足りていなかった

・欠陥を放置し続けているが故の2失点目は準備不足の象徴と言える

 

 

 

智勇と蛮勇

・あの2失点目のミスは麻田のトラップミスのみが原因ではない(個人的には)

・麻田も福田もミスを犯していると言える

・周囲の受け手もミスを犯していると言える

・そんなミスが起きる構造を放置し続けているのは誰か?

・他でもない監督以下コーチングスタッフであり、それを容認し続ける強化部と言える

 

・そして麻田をここまで育てて来たのは誰か?

・高校から京都サンガのエンブレムを背負っているのに、未だにボールを運んだり、供給するプレーについては難がある

・誰も指摘できなかったのか?指摘しても直らないのか?

・直接指導する側だけでなく、見る側にも責任の一端はあるかもしれない

 

・また、特に何のプロモーションも無しに15,988人が詰めかけたこの試合

・ただ単に90分サッカーの試合をして、それもつまらない試合を見せて、満員の嵯峨野線で帰っていく。この日初めてサンガスタジアムへ足を運んでくれた人はどう思っただろうか?

・とてもW杯明けのリーグ&ホーム開幕戦とは思えなかった

・タイムスケジュールですら、2〜3日前になってようやく公開された

 

 

・人がミスをするのは、求められるタスクと処理能力とが見合わなくなった時

・そして生き物だから、「ミスは責めない」と口で発破をかけるだけでなく、ミスを防ぐ為の仕組みを作らないといざという場面で萎縮してしまう

・迷いを取り除いてあげないと処理能力がパンクする。捨てる部分と守る部分が明確にならなければならない

・そしてサッカーは1人でするスポーツではなく11人で行うものであり、相手チームが立ちはだかるものである

・ピッチ内もピッチ外も、型破り以前に、型が整理されていないままでは、只のやぶれかぶれである事を忘れてはいけない

 

・それでもなお、クラブとして大きな勘違いに気付かない。そして直せないのであれば、昨年末に書いた様に最悪の結末が待ち受けている事だろう

しかし、今年と同様の戦略と戦術で来シーズンに突入した際には、勝ち点は積めても20を越すか越さないか程度ではないだろうか

構造上の致命的欠陥と矛盾をクリアしなければ、来季の順位表の一番下に京都の名前が刻まれても何らおかしくはない。それもダントツで。

 

・この鹿島戦は良い教訓になったことは間違いない

・如何に自分達が現状を誤って認識し、正しい打ち手を打てていないかが少しはわかったはず(だと信じたい)

・ポジティブに振る舞えば、まだ1/34。取り返す機会はまだある

・人の真価が問われるのは、ミスをした後

豊田スタジアムと、ホームに帰ってくるFC東京戦で、一体どんな振る舞いを見せるのかに期待したい

 

 

See you soon…!